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山家集の研究
植物の歌
その他の木々
(槙、つつじ、山吹、柏、榊、椎、楢、檜、桃、梨、しきみ、はじ、)
(葵、にしき木、橡、ははそ、ひさぎ、くちなし、ささぐり、まさき)
「 槙・まき 」
1 95 槙の屋の時雨の音を聞く袖に月ももり来てやどりぬるかな
2 96 杣人のまきのかり屋の下ぶしに音するものは霞なりけり
3 166 河合やまきのすそ山石たてる杣人いかに凉しかるらむ
4 273 夜もすがらささで人待つ槙の戸をなぞしもたたく水鶏なるらむ
5 138 山ふかみまきの葉わくる月影ははげしきもののすごきなりけり
「 躑躅・つつじ 」
1 40 はひつたひ折らでつつじを手にぞとるさかしき山のとり所には
2 40 躑躅咲く山の岩かげ夕ばえてをぐらはよその名のみなりけり
3 280 神路山岩ねのつつじ咲きにけりこらまがそでの色にふりつつ
「 山吹 」
1 41 きし近みうゑけん人ぞ恨めしき波にをらるる山吹の花
2 41 山吹の花咲く里に成りぬればここにもゐでとおもほゆるかな
3 173 山吹の花咲く井出の里こそはやしうゐたりと思はざらなむ
「 この手柏・かしは 」
1 58 いはれ野の萩が絶間のひまひまにこの手がしはの花咲きにけり
2 199 花の折かしはにつつむしなの梨は一つなれどもありのみと見ゆ
3 260 いちごもるうばめ媼のかさねもつこのて柏におもてならべむ
「 榊 」
1 124 榊葉に心をかけんゆふしでて思へば神も佛なりけり
2 274 しのにをるあたりもすずし河やしろ榊にかかる波のしらゆふ
「 椎・しひ 」
1 151 ときは山しひの下柴かり捨てむかくれて思ふかひのなきかと
2 167 ならびゐて友をはなれぬこがらめのねぐらにたのむ椎の下枝
「 なら=楢 (柏木の異名)」
1 54 夏山の夕下風のすずしさにならの木かげのたたまうきかな
2 97 霰にぞものめかしくはきこえける枯れたるならの柴の落葉は
「 ひ=檜 」
1 167 夕されやひはらの嶺を越え行けば凄くきこゆる山鳩の聲
「 桃 」
1 167 桃ぞのの花にまがへるてりうそのむれ立つ折はちるここちする
「 梨 」
1 199 花の折かしはにつつむしなの梨は一つなれどもありのみと見ゆ
「 しきみ 」
1 112 しきみおくあかのをしきにふちなくば何に霞の玉とならまし
「 葵 」
1 223 紫の色なきころの野邊なれやかたまほりにてかけぬ葵は
「 にしき木 」
1 143 たてそめて歸る心はにしき木の千づか待つべき心地こそすれ
「 はじ 」
1 138 山ふかみ窓のつれづれとふものは色づきそむるはじの立枝ぞ
「 とち=橡 」
1 138 山ふかみ岩にしたたる水とめむかつがつ落つるとちひろふ程
「 ははそ=楢やクヌギなどの古名 」
1 91 宿かこふははその柴の色をさへしたひて染むる初時雨かな
「 ひさぎ=アカメカシワの古名 」
1 54 ひさぎ生ひて涼めとなれるかげなれや波打つ岸に風わたりつつ
「 くちなし 」
1 276 秋きぬと風にいはせてくちなしの色そめ初むる女郎花かな
「 ささぐり 」 (栗の野生種。柴栗。実は小さい)
1 139 山かぜに嶺のささぐりはらはらと庭に落ちしく大原の里(寂然)
以上。2004年6月30日入力。