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            山家集の研究
     植物の歌  ( 笹・竹・篠・すず )

  (竹)

 1  21  うぐひすの春さめざめとなきゐたる
の雫や涙なるらむ

 2  51  夏の夜は
しの小竹のふし近みそよや程なく明くるなりけり (重複)

 3  69  夜をこめて
のあみ戸に立つ霧の晴ればやがてや明けむとすらむ

 4  98  雪埋むそのの
呉竹折れふしてねぐら求むるむら雀かな

 5  99  うらがへすをみの衣と見ゆるかな
のうら葉にふれる白雪

 6 142  
の色も君が緑に染められて幾世ともなく久しかるべし

 7 169  玉みがく露ぞ枕にちりかかる夢おどろかす
のあらしに

 8 169  
の音も荻吹く風のすくなきにくはへて聞けばやさしかりけり

 9 169  よよふとも
の柱の一筋にたてたるふしはかはらざらなむ

10 171  波よする
の泊のすずめ貝うれしき世にもあひにけるかな

11 189  我なれや風を煩ふしの
はおきふし物の心ぼそくて

12 192  
くれ竹のふししげからぬ世なりせばこの君はとてさし出でなまし

13 193  
くれ竹の今いくよかはおきふしていほりの窓をあけおろすべき

14 247  むぐら枯れて
の戸あくる山里にまた径とづる雪つもるめり

15 248  
竹馬を杖にも今日はたのむかなわらは遊びをおもひいでつつ

16 260  
の戸を夜ごとにたたく水鶏かなふしながら聞く人をいさめて

17 277  
の音のわきてたもとにさゆるかな風に霰の具せられにけり


   「笹・こざさ・ささ」

 1  49  
こ笹しく古里小野の道のあとを又さはになす五月雨のころ

 2  50  五月雨は行くべき道のあてもなしを
が原もうきに流れて

 3  51  なつの夜も
小笹が原に霜ぞおく月の光のさえしわたれば

 4  57  
小笹原葉ずゑの露の玉に似てはしなき山を行く心地する

 5  63  夕されや玉うごく露の小ざさ生に聲まづならす蛬かな

 6  81  もろともに影を並ぶる人もあれや月のもりくる
ささのいほりに

 7 121  分けきつる
おざさの露にそぼちつつほしぞわづらふ墨染の袖

 8 122  いほりさす草のまくらにともなひて
ささの露にも宿る月かな 

 9 123  
ふかみきりこすくきを朝立ちてなびきわづらふありのとわたり


  「篠・しの・すず」

 1  15  春あさみ篠(
すず)のまがきに風さへてまだ雪消えぬしがらきの里 

 2  51  夏の夜は
しの小竹のふし近みそよや程なく明くるなりけり (重複)
  
 3  61  穂に出でて
しののを薄まねく野にたはれてたつる女郎花かな
  
 4  68  
篠原や霧にまがひて鳴く鹿の聲かすかなる秋の夕ぐれ
  
 5 248  
ためて雀弓はる男のわらはひたひ鳥帽子のほしげなるかな

 6 274  
しのにをるあたりもすずし河やしろ榊にかかる波のしらゆふ   


  「地名」


 1  90  秋しのや外山の里や時雨るらむ生駒のたけに雲のかかれる (奈良県)

 2  97 
 しの原や三上の嶽を見渡せば一夜のほどに雪は降りけり (滋賀県)

 3 247  初雪は冬のしるしにふりにけり
秋しの山の杉のこずゑに (奈良県)

                       2004年6月25日入力