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もみの木エッセイ集 62
◎ 「鼻が曲がっています」
〜鼻骨骨折〜
出勤して間もなくのこと、
「Mちゃんのおばあちゃんが、今、妹のHちゃんを保育所へ送って来られて、
Mちゃんの鼻が曲がっているので、今から病院へ連れて行くって言っていましたよ」
と、Mちゃんの担任保育士が私に伝えに来た。
Mちゃんのおばあちゃんに詳しく尋ねると、昨夕、保育所に迎えに来た時、
Mちゃんは、保育室に自分の荷物を取りに行こうと廊下を走り、廊下の曲がり角で、
反対側から走ってきたA君とぶつかって鼻部を打って転び、鼻血を出したとの
ことであった。私の居ない時間帯であったので、遅勤の保育士に手当てをして
もらって帰宅し、そして帰宅後も鼻血が止まらないので、近くの総合病院の
救急外来へ行って診てもらったとのことであった。しかし、その後も鼻血は
なかなか止まらなかったこと。今朝も母親は、“Mちゃんの鼻が曲がっている”と
言っているそうである。
昨夕のこの出来事を、その場に居た保育士にも確認をとり、早速、Mちゃんの
母親に電話をした。保育所で発生した事故である。
母親と一緒に登所したMちゃんは、鼻の付け根が少し腫れていた。母親と
相談して、近くの診療所の中にある耳鼻科へ受診することにした。
耳鼻科で、レントゲン撮影をした結果、鼻骨骨折をしているとのことであった。
そして、本院である市立病院耳鼻科へ行くようにと、紹介状を書いてくださった。
一刻でも早くと思い、直ぐに市立病院へ向かった。
市立病院耳鼻科でも再度レントゲン撮影をして診てもらった結果、やはり
鼻骨骨折で、整復術が必要であるとのことであった。そして、医師からこれからの
治療についての説明があった。
‘全身麻酔での整復術が必要であること’‘ここ数日のうちにしなければ骨が癒合して
しまうこと’しかし、‘当病院でも、市内にある病院でも、小児の整復術はしていない’
とのことであった。
先生は、大阪府内の病院を三つほど挙げられ、その中でも手術件数が一番
多いのは、大学付属のT病院ですと言われた。T病院は、同じ府内ではあっても、
わが町とは南北両端に離れていた。
母親は、遠い病院でもいいから、一番良い病院で手術をして欲しいと言われ、
T病院を選ばれた。
そして翌日、Mちゃん親子に私も同行し、紹介状を持ってT病院を受診した。T病院
までの道のりは、バスと電車を乗り継いで、約1時間かかった。
T病院へ受診した結果、Mちゃんは、そのまま入院することとなり、2日後には
整復術をする運びとなった。母親も付き添うことになった。
術前の主治医からの説明では、
‘成人の場合は、通院で整復術を行うが、小児の場合は、全身麻酔をする為、
入院になること’、‘その整復術は、両方の鼻の孔から割り箸のような棒状のものを
差し込んでグッと持ち上げ、折れて曲がった骨を元の位置に戻す治療であること’、
そして、‘元に戻ったら、鼻の孔にガーゼをパックし、外部からも衝撃から守るために、
鼻の上からギプスのようなマスクを付ける’ とのことであった。
3歳児のMちゃんにとっては、大変な治療である。全身麻酔の施術とはいえ、
術後しばらくは口呼吸のみになる。
整復術は無事に終わり、術後の通院が不便であるので、1週間余り入院を
することになった。
鼻の孔にガーゼでパックし、額から鼻部にかけて、仮面のようなマスクを付けて
いる姿は、痛々しかった。
その後、数週間毎に数回の受診を要したが、経過も良く2ケ月位で治療は終了した。
Mちゃんの鼻は、無事に、前と同じく可愛い鼻に戻った。
(2009年10月26日)