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           山家集の研究

    植物の歌  (あやめ・菖蒲・杜若・芭蕉・麦・稲・ひつぢ・苗・芝・苔)


  「 あやめ 」

 1   47  世のうきにひかるる人は
あやめ草心のねなき心地こそすれ

 2   48  櫻ちるやどにかさなるあやめをば花
あやめとやいふべかるらむ

 3   48  西にのみ心ぞかかる
あやめ草この世はかりの宿と思へば

 4   48  みな人の心のうきは
あやめ草西に思ひのひかぬなりけり

 5   48  五月雨の軒の雫に玉かけて宿をかざれる
あやめぐさかな

 6   48  空晴れて沼のみかさをおとさずば
あやめもふかぬ五月なるべし

 7  263  
あやめ葺く軒ににほへるたちばなに來て聲ぐせよ山ほととぎす

 8  237  
あやめふく軒ににほへる橘にほととぎす鳴くさみだれの空
 

   「 菖蒲・さうぶ 」

 1   47  折にあひて人に我身やひかれましつくまの沼の
菖蒲なりせば

 2   48  ちる花を今日の
菖蒲のねにかけてくすだまともやいふべかるらむ

 3  225  今日の駒はみつの
さうぶをおひてこそかたきをらちにかけて通らめ

 4  248  いたきかな
菖蒲かぶりの茅巻馬はうなゐわらはのしわざと覚えて
  
  「 杜若・かきつばた 」

 1   41  沼水にしげる眞菰のわかれぬを咲き隔てたる
かきつばたかな

 2   41  つくりすて荒らしはてたる澤小田にさかりにさける
杜若かな

 3  273  廣澤のみぎはにさける
かきつばたいく昔をかへだて来つらむ 

   「 ばせお 」( 芭蕉のこと )

 1  189  風吹けばあだになり行く
ばせを葉のあればと身をも頼むべき世に


   「 麦 」

 1  248  うなゐ子がすさみにならす
笛のこゑにおどろく夏のひるぶし

   「 稲 ・いな 」
 
 1   75  夕露の玉しく小田の
むしろかへす穂末に月ぞ宿れる

 2   82  光をばくもらぬ月ぞみがきける
葉にかかるあさひこの玉

 3  183  つよくひく綱手と見せよもがみ川その
舟のいかりをさめて
 
    183  最上川つなでひくとも
いな舟のしばしがほどはいかりおろさむ (新院)

  「 さ苗・さなへ・苗代 」

 1   39  
苗代の水を霞はたなびきてうちひのうへにかくるなりけり

 2   49  五月雨に小田の
さ苗やいかならむあぜのうき土あらひこされて

 3  136  
苗代にせきくだされし天の川とむるも神の心なるべし 

 4  226  ひきひきに
苗代みづをわけやらでゆたかに流す末をとほさむ 

 5  264  ほととぎす聲に植女のはやされて山田の
さなへたゆまでぞとる

   「 ひつぢ 」 稻を刈り取ったあとの切り株から出てくる芽。

 1   82  うづらふす苅田の
ひつぢ思ひ出でてほのかにてらす三日月の影

   「 芝・道芝 」 

 1   61  しげり行く
の下草おはれ出て招くや誰をしたふなるらむ 

 2  144  あふことをしのばざりせば
道芝の露よりさきにおきてこましや

 3  212  いづくにかねぶりねぶりてたふれふさむと思ふ悲しき
道芝の露

   「 苔・こけ 」 

 1   15  岩間とぢし氷も今朝はとけそめて
の下水みちもとむらむ

 2   26  誰かまた花を尋ねてよしの山
ふみわくる岩つたふらむ
  
 3   99  あおね山
のむしろの上にして雪はしとねの心地こそすれ

 4  114  筆の山にかきのぼりても見つるかな
の下なる岩のけしきを

 5  138  山ふかみ
の筵の上にゐてなに心なく啼くましらかな

 6  142  
うづむゆるがぬ岩の深き根は君が千年をかためたるべし

 7  166  熊のすむ
の岩山恐ろしみうべなりけりな人も通はず

 8  166  杣くたすまくにがおくの河上にたつきうつべし
こけさ浪よる

 9  212  しにてふさむ
の筵を思ふよりかねてしらるる岩かげの露

10  227  岩せきて
こけきる水はふかけれど汲まぬ人には知られざりけり

11  242  
こけふかき岩の下ゆく山水はまくらをつたふなみだなりけり

12   69  晴れがたき山路の雲に埋もれて
の袂は霧くちにけり(草ではなく僧衣)

13  178  けさの色やわか紫に染めてけるの袂を思ひかへして(草ではなく僧衣)

              2004年7月12日入力