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 山家集の研究   (佐佐木信綱校訂・岩波文庫・山家集から)

  うぐいすの歌  

  

 「 歌 」
 
  1  15 
      三笠山春はこゑにて知られけり氷をたたく鶯のたき
  2  21 
      古巣うとく谷の鶯なりはてば我やかはりてなかむとすらむ
  3  21 
      鶯は我を巣もりにたのみてや谷の外へは出でて行くらむ
  4  21
      春のほどは我が住む庵の友になりて古巣な出でそ谷の鶯
  5  22
      つくり置きし梅のふすまに鶯は身にしむ梅の香やうつすらむ
  6  22 
      すぎて行く羽風なつかし鶯のなづさひけりな梅の立枝を
  7  22 
      鶯は田舎の谷の巣なれどもだみたる聲は鳴かぬなりけり
  8  22 
      雨しのぐ身延の郷のかき柴に巣立はじむる鶯のこゑ
  9  22 
      鶯の聲にさとりをうべきかは聞く嬉しさもはかなかりけり
  10 22
      思ひ出でて古巣にかへる鶯は旅のねぐらや住みうかるらむ
  11 28 
      花の色や聲に染むらむ鶯のなく音ことなる春のあけぼの
  12 30 
      雪とぢし谷の古巣を思ひ出でて花にむつるゝ鶯の聲
  13 38
      鶯の聲に櫻ぞちりまがふ花のこと葉を聞くここちして
  14 46
      ほととぎす花橘になりにけり梅にかをりし鶯のこゑ
  15 47
      鶯の古巣より立つほととぎす藍よりもこき聲の色かな
  16 197 
      世を出でて溪に住みけるうれしさは古巣に残る鶯のこゑ
  17 209
      櫻花ちりぢりになるこのもとに名残を惜しむ鶯のこゑ
  18 237
      鶯の古巣よりたつほととぎす藍よりもこきこゑのいろかな(重複掲載)
  19 243
      鶯のなくねに春をつげられてさくらのえだやめぐみそむらむ
 
  うぐひす
  20  16
      子日しに霞たなびく野邊に出でて初うぐひすの聲をきくかな
  21  21
      うぐひすのこゑぞ霞にもれてくる人目ともしき春の山里
  22  21
      うぐひすの春さめざめとなきゐたる竹の雫や涙なるらむ
  23  21
      うぐひすは谷の古巣を出でぬともわが行方をば忘れざらなむ
  24  21
      うき身にて聞くも惜しきはうぐひすの霞にむせぶ曙のこゑ
  25  22
      梅が香にたぐへて聞けばうぐひすの聲なつかしき春の山ざと
  26  22
      山ふかみ霞こめたる柴の庵にこととふものは谷のうぐひす
  27  22  
      雪わけて外山が谷のうぐひすは麓の里に春や告ぐらむ
  28  233
      注連かけてたてたるやどの松に来て春の戸あくるうぐひすの聲
  29  262
      三笠山春をおとにて知らせけりこほりをたたくうぐひすの瀧
  30  271
      色つつむ野邊のかすみの下もえぎ心をそむるうぐひすのこゑ
  31  271
      われ鳴きてしか秋なりと思ひけり春をもさてやうぐひすの聲
  32  271
      色にしみ香もなつかしき梅が枝に折しもあれやうぐひすの聲
  33  272 
      うぐひすの聲を山路のしるべにて花みてつたふ岩のかけ徑

 「 詞書 」

 21   閑中鶯といふことを
 21   雨中鶯
 21   住みける谷に、鶯の聲せずなりにければ
 21   鶯によせておもひをのべけるに
 22   梅に鶯の鳴きけるを
 22   鳴き絶えたりける鶯の、住み侍りける谷に、聲のしければ
 28   春のあけぼの、花見けるに、鶯の鳴きければ
 209  (前略)南面の櫻に鶯の鳴きけるを聞きてよみける
 233  元日聞鶯
 271  鶯

  

■ 入力    2001年12月17日
■ 入力者   阿部和雄
■ 校正    未校正

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