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もみの木歌集
2001年度 (2)
051
団体旅行で、東北地方へ行きました。一番の目的は、西行縁の中尊寺へ
行くことでした。奥入瀬(奥に入るにしたがって瀬が多いという意味)――
奥入瀬の滝の上には十和田湖がある。緩やかな流れもあれば、阿修羅の
流れという急流などもある。いろいろな名前の滝も多い。
新渡戸稲造さんのお爺さんが、今から130年前に、十和田湖の水をひき、
農作物の栽培に利用された。
十和田湖の水あふれ出て奥入瀬の
雲居布引滝となるなり
052
束稲山、衣川(弁慶が藤原氏の矢を受けて亡くなったところ)
月見坂衣川にも風去りぬ
急ぎ行かれし西行法師
西行の後姿はどこにも見えませんでした。衣川の鉄橋には、ちょうど電車が
走っていました。束稲山には、大文字の送り火の大の字が書かれていました。
ききもせずたばしね山のさくら花よしののほかにかかるべしとは
(西行法師)
なみだをば衣河にぞながしけるふるき都をおもひいでつつ
(西行法師)
053
花巻へも行ってきました。
機上での林檎ジュースは甘すぎて
出会えなかった賢治を想う
054
農業高校の校庭に賢治が住んでいた家が移転されてあります。
校庭の賢治先生の家へ行く
下の畑に今もいるかな
055
遥かなる「よだかの星」を読みし日々
賢治語録の四次元にある
056
少しの時間でしたが遠野へも行ってきました。
車窓にてイナホすすきと記したまま
ペンを眠らす遠野の帰り
057
いついつと待ちにし人は来たりけり
「良寛の四季」読みつつ待てば
いついつと待ちにし人は来たりけり今はあひ見て何か思はむ
(良寛)
本屋で友人と待ち合わせていた時の歌です。
058
スーパー歌舞伎を見に行きました。
縦横に火攻め水攻め宙返り
秘めた恋もありスーパー歌舞伎
059
偶然が重なり合ってパッピーエンド
スーパー歌舞伎に夢をみる観客(ひと)
060
同じ星見つめていたから寂しくなかった
西行は月よく似たこと言う
061
口説きなく口語文的言葉なり
わかりやすさとの共存を問う
062
板二枚叩きつけたる付け打ちは
静動の瞬パッシッと決める
063
ハイキングで吉野の奥にある蜻蛉の池へ行ってきました。
せいれいと読ませるかげろうとんぼ滝
音無川の床響かせて
064
通勤途上に最近作った歌五首です。カラス瓜を詠みました。
カラス瓜五首
からす瓜の紅き光沢消へにけり
白きレースの花の行程
065
名はカラス白きレースの花咲かせ
実は焦すなりカラス瓜とは
066
紅玉の画像に触感想いつ
天の恵与のからす瓜観る
067
花白く紅い実のなるカラス瓜
その名の鳥は黒き色なれど
068
この瓜は確かどこかで観たボール
カラスの卵チョコレートピーナッツ
069
カラス瓜の歌をたくさん作りましたが、最終の作品です。「赤か黒」という歌題で
短歌講座に出した時に岡井先生になおしていただきました。
名はカラスなれど真白き花咲かせ
実は真赤なりカラス瓜とは
070
平成の歌会に出した
葛城の西に桜の道ありて辿り登れば西行の待つ
という歌が入選したので、平安神宮の歌会の見学に行きました丸太町駅の
駅員さんに道を聞いて行ったのですが、冷泉通りは、琵琶湖疎水沿いに
あるのですが、平安神宮の応天門に通じています。方向音痴なので
今度来るときのために覚えておこうと思って、歌を作りました。
丸太町(2)の階段を出て川沿いに
下りて左折冷泉に入る
071
短歌講座で、「北か南」という歌題で出した歌です。
天軸の左右に座して悠久の
旅を続けるカシオと北斗
カシオとか北斗とかと、略さない方がいいと言われました。
072
「男と女」の歌題です。
むかし男ありけりというそのむかし
女もありけり余情も持ちて
073
「男と女の間には〜」と歌えども
解明されずその暗き川
074
小児保健研究会へ行ってきました。標語のような歌です。研修のまとめにはなりません。
子は母に安全基地をアタッチメント
安心感は受け止めること
075
「赤ちゃんは歩く禁煙マークです」
周り20mでは吸わないように
076
「RISK WATCH」保育所でも出来ること
発達に応じた事故防止マニュアル
077
「子どもを大切にしない国は滅びる」
保健学会会頭講演
078
喫煙の害を伝える「PLAYER’S」
大切な人を守るためにも
079
乳幼児感染症の対策は
予防接種早期啓発
080
生活のリズムは後ろへスライドし
ライフスタイル夜型になる
081
怖きこと悪しきことなど知らざれば
良きことやさしさ知らずに育つ
082
読み聞かす物語上の体験は
生き抜くための力となりぬ
083
おっぱいを飲ませるように話しかけ
ことばも飲まし心をつつむ
084
京都へ紅葉を見に行きました。
紅葉という名の展示会へ行く
主催者は秋協賛はひかり
085
あくまでも色の総称モミジとは
秋のドミノで仕上がりを待つ
086
職場の旅行で九州、岩国、宮島へ行きました。途中、岩国の錦帯橋の
たもとで I さんと待ち合わせてお会いしました。その時の歌です。
秋空に高々とかかる錦帯の
橋のたもとに会う人がいる
087
秋空に高々とかかる錦帯の
橋のたもとに待つ人がいる
初めは会う人にしていましたが、待つ人にしました
088
来るものに向かわず沈む沈下橋
錦帯橋も「とおりゃんせ」する
四万十川は橋の欄干が無い沈下橋ですが、錦帯橋は、アーチ型になります。
流木などがひっかからないようにということがあるそうです。
089
西行がかつて登りし上不見山
ここで見しかも氷の絶え間を
お寺の名前は上不見山浄土王院極楽寺です。
I さんに連れて行っていただきました。
090
観音の寝姿という宮島は
髪を浸して夕闇の中
極楽寺山から見ると、観音様の寝姿の宮島が静かに横たわっていました。
091
もう少し五重の塔に月寄れば
絵になるような秋の競演
092
夕食の後、数人の友人と夜の宮島を歩きました。丸いお月様が出ていました。
ひたひたと漂う波の厳島
水面に届かぬ高き月あり
093
暗い水面、月はもう高い空に小さく見えました。
波の間にただ点々と点々と
続く燈明厳島神社
094
太陽と残月浮かぶ厳島
今日また始まる対岸の街
095
翌朝、また散歩に行きました。山の上に白いお月様があって、
対岸の宮島口の街は、陽にあたって、輝いていました。
太陽の下の鳥居はのどかなり
ライトアップは自己主張なり
昨夜ライトアップしていた鳥居は、お昼に見ますと、周りの風景に吸収されて、
夜間のライトアップとはまた感じが違います。どちらもいい景色でしたが。
096
つかの間の時を惜しみて友と来し
原爆ドームに鳩が飛び交う
帰りは、広島まで行って、新幹線の時間を待つ間に広島焼を食べ、自由行動で、
友人2人と一緒に原爆ドームまで行ってきました。帰りは、路面電車に飛び乗った
のですが、広島駅で迷子になりそうになりました。電車は、駅の表側に着いたの
ですが、 新幹線乗り場は裏側にあるということを知らなかったからです。
出発した駅と違っていて、びっくりしました。でも無事合流できました。
するがなる富士をば安芸に引きかへて上見ぬ鷲の峰の尊さ
(伝 西行法師 作)
秋空に高々とかかる錦帯の橋のたもとに待つ人がいる
返し
秋空に五つの帯を旗めかし来る人待つや橋のたもとに
(
I さん)
歌のお返しありがとうございました。
やっぱり五橋ですから、長い帯を歌ったほうがいいですね。
残月を背負うて重し五橋かな
(
I さん)
五十年月日の重さだけでなく人の重さも耐えた五橋よ
(
I さん)
橋を渡りましたが、やっぱり傷んでいて、重さに耐えたという感じでしたね。
向こうの橋のたもとには白蛇がいたのですね。
何か言い伝えとかはあるのでしょうか。
秋空に高々とかかる錦帯の橋のたもとに待つ人がいる
の歌ですが、解説するような歌ではないのですが、「橋・待つ」をイメージすると、
下記の万葉集の歌が頭に浮びました。(数少ない知っている歌の一つですが)
△高橋
石上(いそのかみ)ふるの高橋(たかはし)高高(たかだか)に妹が待つらむ夜ぞふけにける
(萬葉集
十二古今相聞往来歌)
097
「クリスマス一色やね」と言う声に
見わたせばもうクリスマスの中(丸の中に中)
098
すべりこむ年の輪閉じる年の瀬は
柚子の香かほる湯船が迎える
099
第30回かぎろひを観る会(13.12.31)へ行ってきました。
万葉の歌人である柿本人麻呂は、軽皇子(後の文武天皇)の伴として当時
宮廷の狩場であった当地「阿騎野」を訪れ、その雄大な夜明けの情景を、
ひむがしの野にかぎろひの立つみえてかえりみすれば月かたぶきぬ
(柿本人麻呂)
と詠みました。なかなかかぎろひは観るのが難しいそうで、
今年も観えませんでした。
ひむがしの空へ古代の火が翔びて
1300年の刻蘇える
100
かぎろひが観えませんでしたので、そのまま冬の吉野の西行庵へ行ってきました。
「桜の吉野」、「紅葉の吉野」、もいいけれど、やはり冬の吉野へも行ってみたいと
思っていました。奥千本の西行庵は雪の中でした。雪道なので、歩くのが大変でした。
吉野山冬麗なれどその奥に
雪に閉ざさる西行庵あり
101
さびしさに堪えたる人に月すみて
雪舞う後には花吹雪舞う