山家集の研究 (佐佐木信綱校訂・岩波文庫・山家集から)
その他の動物の歌 ◎ 別掲以外の全ての動物
馬・ましら(猿)・熊・犬・蛙
馬
98
跡とむる駒の行方はさもあらばあれ嬉しく君にゆきも逢ひぬる
117
山城のみづのみくさにつながれてこまものうげに見ゆるたびかな
198
ふしみ過ぎぬをかのやに猶とどまらじ日野まで行きて駒こころみむ
220
かぐら歌に草とりかふはいたけれど猶其駒になることはうし
225
名殘いかにかへすがへすも惜しからむ其駒にたつ~樂どねりは
225
今日の駒はみつのさうぶをおひてこそかたきをらちにかけて通らめ
255
しづむなる死出の山がはみなぎりて馬筏もやかなはざるらむ
ましら (猿の古語)
138
山ふかみ苔の筵の上にゐてなに心なく啼くましらかな
ふかき山は人もとひこぬすまひなるにおひたたしきはむらさるの聲
(松屋本)
熊
166
熊のすむ苔の岩山恐ろしみうべなりけりな人も通はず
犬
102
あはせたる木ゐのはし鷹をきとらし犬かひ人の聲しきるなり
蛙
39
ま菅おふる山田に水をまかすれば嬉しがほにも鳴く蛙かな
40
みさびゐて月も宿らぬ濁江にわれすまむとて蛙鳴くなり
40
かり殘すみづの眞菰にかくろひてかけもちがほに鳴く蛙かな
270
さ夜ふけて月にかはづの聲きけばみぎはもすずし池のうきくさ
以上