もどる


    貝類の歌

小貝類
   83
     月かげのしららのMの
しろ貝は浪も一つに見え渡るかな   註1
  171
     風たちて波ををさむる浦々に
小貝をむれてひろふなりけり
  171
     難波潟しほひにむれて出でたたむしらすのさきの
小貝ひろひに
  171
     風吹けば花咲く波のをるたびに
櫻貝よるみしまえの浦
  171
     波あらふ衣のうらの
袖貝をみぎはに風のたたみおくかな
  171
     なみかくる吹上のMの
簾貝風もぞおろす磯にひろはむ
  171
     しほそむるますをの
こ貝ひろふとて色のMとはいふにやあるらむ
  171
     波よする竹の泊の
すずめ貝うれしき世にもあひにけるかな
  171
     なみよするしららのMの
からす貝ひろひやすくもおもほゆるかな
  171
     
かひありな君が御袖におほわれて心にあはぬことしなき世は
  234
     花と見えて風にをられてちる波の
さくら貝をばよするなりけり 
 
 はまぐり
  116
     同じくは
かきをぞさして干しもすべきははまぐりよりは名もたよりあり
  116
     あま人のいそしく歸るひしきものは
小にしはまぐりがらなしただみ 註
  126
     今ぞ知るふたみの浦の
はまぐりを貝あはせとておほふなりける

 あこや
  127
     
あこやとるゐがひのからを積み置きて寶の跡を見するなりけり

 あわび
  116
     岩のねにかたおもむきに波うきて
あはびをかづく海人のむらぎみ

 さざえ
  116
     
さざえすむ迫門の岩つぼもとめ出ていそぎし海人の氣色なるかな
 
 牡蠣
  116
     同じくは
かきをぞさして干しもすべきははまぐりよりは名もたよりあり

 つみ  「海草類、もしくは螺類のことか諸説あり」
  115
     おりたちてうらたに拾ふ海人の子は
つみよりつみを習ふなりけり

  115
     まなべよりしはくへ通ふあき人は
つみをかひにて渡るなりけり


 註1  83
     月かげのしららのMの
しろ貝は浪も一つに見え渡るかな   
     
      上記歌は西行出生の78年前に「読み人知らず」で
      発表されているようです。