もどる
山家集の研究
植物の歌
荻
01 62 荻の葉を吹き過ぎて行く風の音に心みだるる秋の夕暮れ
02 93 霜がれてもろくくだくる荻の葉を荒らく吹くなる風の色かな
03 95 風さむみいせの濱荻分けゆけば衣かりがね浪に鳴くなり
04 103 身にしみし荻の音にはかはれども柴吹く風もあはれなりけり
05 154 あはれとてなどとふ人のなかるらむもの思ふやどの荻の上風
06 158 待ちかねて夢に見ゆやとまどろめば寝覚すすむる荻の上風
07 158 荻の音はもの思ふ我になになればこぼるる露に袖のしをるる
08 169 竹の音も荻吹く風のすくなきにくはへて聞けばやさしかりけり
09 塩風にいせの浜荻ふせばまづ穗ずゑに波のあらたむるかな
(岩波文庫山家集168P雑歌・新潮999番・
西行上人集・山家心中集)
10 をじか伏す萩咲く野辺の夕露をしばしもためぬ荻の上風
(岩波文庫山家集57P秋歌・新潮287番)
11 思ふにも過ぎてあはれにきこゆるは荻の葉みだる秋の夕風
(岩波文庫山家集57P秋歌・新潮285番・西行上人集・
山家心中集・新続古今集・万代集)
12 月すむと荻植ゑざらむ宿ならばあはれすくなき秋にやあらまし
(岩波文庫山家集74P秋歌・新潮387番)
隣の夕べの荻の風
13 あたりまであはれ知れともいひがほに荻の音する秋の夕風
(岩波文庫山家集57P秋歌・新潮288番)
山里にまかりて侍りけるに、竹の風の、荻にまがひて
きこえければ
14 竹の音も荻吹く風のすくなきにくはえて聞けばやさしかりけり
(岩波文庫山家集169P雑歌・新潮1146番)
15 八月、月の頃夜ふけて北白河へまかりける、よしある様なる
家の侍りけるに、琴の音のしければ、立ちとまりてききけり。
折あはれに秋風楽と申す楽なりけり。庭を見入れければ、
浅茅の露に月のやどれるけしき、あはれなり。垣にそひたる
荻の風身にしむらんとおぼえて、申し入れて通りけり
秋風のことに身にしむ今宵かな月さへすめる宿のけしきに
(岩波文庫山家集85P秋歌・新潮1042番)
2004年6月30日入力。
注 3番歌は西行作ではありません。新古今和歌集945番に前中納言匡房の
作としてあります。
09番歌の「いせの浜荻」は芦の別名とみられています。