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  「五月雨・さみだれ」

 1  43 
      ほととぎすしのぶ卯月も過ぎにしを猶聲惜しむ五月雨の空
 2  44
      五月雨の晴間もみえぬ雲路より山時鳥なきて過ぐなり
 3  46
      さみだれの晴間尋ねて郭公雲井につたふ聲聞ゆなり
 4  48 
      五月雨の軒の雫に玉かけて宿をかざれるあやめぐさかな
 5  49
      水たたふ入江の眞菰かりかねてむな手にすつる五月雨の頃
 6  49
      五月雨に水まさるらし宇治橋やくもでにかかる波のしら糸
 7  49
      こ笹しく古里小野の道のあとを又さはになす五月雨のころ
 8  49
      つくづくと軒の雫をながめつつ日をのみ暮らす五月雨のころ
 9  49 
      東屋のをがやが軒のいと水に玉ぬきかくるさみだれの頃
 10 49
      五月雨に小田のさ苗やいかならむあぜのうき土あらひこされて
 11 49
      さみだれの頃にしなれば荒小田に人にまかせぬ水たたひけり
 12 49
      さみだれにほすひまなくてもしほぐさ烟もたてぬ浦の海士人
 13 49
      五月雨はいささ小川の橋もなしいづくともなくみをに流れて
 14 49
      水無瀬河をちのかよひぢ水みちて船わたりする五月雨の頃
 15 49
      ひろせ河わたりの沖のみをつくしみかさそふらし五月雨のころ
 16 49
      はやせ川綱手のきしを沖に見てのぼりわづらふさみだれの頃
 17 50
      水わくる難波ほり江のなかりせばいかにかせまし五月雨のころ
 18 50
      舟とめしみなとのあし間さをたえて心ゆくみむ五月雨のころ
 19 50
      みな底にしかれにけりなさみだれて水の眞菰をかりにきたれば
 20 50
      五月雨のをやむ晴間のなからめや水のかさほせまこもかり舟
 21 50
      さみだれに佐野の船橋うきぬればのりてぞ人はさしわたるらむ
 22 50
      五月雨の晴れぬ日數のふるままに沼の眞菰はみがくれにけり
 23 50
      水なしと聞きてふりにしかつまたの池あらたむる五月雨の頃
 24 50
      五月雨は行くべき道のあてもなしを笹が原もうきに流れて
 25 50
      さみだれは山田のあぜの瀧枕かずをかさねておつるなりけり
 26 50
      河わだのよどみにとまる流木のうき橋わたす五月雨のころ
 27 50
      おもはずもあなづりにくき小川かな五月の雨に水まさりつつ
 28 157
      いかにせんその五月雨のなごりよりやがてをやまぬ袖の雫を
 29 237
      あやめふく軒ににほえる橘にほととぎす鳴くさみだれの空
 30 237
      つくづくとほととぎすもやものを思ふ鳴くねにはれぬ五月雨の空
 31 250
      さみだれて沼田のあぜにせしかきは水もせかれぬしがらみの柴
 32 250
      流れやらでつたのほそ江にまく水は舟をぞむやうさみだれのころ  
 33 263
      たちばなのにほふ梢にさみだれて山時鳥こゑかをるなり  
 34 273
      さみだれは原野の澤に水みちていづく三河のぬまの八つ橋

              以上