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山家集の研究
「京」の詞書
115 まなべと申す島に、京よりあき人どものくだりて、やうやうのつみのものども
あきなひて、又しはくの島に渡りてあきなはんずるよし申しけるを聞きて
まなべよりしはくへ通ふあき人はつみをかひにて渡るなりけり
117 筑紫に、はらかと申すいをの釣をば、十月一日におろすなり。しはすに
ひきあげて、京へはのぼせ侍る。その釣の繩はるかに遠く曳きわたして、
通る船のその繩にあたりぬるをばかこちかかりて、がうけがましく申して
むつかしく侍るなり。その心をよめる
はらか釣るおほわたさきのうけ繩に心かけつつ過ぎむとぞ思ふ
119 夏、熊野へまゐりけるに、岩田と申す所にすずみて、下向しける人に
つけて、京へ同行に侍りける上人のもとへ遣しける
松がねの岩田の岸の夕すずみ君があれなとおもほゆるかな
126 伊勢の二見の浦に、さるやうなる女の童どものあつまりて、わざとの
こととおぼしく、はまぐりをとりあつめけるを、いふかひなきあま人こそあ
らめ、うたてきことなりと申しければ、貝合に京よりひとの申させ給ひたれば、
えりつつとるなりと申しけるに
今ぞ知るふたみの浦のはまぐりを貝あはせとておほふなりける
137 高野の奥の院の橋の上にて、月あかかりければ、もろともに眺めあかして、
その頃西住上人京へ出でにけり。その夜の月忘れがたくて、又おなじ橋の
月の頃、西住上人のもとへいひ遣しける
こととなく君こひ渡る橋の上にあらそふものは月の影のみ
139 高野より、京なる人のもとへいひつかはしける
住むことは所がらぞといひながらかうやは物のあはれなるべき
140 高野にこもりたる人を、京より、何ごとか、又いつか出づべきと申したる
よし聞きて、その人にかはりて
山水のいつ出づべしと思はねば心細くてすむと知らずや
141 しほ湯出でて京へ歸りまうで來て、古郷の花霜がれにける、あはれなりけり。
いそぎ歸りし人のもとへ又かはりて
露おきし庭の小萩も枯れにけりいづち都に秋とまるらむ
176 ある人さまかへて仁和寺の奥なる所に住むと聞きて、まかり尋ねければ、
あからさまに京にと聞きて歸りにけり。其のち人つかはして、かくなんまゐり
たりしと申したる返りごとに。
立ちよりて柴の烟のあはれさをいかが思ひし冬の山里
185 八嶋内府、鎌倉にむかへられて、京へまた送られ給ひけり。武士の、母のことは
さることにて、右衛門督のことを思ふにぞとて、泣き給ひけると聞きて
夜の鶴の都のうちを出でであれなこのおもひにはまどはざらまし
269 かへりごと申さむと思ひけめども、井堰のせきにかかりて下りにければ、
本意なく覺え侍りけむ
京より手箱にとき料を入れて、中に文をこめて庵室にさし置かせたりける。
返り事を連歌にして遣したりける
空仁
むすびこめたる文とこそ見れ
2004年10月入力