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        ■■  西行の京師(さいぎょうのけいし) ■■   

                           vol.01(隔週発行)
                                              2002年4月15日号
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           ( はじめに )

    メールマガシン「西行の京師」ご購読ありがとうございます。
    このメールマガシンは中世の歌人、西行法師の多くの歌の中
    から、現在の行政区分の京都市及びその近辺の地名や寺社名の
    詠み込まれた歌と詞書を取り上げます。歌数が限られています
    ので一年弱の時限発行となる予定です。
    なお、このマガシン発行はメールマガシン「西行の生涯とその歌」
    及び「西行学習ノート」から触発を受け、それが直接の契機と
    なったことを付記します。(この挨拶文は3号までとします)

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        ■ 西行の京師   第1回 ■

     目次   1 西行年譜
           2 今号の歌と詞書
           3 寺社・所在地情報
           4 関連歌のご紹介
           5 お勧め情報
           6 エピソード

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   《 1・ 西行年譜 》   

    1118 年      西行生まれる
     1135 年 18歳  成功(一種の買官)により、兵衛尉となる
     1140 年 23歳  10月15日、出家する
    1145 年  28歳  このころ、初回の陸奥への旅に出る 
    1149 年 32歳  このころ、高野山に草庵を結ぶ
    1151 年 34歳  詞華和歌集に詠み人知らずとして
             「身を捨つる・・・」歌が入集する
    1168 年 51歳  このころ、四国、中国への旅をする
    1186 年 69歳  二度目の陸奥への旅をする
    1187 年 70歳  千載和歌集に18首入集する
    1189 年 72歳 (宮川歌合)できる。河内、弘川寺に移る
    1190 年 73歳  2月16日、弘川寺にて入寂

   ◎ 没後、新古今和歌集に歌人中もっとも多くの歌が採録されて
     いて、94首を数える。
   ◎ 藤原定家卿の「小倉百人一首」第86番に下の歌が撰入する。
     「歎けとて月やは物を思はするかこち顔なる我が涙かな」
                (この年表は3号までとします)
 
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   《 2・今号の歌と詞書 》

   《 歌 》

  1  いつか又めぐり逢ふべき法の輪の嵐の山を君しいでなば
             (268P 残集)
  
  2  玉がきはあけも緑も埋もれて雪おもしろき松の尾の山
             (99P 冬歌)

   《 詞書 》
   
  ○ 秋の末に法輪寺にこもりてよめる        (89P)
  
  ○ いまだ世遁れざりけるそのかみ、西住具して法輪にまゐ
    りたりけるに、空仁法師經おぼゆとて庵室にこもりたり
    けるに、ものがたり申して、歸りけるに、舟のわたりのところへ
    空仁まで來て名殘惜しみけるに、筏のくだりけるをみて (267P)
  
  ○ このかへりごと、法輪へまゐりける人に付けてさし置かせける
                          (269P)

  (1)の歌の解釈
    
    嵐山の法輪寺で修行しているあなた(空仁法師)が修行の
    地をどこかに移したとしても、またお逢いしたいものです。
  
  (2)の歌の解釈

    松尾大社の玉垣の朱の色も、そして緑の色も雪の白に覆われて、
    なんとも趣の深い松尾山なのだろう。

  ーー 補筆事項ーー

   1 法の輪    法輪寺のこと
   2 嵐の山    嵐山のこと
   3 松の尾の山  松尾山のこと
   4 玉がき    神社や聖地などを囲む垣根のこと
   
      5(法)について 西行の歌にはたくさんの「法」の文字の入った
            歌があります。ここでも「法」は単純に法輪寺
            の(法)ではなくして、仏道の(法)の意味が
            込められています。同じく仏道を歩み、極めよう
            とする連帯感、仲間意識みたいな近しさが
            (法の輪)から感じ取ることができます。
            この歌は西行落飾前の歌で、自身も出家する
            ことを決意していたと解釈されています。
   
     6 空仁     俗名  大中臣清長(生没年未詳)
                千載集に4首入集
 
      7 西住     俗名  源次兵衛季正(生没年未詳)
            西住は西行と同じ頃に出家したと考えられて
            います。醍醐寺の僧侶として記録にみえます。
            しばしば西行と行動をともにしたことが
            山家集からもうかがい知ることができます。    
            千載集に4首入集。

   
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    《 3・ 所在地情報 》

  ◎  法輪寺(ほうりんじ)

  所在地  西京区嵐山虚空蔵山68−3
  電話   075−862−0013
  交通   阪急嵐山駅から徒歩10分。「桂駅乗り換え嵐山駅下車」 
       京福電鉄嵐山駅下車、京都バス、京都市バス嵐山下車。
  
  概要  和銅6年(713)行基が創建したと伝えられる。本尊の
       虚空蔵菩薩は日本三大虚空蔵菩薩のひとつ。(ほかは
       伊勢朝熊山と会津柳津)4/13日を中心とした3月から5月の
       の休日は(十三まいり)で盛装した子供たちで賑わう。
       応仁の乱で堂宇焼失。また、幕末の蛤御門の変によっても
       焼失。現在の堂宇は明治17年から昭和3年にかけて建て
       られたものです。
  拝観   自由

  ◎  嵐山 (あらしやま)

  交通  京都駅からJR嵯峨嵐山駅。市バス、京都バス嵐山公園下車
       四条大宮から京福電鉄嵐山下車
       阪急、桂駅乗り換え嵐山下車
  
  概要  京都有数の観光地。山の名称としての「嵐山」は大堰川
       右岸の山を指し西京区。大堰川にかかる渡月橋は右京区。
       古来からたくさんの歌に詠まれてきました。

  ◎  松尾大社 (まつおたいしゃ)     

  所在地  西京区嵐山宮町3番地
  電話   075-871-5016
  交通   阪急松尾駅から徒歩5分。(桂駅乗り換え松尾駅下車)
       JP京都駅から京都バス、28系統市バスで松尾大社前
       下車、徒歩すぐ。

  概要  渡来系の秦氏の長老、秦都理が大宝元年(701)年に興した。
       農耕、酒造の神で知られる。儀式殿の横にある亀の井は、
       長寿の水と呼ばれる松尾山からの名水が湧く。「霊亀」の
       元号はこの亀の井からのもの。
       境内にはお酒の資料館もある。お酒造りに関わる方々から
       「松尾様」として絶大な信仰を受ける。
  
  拝観   自由。ただし、庭園と宝物館は拝観料が必要。


    松尾大社と法輪寺の画像は下にあります。

    http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/kazu02aa/sho1.html

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    《 4・関連歌のご紹介 》

   1 春ごとに思ひやられし三吉野の花は今日こそ宿にさきけれ
                  (後嵯峨天皇 続古今集)
    ☆ この歌は嵐山の仙洞御所のものです。嵐山の山桜は吉野山の
      桜を移植したということが、この歌によって解釈される
      そうです。 
   
   2 大井川ふるきながれを尋ねきて嵐の山に紅葉をぞみる
                   (白河天皇 後拾遺集)

   3 年をへて松の尾山の葵こそ色もかはらぬかざしなりけれ
              (祐子内親王家紀伊 続古今集)

   4 千早振松の尾山のかげ見ればけふぞ千とせのはじめなりける
                    (源兼澄 後拾遺集)

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    《 5・お勧め情報 》

       ちょっと足をのばして西山の淨住寺、地蔵院、
       華厳寺(鈴虫の寺)、松尾大社、法綸寺、そして
       嵯峨野観光にレンタサイクルが便利です。

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    《 6・エピソード 》

  システムのことは何も分からないのに、メルマガを発行したいと
  思ったのは昨年の夏ごろでした。発行は今年の春を予定していて、
  その旨、公言してきました。公言して自分を追いこまないと、
  メルマガ発行などできるものではない、そんなふうに思っていたの
  です。なんとも無謀なことです。
  半年以上もの準備期間を取りました。その期間に発行に関係する
  システムの勉強と、そして西行の勉強をしようと目論んでいました。
  しかし、両方とも遅々として進みません。
  自分で設定した今年の春がやってきました。うまくやれるのかどうか
  不安は強いのですが、ともかくも船出します。
  たくさんの誤謬を犯すと思います。読者の方々にいろいろご教示を
  受けながら、ともに勉強したいと思います。
  御支援、御指導をお願いいたします。

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