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山家集の研究
植物の歌 (藤・菫・撫子・朝顔・夕顔・藤袴・紫蘭・檜扇・露草・紫・姫ゆり・帚木・濱夕)
「 藤・藤衣 」
1 188 西を待つ心に藤をかけてこそそのむらさきの雲をおもはめ
2 203 かさねきる藤の衣をたよりにて心の色を染めよとぞ思ふ
3 282 かみぢ山君がこころの色を見む下葉の藤の花しひらけば
203 藤衣かさねる色はふかけれどあさき心のしまぬばかりぞ(公能)
282 神路山松のこずゑにかかる藤の花のさかえを思ひこそやれ(定家)
「 菫・すみれ 」
1 40 あとたえて浅芽しげれる庭の面に誰分け入りて菫つみけむ
2 40 誰ならむあら田のくろに菫つむ人は心のわりなかりけり
3 40 古郷の昔の庭を思ひ出でてすみれつみにと來る人もがな
4 40 菫さくよこ野のつばな生ひぬれば思ひおもひに人かよふなり
「 撫子 」
1 52 かき分けて折れば露こそこぼれけれ淺芽にまじる撫子の花
2 52 露おもみそのの撫子いかならむ荒らく見えつる夕立のそら
3 52 撫子のませにぞはへるあこだ瓜おなじつらなる名を慕ひつつ
「 朝がほ 」(朝顔のこと)
1 189 つゆもありかへすがへすも思ひ出でてひとりぞ見つる朝がほの花
2 212 はかなくて行きにし方を思ふにも今もさこそは朝がほの露
「 夕がほ 」(夕顔のこと)
1 53 山がつの折かけ垣のひまこえてとなりにも咲く夕がほの花
2 53 あさでほす賎がはつ木をたよりにてまとはれて咲く夕がほの花
「 藤袴 」
1 60 糸すすきぬはれて鹿の伏す野べにほころびやすき藤袴かな
「 紫蘭 」(藤袴の古称)
1 222 やう梅の春の匂ひはへんきちの功コなり、紫蘭の秋の色は
普賢菩薩のしんさうなり
野邊の色も春の匂ひもおしなべて心そめたる悟りにぞなる
「 檜扇 」 「からすおうぎ」は檜扇の別称
1 53 蓬生のさることなれや庭の面にからすあふぎのなぞしげるらむ
「 露草 」
1 61 うつり行く色をばしらず言の葉の名さへあだなる露草の花
「 紫 」
1 223 紫の色なきころの野邊なれやかたまほりにてかけぬ葵は
「 姫ゆり 」
1 216 雲雀たつあら野におふる姫ゆりのなににつくともなき心かな
「 帚木 」
1 143 あはざらむことをば知らず帚木のふせやと聞きて尋ね行くかな
「 濱ゆふ・はまゆふ・濱木綿 」(浜木綿のこと)(ハマオモトのこと)
1 189 みくまのの濱ゆふ生ふる浦さびて人なみなみに年ぞかさなる
2 239 はまゆふに君がちとせの重なれば世に絶ゆまじき和歌の浦波
240 濱木綿にかさなる年ぞあはれなるわかの浦波よにたえずとも(尺阿)
279 霰さへあはれかさぬるみ熊野の濱ゆふぐれをおもひこそやれ(寂蓮)
2004年7月12日入力