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      ■■ 西行の京師(さいぎょうのけいし) ■■   

                             vol.03(隔週発行)
                             2002年5月13日号
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              ( はじめに )

     メールマガジン「西行の京師」ご購読ありがとうございます。
     このメールマガジンは中世の歌人、西行法師の多くの歌の中
     から、現在の行政区分の京都市及びその近辺の地名や寺社名の
     詠み込まれた歌と詞書を取り上げます。歌数が限られています
     ので一年弱の時限発行となる予定です。
     なお、このマガジン発行はメールマガジン「西行の生涯とその歌」
     及び「西行学習ノート」から触発を受け、それが直接の契機と
     なったことを付記します。(この挨拶文は今号までとします)

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         ■ 西行の京師   第3回 ■

    目次    1 西行年譜
           2 今号の歌
           3 寺社・所在地情報
           4 関連歌のご紹介
           5 お勧め情報
           6 エピソード

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   《 1・ 西行年譜 》   

    1118 年      西行生まれる
    1135 年 18歳  成功(一種の買官)により、兵衛尉となる
    1140 年 23歳  10月15日、出家する
    1145 年 28歳  このころ、初回の陸奥への旅に出る 
    1149 年 32歳  このころ、高野山に草庵を結ぶ
    1151 年 34歳  詞華和歌集に詠み人知らずとして
              「身を捨つる・・・」歌が入集する
    1168 年 51歳  このころ、四国・中国への旅をする
    1186 年 69歳  二度目の陸奥への旅をする
    1187 年 70歳  千載和歌集に18首入集する
    1189 年 72歳 (宮川歌合)できる。河内、弘川寺に移る
    1190 年 73歳  2月16日、弘川寺にて入寂

   ◎ 没後、新古今和歌集に歌人中もっとも多くの歌が採録されて
     いて、94首を数える。
   ◎ 藤原定家卿の「小倉百人一首」第86番に下の歌が撰入する。
     「歎けとて月やは物を思はするかこち顔なる我が涙かな」
                (この年表は今号までとします)
 
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《 2・今号の歌 》

   《 歌 》

 1 つつめども人しる戀や大井川ゐせぎのひまをくぐる白波
                    (158P 戀歌)

 2 大井川君が名殘のしたはれて井堰の波のそでにかかれる
                    (268P 残集)
  
 今号は嵐山や大井川に関する詞書がありません。詞書にある地名と歌に
 ある地名が同一になると良いのですが、そんなに都合よくいきません。
 したがって詞書の書けない号は今後たくさん出てきます。
 そこで今号は、西行とは関係ありませんが補筆事項で「戸無瀬の滝」と
 「小督庵(こごうあん)」について触れてみます。

 (1)の歌の解釈

   ある人を好きだというその恋心を、他の人に悟られないように
   意識して特に注意しているというのに、なんということだろうか。
   大井川の井堰の隙間をくぐって行く水のように、自分の言動の
   端々から、その恋心は人に知られてしまうのだ。
  
  「良く似た歌がありますので記述します。」
 
 ◎ つつめども涙の色にあらはれて忍ぶ思ひは袖よりぞちる (156P)
 
 (2)の歌の解釈
  
   「大井川であなたにお別れしょうとして、名残りが惜しくて、
   井堰の波が袖にかかって濡れるように、涙で袖は濡れましたよ」
                「安田章生氏(西行)より引用」

   ーー補筆事項ーー

   1 井堰・ゐせぎ
         湖沼、河川などの水量調節のために用いる水利
         施設のこと。当時から土、木、石などを用いて、
         大井川の水量調節をしていたものでしょう。
  
   2 戸無瀬の滝
         大井川の歌枕。大井川右岸の道を上流の方に進んで
         行くと、数条の沢があります。うち、一条にのみ水が
         少量流れています。嵐山の急峻な沢を流れ落ちる水で、
         滝という感じではありません。説明板もありませんので、
         「ここが戸無瀬の滝だ」と言われなければ、見過ごして
         しまうような所です。
   3 小督   
         209ページの詞書に「しげのり、ながのり」とありますが、
         この「しげのり」の娘です。第80代高倉帝に見初められて、
         1177年に範子内親王を産みました。この範子内親王は賀茂社
         の斎院の第34代斎王となっています。
         小督は高倉帝の皇后の建礼門院平徳子に仕えていましたが、
         高倉帝の寵を得たことによって、平清盛の怒りをかい、嵯峨野に
         隠棲しました。琴の名手として有名だったようです。
         小督庵は渡月橋北詰めを川沿いに50メーターほど行った所に
         あります。小督が実際に庵を結んでいた所かどうかは不明の
         ようです。
          
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  《 3・所在地情報 》

   
  ◎  嵐山 (あらしやま)

  交通   京都駅からJR嵯峨嵐山駅下車。
       市バス、京都バス嵐山公園下車。
       四条大宮から京福電鉄嵐山駅下車。
       阪急、桂駅乗り換え嵐山駅下車。
  
  概要   京都有数の観光地。山の名称としての「嵐山」は大堰川
       右岸の山を指し西京区。大堰川にかかる渡月橋は右京区。
       古来からたくさんの歌に詠まれてきました。
        (この所在地情報は、創刊号及び前号と重複しています)  
       
     下は嵐山、嵯峨野の写真です。少し追加しました。

    http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/kazu02aa/ara01.html
 
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  《 4・関連歌の御紹介 》

  1 となせ河玉ちる瀬々の月をみて心ぞ秋にうつりはてぬる
                   (藤原定家 続千載集)

  2 大井川となせの滝に身をなげて早くと人にいわせてしがな
                   (空仁法師 千載集)

  3 惜めどもよもの紅葉ば散果ててとなせぞ秋の泊なりける
                   (藤原公実 金葉集)

  4 鵜飼舟下す戸無瀬の水馴棹さしも程なく明るよは哉
                   (藤原良経 秋篠月清集)
 
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  《 5・お勧め情報 》

  今回は「保津川下り」です。ただし、私は体験していません。
  以下のページからどうぞ。

   http://www1.sphere.ne.jp/kameoka/ship.html

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  《 6・エピソード 》

私は自宅で一人で仕事をしていて、カレンダーとは同調しない
 生活を送っています。
 世の中はゴールデンウイークの後半の5月3日に一日休みを取って、
 自転車で嵐山から大沢の池あたりまで走りまわってみました。
 西京区の桂に住んでいますので、自転車でしばしば松尾とか嵐山
 には行くのです。嵐山まで自転車で20分程度でしょうか。
 当日の嵐山もすごいとしかいえない人出でした。
 渡月橋の西詰(実際は南詰です)の道を上流に向かって進みました。
 途中に「戸無瀬の滝」があります。現在はとても水量は乏しいのですが、
 急斜面ですので、一雨降ったらすごい水量だろうと思います。
 平安の貴族たちはこの滝の歌を詠んでいます。
 ですが、西行にこの滝を詠んだ歌がありません。不思議です。

 「大悲閣千光寺」は嵐山の中腹に位置します。京都の豪商「角倉家」の
 「角倉了以」が保津川開削の時の犠牲者を祀るために建てた一宇です。
 観光寺社ではありません。
 多くの観光寺社のように見所がたくさんあるというわけではありません。
 言ってしまえば、お寺自体には見所はありません。
 でもなんという気持ちの落ち着けるお寺でしょうか。
 もし、読者の皆さんが嵐山観光をなさるとき、嵯峨野もいいですが、
 時間がありましたら、この大悲閣もお勧めいたしたいと思います。
 画像をご覧いただくとわかりますが眼下に保津川の流れがあります。
 眼を転じれば遠く比叡山まで見渡せます。
 桜と紅葉の季節が特にお勧めです。
 
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