山家集の研究 (佐佐木信綱校訂・岩波文庫・山家集から)
顔の歌
「がほ・顔」 (花の朝顔などは除外)
1 14
たちかはる春を知れとも見せがほに年をへだつる霞なりける
2 32
よしの山人に心をつけがほに花よりさきにかかる白雲
3 39
ま菅おふる山田に水をまかすれば嬉しがほにも鳴く蛙かな
4 40
かり殘すみづの眞菰にかくろひてかけもちがほに鳴く蛙かな
5 43
時鳥なかで明けぬと告げがほにまたれぬ鳥の音ぞ聞ゆなる
6 44
里なるるたそがれどきの郭公きかずがほにて又なのらせむ
7 57
あたりまであはれ知れともいひがほに萩の音する秋の夕風
8 59
をみなへし池のさ波に枝ひぢて物思ふ袖のぬるるがほなる
9 64
きりぎりす夜寒になるを告げがほに枕のもとに來つつ鳴くなり
10 85
こよひはと所えがほにすむ月の光もてなす菊の白露
11 149
なげけとて月やはものを思はするかこち顔なる我が涙かな
12 150
よもすがら月を見がほにもてなして心のやみにまよふ頃かな
13 153
身をしれば人のとがとは思はぬに恨みがほにもぬるる袖かな
14 196
數ならぬ身をも心のもりがほにうかれては又歸り來にけり
15 247
誰ならむ吉野の山のはつ花をわがものがほに折りてかへれる
以上
■ 入力日 2002年02月01日
■ 入力者 阿部和雄
未校正