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山家集の研究
植物の歌 (茅・苅萱・浅茅・菅・つばな・ささめ)
「茅・苅萱・浅茅・をがや・あさぢ・かるかや・あさぢふ」
1 40 あとたえて浅茅しげれる庭の面に誰分け入りて菫つみけむ
2 40 つばなぬく北野の茅原あせ行けば心ずみれぞ生ひかはりける
3 49 東屋のをがやが軒のいと水に玉ぬきかくるさみだれの頃
4 52 かき分けて折れば露こそこぼれけれ浅茅にまじる撫子の花
5 52 雲雀あがるおほ野の茅原夏くれば涼む木かげをねがひてぞ行く
6 57 いそのかみ古きすみかへ分け入れば庭のあさぢに露ぞこぼれる
7 61 籬あれて薄ならねどかるかやも繁き野邊とはなりけるものを
8 63 あき風に穂ずゑ波よる苅萱の下葉に虫の聲亂るなり
9 74 月のすむ浅茅にすだくきりぎりす露のおくにや秋を知るらむ
10 78 浅茅はら葉ずゑの露の玉ごとに光つらぬる秋のよの月
11 97 枯れはつるかやがうは葉に降る雪は更に尾花の心地こそすれ
12 147 一方にみだるともなきわが恋や風さだまらぬ野邊の苅萱
13 172 あさかへるかりゐうなこのむら鳥ははらのをかやに聲やしぬらむ
14 185 露しげく浅茅しげれる野になりてありし都は見しここちせぬ
15 186 おもひおきし浅茅が露を分け入ればただわづかなる鈴虫の聲
16 186 野べになりてしげきあさぢを分け入れば君が住みける石ずゑの跡
17 192 秋の色は枯野ながらもあるものを世のはかなさやあさぢふの露
18 208 あらぬよの別はげにぞうかりける浅ぢが原を見るにつけても
19 213 世の中のうきもうからず思ひとけば浅茅にむすぶ露の白玉
20 241 あさぢ深くなりゆくあとをわけ入れば袂にぞまづ露はちりける
21 248 いたきかな菖蒲かぶりの茅巻馬はうなゐわらはのしわざと覚えて
「ま菅・菅・すげ」(カヤツリグサ科スゲ属の総称)
1 39 ま菅おふる山田に水をまかすれば嬉しがほにも鳴く蛙かな
2 52 たび人の分くる夏野の草しげみ葉末にすげの小笠はづれて
3 160 菅の根のながく物をば思はじと手向し神に祈りしものを
「つばな」 (チガヤの別名。)
1 40 菫さくよこ野のつばな生ひぬれば思ひおもひに人かよふなり
2 40 つばなぬく北野の茅原あせ行けば心ずみれぞ生ひかはりける
「ささめ」(カヤツリグサ科の一つ)
1 161 あやひねるささめのこ蓑きぬにきむ涙の雨を凌ぎがてらに
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13 172 あさかへるかりゐうなこのむら鳥ははらのをかやに聲やしぬらむ
13番のこの歌にある「おかや」については「岡屋」という地名のようですが、よく分からず、
「小茅」の意を捨て切れませんので、ここに出しています。
2004年6月26日入力