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   ほととぎす総覧(岩波文庫西行全歌集から)

      郭公・時鳥・ほととぎす (ぬえ・呼子鳥は除外)



    岩波文庫西行全歌集(ほととぎす)総覧 歌番号順

   山家39・聞書18・残集7・御裳6・宮河2・拾遺1・松屋6・西行9・家集1

   合計89首  重複歌分引く 83首  全歌集ホトトギス歌合計89首

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◎岩波文庫山家集にあって岩波文庫西行全歌集に無い歌。1首

    美濃の国にて

01 郭公都へゆかばことづてむ越えくらしたる山のあはれを
  (岩波文庫山家集47P夏歌・西行上人集追而加書・西行物語)

◎岩波文庫西行全歌集にあって岩波文庫山家集に無い歌。以下6首。


01 盛り見る花の梢にほとゝぎす初声ならすみ山辺の里

02 ほとゝぎすたゞ一声の忍び音を聞くあはれなるあかつきの空

03 時鳥信太の杜の一声は夜だに明けばと思はれぬかな

04 あやめふく宿のしるしに郭公一声なりとねをも掛けなん

05 ほとゝぎすいそぐ早苗を取さして鳴きつる方へ心をぞやる

06 昼は出でてすがたの池に影うつせ声をのみ聞く山時鳥

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山家集

0169 (初めの4桁の数字は歌番号)
 春の中に郭公を聞くと云事を

01 うれしとも思ひぞわかぬ郭公春聞くことのならひなければ  

0179
 無言なりけるこ頃、郭公の初声を聞きて

02 郭公人に語らぬをりにしも初音聞くこそかひなかりけれ

0180
 尋ねざるに郭公を聞くと云事を、賀茂社にて人々よみ
 ける

03 ほとゝぎす卯月の忌に斎こもるを思ひ知りても来鳴くなる哉

0181
 夕暮の郭公

04 里なるゝたそかれ時のほとゝぎす聞かずがほにてまた名乗らせん

0182
 郭公

05 我宿に花たちばなを植ゑてこそ山ほとゝぎす待つべかりけれ

0183
06 尋ぬれば聞きがたきかとほとゝぎす今宵ばかりは待ち心見ん

0184
07 郭公待つ心のみつくさせて声をば惜しむ五月なりけり

0185
 人に代りて

08 待つ人の心を知らばほとゝぎす頼もしくてや夜を明さまし

0186
 郭公を待ちて空しく明けぬと云事を

09 ほとゝぎす聞かで明けぬと告げがほに待たれぬ鳥の音ぞ聞ゆなる

0187
10 郭公聞かで明けぬる夏の夜の浦島の子はまことなりけり

0188
 郭公歌五首よみけるに

11 ほとゝぎす聞かぬものゆゑ迷はまし春を尋ねぬ山路なりせば

0189
12 待つことは初音までかと思ひしに聞き古されぬほとゝぎすかな

0190
13 聞き送る心を具してほとゝぎす高間の山の峰越えぬなり

0191
14 大井川小倉の山のほとゝぎす井堰に声のとまらましかば

0192
15 ほとゝぎすそののち越えん山路にも語らふ声は変らざらなん

0193
 ほとゝぎす

16 蜀魂思ひも分かぬ一声を聞きつといかゞ人に語らん

0194
17 ほとゝぎすいかばかりなる契にて心つくさで人の聞くらん

0195
18 語らひしその夜の声はほとゝぎすいかなる世にも忘れんものか

0196
19 ほととゝぎす花たちばなはにほふとも身を卯の花の垣根忘れな

0197
 雨中待郭公と云事を

20 郭公忍ぶ卯月も過ぎにしを猶声惜しむさみだれの空

0198
 雨中郭公

21 さみだれの晴れ間も見えぬ雲路より山ほとゝぎす鳴きて過ぐなり●御裳濯32

0199
 山寺郭公、人々よみける

22 郭公聞くにとてしもこもらねど初瀬の山はたよりありけり

0200
 五月つごもりに、山里にまかりて立ち帰りけるを、郭公
 もすげなく聞き捨てて帰りし事など、人の申つかはし
 たりける返事に

23 ほとゝぎすなごりあらせて帰りしが聞き捨つるにもなりにける哉

0586
 後朝郭公

24 さらぬだに帰りやられぬしのゝめに添へて語らふ郭公

0750
 待賢門院の女房堀川の局もとより、言ひおくられける 

25 この世にて語らひおかんほとゝぎす死出の山路のしるべともなれ

0751
 返し

26 ほとゝぎす鳴く鳴くこそは語らはめ死出の山路に君しかゝらば

1443
27 奧に猶人見ぬ花の散らぬあれや尋ねを入らん山ほとゝぎす

1448
 題不知

28 山里の人も梢の松が未にあはれに来ゐるほとゝぎす

1449
29 並べける心はわれかほとゝぎす君待ちえたる宵の枕に

1463
 郭公十首

30 鳴かん声や散りぬる花の名残なるやがて待たるゝほとゝぎす

1464
31 春暮れて声に花咲くほとゝぎす尋ぬることも待つも変らぬ

1465
32 聞かで待つ人思ひ知れ郭公聞きても人は猶ぞ待つめる

1466
33 所がら聞きがたきかとほとゝぎす里を変へても待んとぞ思ふ

1467
34 初声を聞きてののちはほとゝぎす待も心の頼もしき哉

1468
35 さみだれの晴れ間尋ねてほとゝぎす雲井に伝ふ声聞ゆなり

1469
36 ほとゝぎすなべて聞くには似ざりけり古き山辺の暁の声

1470
37 ほとゝぎす深き山辺に住むかひは梢に続く声を聞くかな

1471
38 夜の床を泣き浮さなん郭公物思ふ袖を問ひに来らば

1472
39 ほとゝぎす月の傾く山の端に出でつる声の帰り入るかな

以上、山家集で39首「ほとゝきす29首・郭公9首・蜀魂1首」
750番は堀川局の歌。

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聞書集

73 
01 あやめ葺く軒に匂へるたちばなにほとゝぎす鳴くさみだれの空●残集9

75 
02 ほとゝぎす曇りわたれる久方の五月の空に声のさやけさ

75 
03 むまたまの夜鳴く鳥はなき物を又たぐひなき山ほとゝぎす

76 
04 夜鳴くに思ひ知られぬほとゝぎす語らひてけり葛城の神

77
05 待つはなほ頼みありけりほとゝぎす聞くともなしに明くるしのゝめ

78
06 うぐひすの古巣より立つほとゝぎす藍よりも濃き声の色かな●御裳濯29

79 
07 冬聞くはいかにぞいひてほとゝぎす忌む折の名か死出の田長は

80
08 声立てぬ身を卯の花の忍び音はあはれぞ深き山ほとゝぎす

82
09 あはれ籠る思ひを囲ふ垣根をば過ぎて語らへ山ほとゝぎす

83 
10 わが思ふ妹がり行きてほとゝぎす寝覚めの袖のあはれ伝えよ

84
11 つくづくとほとゝぎすもや物を思ふ鳴く音に晴れぬさみだれの空
    
85 月前郭公

12 さみだれの雲重なれる空晴れて山ほとゝぎす月に鳴くな

188
13 卯の花を垣根に植ゑてたち花の花待つものを山ほとゝぎす

235 ほとゝぎすの鳴きけるを聞きて

14 ほとゝぎす死出の山路へ帰り行きてわが越え行かむ友になるらん●山家750

243
15 花散りぬやがて尋ねんほとゝぎす春を限らじみ吉野の山

247 郭公

16 我ぞまづ初音聞かましほとゝぎす待つ心をも思ひ知られば

248 
17 たち花の盛り知らなんほとゝぎす散りなんのちに声は嗄るとも

249
18 よそに聞くはおぼつかなきにほとゝぎすわが軒に咲くたち花に鳴け

「ほとゝぎす18首」
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残集


    隣を争ひて郭公を聞くといふことを

4 たが方に心ざすらむほとゝぎす境の松のうれに鳴くなり   

    郭公に寄せて思ひを述べけるに

5 待つ宿に来つゝ語らへほとゝぎす身を卯の花の垣根きらはで 

    郭公

6 聞かずともこゝをせにせんほとゝぎす山田の原の杉の群立●御裳濯30

    雨中郭公

7 たち花のにほふ梢にさみだれて山ほとゝぎす声かをるなり

8 ほとゝぎす五月の雨をわづらひて尾上の岫の杉に鳴くなり

    五月待二郭公一といふことを

9 あやめ葺く軒ににほへるたち花に来て声具せよ山ほとゝぎす

    早苗を採りて郭公を聞くといふことを

10 ほとゝぎす声に植ゑ女のはやされて山田の早苗たゆまでぞ取る

「ほとゝぎす7首」
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御裳濯河歌合

十四番

 左持

27 つくづくと物思ひおればほとゝぎす心にあまる声聞ゆ也

 右

28 憂き世思ふ我かはあやな郭公あはれこもれる忍音の声 ●西行43

  両首の郭公、ともに心こもれり。よき持也。

十五番

 左
29 鶯の古巣より立つ時鳥藍よりも濃き声の色かな ●聞書78

 右勝

30 聞かずともこゝをせにせむ郭公山田の原の杉の群立 ●残集6

  古き歌合の例は、花を尋ぬるにも、見たるをまさるとし、郭公
  待つにも、聞を猶勝とする事なれど、これはたゞ歌の優劣を申べき
  也。藍より濃き心、をかしくは聞えながら、又折々人よめる事なる
  べし。山田の原のといへる、凡俗及がたきに似たり。勝と申べし。

十六番

 左勝

31 ほとゝぎす深き峰より出にけり外山の裾に声の落くる ●西行44

 右

32 五月雨の晴れ間も見えぬ雲路より山時鳥鳴きて過ぐ也 ●山家198

  右歌、難とすべき所なく、たけ高く聞こゆ。左歌、郭公深山の峰より
  出て、外山の裾に声の落ちくらん程、今まさしく聞心地して、めづら
  しく見ゆ。左勝と申侍らん。

「ほとゝぎす2首・郭公2首・時鳥2首 計6首」

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宮河歌合

廿二番  左勝

43 時鳥谷のまにまにおとづれてさびしかりける峰つゞ哉

     右

44 人聞かぬ深き山路の郭公鳴く音もいかにさびしかるらん

  左歌、面影ありて優にこそ侍るめれ。右歌も、鳴音もいかになど
  いへる、誠にさびては聞ゆれど、左の、谷のまにまに、猶深く
  思入たるところ侍ば、勝と申べし。

「時鳥1首・郭公1首 計2首」 

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 拾遺 (六家集版本)

5 ほとゝぎす聞く折にこそ夏山の青葉は花におとらざりけれ

「ほとゝぎす1首」

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 松屋本

13 盛り見る花の梢にほとゝぎす初声ならすみ山辺の里

19 ほとゝぎすたゞ一声の忍び音を聞くあはれなるあかつきの空

20 時鳥信太の杜の一声は夜だに明けばと思はれぬかな

21 あやめふく宿のしるしに郭公一声なりとねをも掛けなん

22 ほとゝぎすいそぐ早苗を取さして鳴きつる方へ心をぞやる

23 昼は出でてすがたの池に影うつせ声をのみ聞く山時鳥

「ほとゝぎす3首・時鳥2首・郭公1首 計6首」

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 西行法師家集

   夏

38 世の憂さを思ひし知ればやすき音をあまりこめたる郭公かな

39 憂き身知りてわれとは待じほとゝぎす橘にほふ隣頼みて

40 待かねて寝たらばいかに憂からまし山ほとゝぎす夜を残しつゝ

41 ほとゝぎす花橘になりにけり梅にかをりしうぐひすの声

42 ほとゝぎす声のさかりに成にけり尋ぬ人にさかり告ぐらし

43 憂き世思ふわれかはあやな時鳥あはれこもれる忍音の声●御裳濯28

44 時鳥深き峰より出にけり外山の裾に声の落くる●御裳濯31

45 ほとゝぎすいかなるゆゑの契りにてかゝる声ある鳥と成剣

46 高砂の尾上を行ど人逢はず山ほとゝぎす里馴れてけり

「ほとゝぎす6首・時鳥2首・郭公1首 計9首」 

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 家集

33 時鳥鳴きわたるなる波の上に声たたみおく志賀の浦風

「時鳥1首」

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         山家集の研究   (佐佐木信綱校訂・岩波文庫、山家集から)

    ほととぎすの歌  数字はページ( )内は回数 最後の数字は新編国歌体系歌番号


     郭公 時鳥 ほととぎす 子規 呼子鳥 よぶこ鳥 
     杜鵑 杜宇 死出の田長 蜀魂 ぬえ
               
    「ぬえ」 については確信がありません。
            
 郭公
 「 歌 」
 1 41 
     嬉しとも思ひぞわかぬ
郭公春聞きくことの習ひなければ      0169
 2 43  
     
郭公きかで明けぬる夏の夜の浦島の子はまことなりけり     0187
 3 44 
     まつ人の心を知らば
郭公たのもしくてや夜をあかさまし       0185
 4 44 
     
郭公卯月のいみにゐこもるを思ひ知りても來鳴くなるかな     0180
 5 44 
     里なるるたそがれどきの
郭公きかずがほにて又なのらせむ    0181
 6 44 
     
郭公ききにとてしもこもらねど初瀬の山はたよりありり       0199
 7 45 
     まつことは初音までかと思ひしに聞きふるされぬ
郭公かな    0189
 8 45
     所から聞きがたきかと
郭公さとをかへても待たむとぞ思ふ    1466
 9 46
     さみだれの晴間尋ねて
郭公雲井につたふ聲聞ゆなり       1468
10 46 
     
郭公なべて聞くには似ざりけり深き山べのあかつきの聲     1469
11 46
     
郭公月のかたぶく山の端に出でつるこゑのかへりいるかな   1472
12 46
     ならべける心はわれか
郭公君まちえたる宵のまくらに      1449
13 46 
     世のうきをおもひし知ればやすきねをあまりこめたる
郭公かな  法師38
14 47
     
郭公いかなるゆゑの契りにてかかる聲ある鳥となるらむ     法師45
15 47 
     
郭公都へゆかばことづてむ越えくらしたる山のあわれを     全歌集無し
16 137
     此世にてかたらひおかむ
郭公しでの山路のしるべともなれ    0750
                         (待賢門院堀川歌)
  
 「 詞書 」  
 41  春のうちに郭公をきくといふことを              
 43  雨のうちに郭公を待つといふことをよみける
 43  郭公を待ちて明けぬといふことを
 44  無言なりけるころ、郭公の初聲を聞きて
 45  百首の歌の中に郭公十首
 46  郭公
 236  郭公
 237  月前郭公
 259  郭公を
 263  郭公
 263  雨中郭公
 263  五月待郭公といふことを

 時鳥
 「 歌 」
17  43 
      わが宿に花たちばなをうゑてこそ山
時鳥待つべかりけり      0182
18  43
      尋ぬれば聞きがたきかと
時鳥こよひばかりはまちこころみむ   0183
19  43
      
時鳥まつ心のみつくさせて聲をば惜しむ五月なりけり        0184
20  43
      
時鳥なかで明けぬと告げがほにまたれぬ鳥のねぞ聞こゆなり  0186
21  44
      
時鳥人にかたらぬ折にしも初音聞くこそかひなかりけれ      0179
22  44
      五月雨の晴間もみえぬ雲路より山
時鳥なきて過ぐなり●御裳32 0198
23  44
      
時鳥きく折にこそ夏山の青葉は花におとらざりけれ  六歌集版拾遺 5
24  45 
      かたらひしその夜の聲は
時鳥いかなる世にも忘れんものか   0195
25  45
      
時鳥きかぬものゆゑまよはまし花を尋ねぬ山路なりせば     0188
26  45
      聞きおくる心を具して
時鳥たかまの山の嶺こゆぬなり       0190
27  45
      
時鳥そののちこえむ山路にもかたらふ聲はかはらざらなむ    0192
28  45
      なかん聲や散りぬる花の名残なるやがて待たるる
時鳥かな   1463 
29  45
      春くれてこゑに花咲く
時鳥尋ぬることも待つもかはらぬ      1464
30  45
      きかで待つ人思ひしれ
時鳥ききても人は猶ぞまつめる      1465 
31  46
      初聲を聞きての後は
時鳥待つも心のたのもしきかな        1467
32  46 
      
時鳥ふかき山邊にすむかひは梢につづく聲を聞くなり       1470
33  46
      夜の床をなきうかされむ
時鳥物思ふ袖をとひにきたらば      1471 
34  46
      山里の人もこずゑの松がうれにあわれにきゐる
時鳥かな    1448
35  46
      うき身知りて我とは待たじ
時鳥橘にほふとなりたのみて     法師39
36  47
      うき世おもふわれかはあやな
時鳥あわれもこもる忍びねの聲 ●御裳28・法師43
37  47
      
時鳥ふかき嶺より出でにけり外山のすそに聲のおちくる   ●御裳31・法師44
38  47
      
時鳥なごりあらせて歸りしか聞き捨つるにも成りにけるかな    0200
39  137
      
時鳥なくなくこそは語らはめ死出の山路に君しかからば       0751
40  144
      さらぬだに歸りやられぬしののめにそへてかたらふ
時鳥かな   0586
41  259
      我ぞまづ初音きかまし
時鳥まつこころをも思ひしられば      聞書16
42  259
      たちばなのさかり知らなむ
時鳥ちりなむのちに聲はかるとも   聞書17
43  263
      たちばなのにほふ梢にさみだれて山
時鳥こゑかをるなり     残集7 
44  273 
      つくづくとものおもひおれば
時鳥こころにあまる聲きこゆなり   御裳27
45  274
      
時鳥こゑのさかりになりにけりたづねぬ人にさかりつぐらし    法師42

 「 詞書 」
 43  時鳥
 44  雨中時鳥
 44  夕暮時鳥といふことを
 44  山寺の時鳥といふことを人々よみけるに
 44  時鳥を
 45  時鳥の歌五首よみけるに
 47  五月の晦日に、山里にまかりて立ちかへりにけるを、時鳥も
      すげなく聞き捨てて歸りしことなど、人の申し遣しける返ごとに
 144 後朝時鳥
 263 早苗をとりて時鳥を聞くといふことを
 273 時鳥


 ほととぎす  
 「 歌 」
46   43
       
ほととぎすしのぶ卯月も過ぎにしを猶聲惜しむ五月雨の空      0197
47   45
       
ほととぎすいかばかりなる契りにて心つくさで人の聞くらむ      0194
48   45
       
ほととぎす花橘はにほふとも身をうの花の垣根忘るな         0196
49   46
       聞かずともここをせにせむ
ほととぎす山田の原の杉の村立 ●残集6 御裳30
50   46
       
ほととぎす花橘になりにけり梅にかをりし鶯のこゑ          法師41
51   47
       鶯の古巣より立つ
ほととぎす藍よりもこき聲の色かな  ●聞書78 御裳29
52   132
       奥に猶人みぬ花の散らぬあれや尋ねを入らむ山
ほととぎす      1443
53   237 
       あやめふく軒ににほへる橘に
ほととぎす鳴くさみだれの空       聞書73 
54   237
       
ほととぎす曇りわたれるひさかたの五月のそらに聲のさやけさ    聞書74
55   237
       むま玉のよる鳴く鳥はなきものをまたたぐひなき山
ほととぎす     聞書75
56   237
       よる鳴くに思ひ知られぬ
ほととぎすかたらひてけり葛城の~      聞書76
57   237
       待つはなほたのみありけり
ほととぎす聞くともなしにあくるしののめ  聞書77
58   237
       鶯の古巣よりたつ
ほととぎす藍よりもこきこゑのいろかな   ●聞書78 御裳29
59   237
        ふゆ聞くはいかにぞいひて
ほととぎす忌む折の名か死出の田長は  聞書79
60   237
       こゑたてぬ身をうの花のしのびねはあわれぞふかき山
ほととぎす   聞書80
61   237
       あわれこもる思ひをかこふ垣根をばすぎてかたらへ山
ほととぎす    聞書82
62   237
       わがおもふ妹がりゆきて
ほととぎす寝覺のそでのあわれつたへよ   聞書83
63   237
       つくづくと
ほととぎすもやものを思ふ鳴くねにはれぬ五月雨の空    聞書84
64   237
       さみだれの雲かさなれる空はれて山
ほととぎす月になくなり      聞書85
65   250
       卯の花を垣根に植ゑてたちばなの花まつものを山
ほととぎす     聞書188
66   258
       
ほととぎす死出の山路へかへりゆきてわが越えゆかむ友になるらむ 聞書235
67   258
       花散りぬやがてたづねむ
ほととぎす春をかぎらじみ吉野の山     聞書243
68   260
       よそに聞くはおぼつかなきに
ほととぎすわが軒にさく橘に鳴け    聞書249
69   263
       聞かずともここをせにせむ
ほととぎす山田の原の杉のむら立     残集6 御裳30
70   263
       あやめ葺く軒ににほえるたちばなに來て聲ぐせよ山
ほととぎす    聞書235
71   264
       
ほととぎす聲に植女のはやされて山田のさなへたゆまでぞとる    残集10
72   273
       
ほととぎすなきわたるなる波の上にこゑたたみおく志賀の浦風    撰集33
73   273
       
ほととぎす谷のまにまに音づれてあわれに見ゆる峯つづきかな   宮河43
74   273 
       人きかぬ深き山べの
ほととぎす鳴く音もいかにさびしかるらむ    宮河44
75   274
       高砂のをのへをゆけど人もあはず山ほととぎす里なれにけり     法師46

 「 詞書 」
 258  ほととぎすの鳴きけるを聞きて
 263  夢にほととぎす聽くといふことを

  子規
   「 歌 」 
76  45
      大井河をぐらの山の
子規ゐせぎに聲のとまらましかば        0191
 「 詞書 」
 44  不尋聞子規といふことを、賀茂社にて人々よみけるに

 杜鵑  
  「 歌 」
77   263
        誰がかたに心ざすらむ
杜鵑さかひの松のうれに啼くなり     残集4
78   263
        待つやどに來つつかたらへ
杜鵑身をうのはなの垣根きらはで  残集5
79   263
        
杜鵑さつきの雨をわづらひて尾上のくきの杉に鳴くなり      残集6

 「 詞書 」
 263 隣をあらそひて杜鵑を聞くといふことを

 杜宇
80   273
        待ちかねて寝たらばいかに憂からましやま
杜宇夜を残しけり  法師40

 蜀魂
81   44
     
蜀魂おもひもわかぬ一聲を聞きつといかが人にかたらむ        0193

 死出の田長
   237 既出、カウントせず
     ふゆ聞くはいかにぞいひて
ほととぎす忌む折の名か死出の田長は 聞書79

 ほととぎす歌合計81首 2020/12/12更新
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以下はホトトギスと断定できないため除外

 よぶこ鳥・呼子鳥(呼子鳥・ぬえはホトトギスの異名の可能性あり) 
 
 「 詞書 」
 24  山家呼子鳥
 「 歌 」 

83  24
       山ざとに誰を又こは
よぶこ鳥ひとりのみこそ住まむと思ふに
84  280
       駒なづむ木曾のかけ路の
呼子鳥誰ともわかぬこゑきこゆなり

 ぬえ
84   192 
        さらぬだに世のはかなきを思ふ身に
ぬえ鳴き渡る明けぼのの空
            
                    以上

■ 入力   2001年12月18日・2020・12・12追加入力
■ 入力者  阿部和雄
■ 校正   未校正

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