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もみの木エッセイ集 46

◎ 新札幌・新さっぽろ・東札幌・さっぽろ・札幌  

 2008年度「54回小児保健研究会」は、9月下旬札幌で開催された。札幌へは
もう10回位訪れているが、毎回出かける前には、新しい地図で、目的地を
確認する。今回も小さいガイドブックを選んで買った。
 裏に付いている地図を広げて、研修場所へのアクセスを見ると、「新千歳空港」
から「JR新札幌」へ行き、地下鉄東西線の「新さっぽろ」から乗り換えて、
目的地の「東札幌」まで行く。研修場所は、札幌コンベンションセンターである。
そして宿泊ホテルは、地下鉄東西線「東札幌」から乗り、「大通」で地下鉄南北線に
乗り換えて、「さっぽろ」まで乗り、そこから「JR札幌」駅まで歩く。
JR札幌駅からは徒歩圏内にある。
 今年の小児保健研究会では、主に「小児感染症と予防接種」、「食育」などを
聴講したいと思っていた。毎年担当する大学が変わるので、昨年は群馬県前橋、
一昨年は山梨県甲府で開催された。

 今年もMさんと一緒に行くことになった。 9月25日の朝、出発時刻の1時間前
には伊丹空港で落ち合った。Mさんとは半年振りである。今年も出席できることを
喜び合い、少し早めに出発ゲートに入ることにした。
 そこで、この旅最初のハプニングがあった。Mさんの鞄が、手荷物検査時に
チャイムが鳴ってしまった。結局、機内に持ち込む予定の3ケの鞄が全部
開かれることになった。何が原因なのか、Mさん本人も判らない様子であった。
無事にゲートを通過した私は、少し離れた所で待っていた。時間は十分にあった。
 私は、一昨年の甲府での出来事を思い出していた。甲府駅前でバスから
降りた後、私の赤いリュックサックが無くなっていた。最初に気がついたのは、
本人の私ではなくMさんだった。私がバスの後部座席に置き忘れてきたのだ。
結局、初めて訪れた甲府の町で、再度バスに乗り終点のバス営業所まで
荷物を引き取りに行ったのだ。
 うっかりしているのはお互い様であるが、 荷物を台に並べて、慌てた様子も
なく対応している彼女の姿を見ながら、「あまり多くは望まないで、先ずは
無事にゆっくりと旅を楽しもう」と心を引き締めた。
 チャイムの原因は、長さ12〜13cmのハサミであった。最近、彼女は、
時間があれば晒しで布巾を縫っているのだそうである。出かける前に、
手芸道具一式を急いで旅行鞄入れてきたのだ。そのことを、すぐには
思い出せなかったらしい。結局ハサミは、預ける荷物便で送られることになった。
 新千歳空港から、ガイドブックを見ながら、無事に札幌コンベンションセンターに
着いた。東札幌駅からセンターまでの道中には、大きなマーケットのような
建築工事が行われており、今から開けていく街のようであった。
 私と同じS市から出張で研修に来られたTさんとも研修所で会うことができた。
研修第一日目の午後は、「食育」についてのシンポジウムがあった。
「早寝・早起き・朝ごはん」という合言葉は、国民運動として推進されている。
2009年4月から施行される「学校保健安全法」の中にも改定して入れられ、
また同じく4月より施行される「新保育所保育指針」の中でも、食育の推進と
いう項目が入る。

 研修会後、3人で札幌駅にあるJRタワーへ行くことになった。東札幌駅の
近くにホテルをとっているTさんが、また一人で帰ってこないといけないので、
乗り継ぐ電車の中で、
「札幌駅から帰るときは、大通で東西線に乗り換えて、新さっぽろ行きに
乗って、東札幌で降りる」と、電車の中で私は繰り返した。「大通(おおどおり)」
のことを「おおまち」と繰り返し間違って言うTさんが心配だったからだ。 
 JRタワー6階にある待ち時間40分の回転寿司を、根気よく待って食事をし、
32階の展望台に登って札幌市街の夜景を眺望した。札幌の夜景を上から
眺めるだけで、満足した気分になった。
 明日の研修のことを考えて、早めにTさんと別れて、Mさんと二人でホテルへ
向かったが、地図では直ぐ近くにあるにもかかわらず、いくら歩いてもそれらしき
建物はなかった。そして数人の人に、地図を見せながら尋ねたが、わからず、
学生らしい青年に尋ねると、時間がありますからと言って案内してくださった。
迷子になったのは、Tさんではなく私たちの方であった。
 2泊3日の研修が終わり、資料や本などで荷物が増えたので、私もMさんも、
ホテルから荷物を送ることにした。資料の中には、赤ちゃんのミルクの試供品や
成長曲線表、予防接種に関する冊子、新しい傷の治療に関する冊子など、
同僚にもお土産にと思って、たくさん貰ってきた。得をした気分になっていたが、
北海道からの荷物の送料を聞くと、思慮が少し甘かったことに気が付いた。
 Mさんは、せっかく送った荷物の中に、ハサミを入れるのを忘れたと
残念がっていた。帰りの飛行機では、私の預ける荷物の中にハサミを入れ、
無事に帰って来ることができた。

 Mさんは、帰途、縫いあがった一枚の布巾を私にくださった。晒しを二枚重ねにし、
周囲を赤糸で丁寧に縫っていた。四つの角には赤い房もついていた。
かわいい布巾である。
でもどうして、研修旅行鞄の中にまで、手芸道具一式を入れてきたのだろう。
疑問が残ったが、Mさんに詳しく尋ねる機会がなかった。
とりあえずは、MさんもTさんも私も、無事に帰って来ることができて
よかったと思っている。
                  (2008年10月11日)