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もみの木エッセイ集
  

  
            

 たくさんの蛍を見たのは、私が幼い頃のことなので、今では、
現実か幻想か、はっきりとは確信できないくらいです。
 最近、何故か、蛍のことが心の隅っこにあったのは、数年前に、
「蛍」という映画を見た影響からかもしれません。亡くなった人が、
蛍になって帰って来たのではという設定で、部屋の中をゆっくりと
飛び回る蛍を見ました。また、いくつかの蛍の歌にも触れました。

 物思へば沢の蛍も我が身よりあくがれ出づる魂(たま)かとぞ思ふ 
             和泉式部

 其の子等に捕へられむと母が魂蛍と成りて夜を来たるらし     
             窪田空穂

 蛍を命、魂として詠んでいます。今年も、蛍の時期が近づいた頃、
私は、今年こそ蛍を観に行こう、と決心しました。蛍が見えるスポットを、
周りの人に尋ねたり、インターネットで検索したりしました。すると、
意外にも、一番近くにいる息子が知っていました。隣の町の相川に
あったのです。
 当日、初めて行く場所なので、夕方のまだ明るいうちからお握りを
作って車で出かけました。相川では、田植えの済んだ棚田が並び、
小川に沿って、蛍を観賞するための遊歩道が作られていました。
 車で待つこと約三時間、遊歩道の手すりには、人がだんだん増え、
身を乗り出して、今か今かと待っていました。午後八時前になって、
藪の中に一つ、小さな光が灯りました。
「あっ、光った。」
 しばらくすると、あちらこちらで、二つ、三つ、灯っては消え、灯っては
消えました。そして、たくさんの光が水際や三、四メートルの木の上で
でも光り、飛び始めました。
 私は、私の幼い頃の魂に、出会えたような気持になりました


子どもの朝食について             

  「八月の保育所保健だより」に、子どもの朝食の大切さについて、
今回も書きました。「早寝早起きをして、朝食をしっかり食べましょう」
ということについては、毎月手を変え、品を変えて保護者に啓発して
います。
 今回のおたよりには、次のように書きました。その一部です。

「保育所の給食やおやつは、子どもが一日に必要であるカロリー
量の約40%(内昼食30%・おやつ10%)になっています。残りの
約60%は、家庭での朝食・夕食で摂ることになります。(中略)
子どものからだの約70%が水分でできていますので、脱水症状を
起こして熱中症にならないためにも毎朝、食事や水分を十分に
摂りましょう。」

 本当は、朝食の栄養バランスについても、書きたかったのですが、
毎日、現実の状況に接していますと、「まずは食べましょう」という
ことを強調して書いてしまいました。
 中には、朝起きたままオムツも替えてもらえずミルクも離乳食も
与えてもらえず、登所する乳児もいます。せめて水分だけでも補給
してから連れて来て欲しいと切に思います。
 アメリカなどでは、昼の給食だけでなく、朝の給食を提供している
ところがあると聞きます。学校で朝食を出さなければ、約半数の
子どもが朝食抜きになるということです。
 厚生労働省からは「楽しく食べる子どもに―保育所における食育
に関する指針」が通知されました。子どもの食育を、保護者と共に
考えていくとき、もう少し大きな視野で「生活習慣の中での朝食の
位置付け」を考えていく必要があると思います。
 家族揃って早起きをしなければ、朝食をとる時間はつくれません。
そのためには早く寝なければなりません。まずは周りの大人が、
子どもの体の生理・特徴をよく理解して、家族全体の生活習慣を
見直すことが大切だと思います。