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山家集の研究   (佐佐木信綱校訂・岩波文庫・山家集から)

   
京都・西行の風景  (前数字は番数、次数字はページ)

 和歌作品    (赤字は地名)

1   14   わきて今日
あふさか山の霞めるは立ちおくれたる春や越ゆらむ

2   14   春たつと思ひもあへぬ朝とでにいつしか霞む
音羽山かな

3   15   ふりつみし高嶺のみ雪とけにけり
清瀧川の水のしらなみ

4   15   おぼつかな春の日數のふるままに
嵯峨野の雪は消えやしぬらむ

5   27   風あらみこずゑの花のながれきて庭に波立つ
しら川の里

6   30  
 白河の梢をみてぞなぐさむる吉野の山にかよふ心を

7   31   
白河の春の梢のうぐひすは花の言葉を聞くここちする

8   36   波もなく風ををさめし
白川の君のをりもや花は散りけむ

9   40   躑躅咲く山の岩かげ夕ばえて
をぐらはよその名のみなりけり

10  40   つばなぬく
北野の茅原あせ行けば心ずみれぞ生ひかわりける 

11  45   
大井河をぐらの山の子規ゐせぎに聲のとまらましかば

12  49   こ笹しく古里
小野の道のあとを又さはになす五月雨のころ

13  60   ゆふ露をはらへば袖に玉消えて道分けかぬる
小野の萩原

14  62   なにとなくものがなしくぞ見え渡る
鳥羽田の面の秋の夕暮

15  68   鹿の音を聞くにつけても住む人の心しらるる
小野の山里

16  68   をじか鳴く
小倉の山の裙ちかみただひとりすむ我が心かな

17  69   鶉なく折にしなれば霧こめてあわれさびしき
深草の里

18  72   やどしもつ月の光の
大澤はいかにいづこもひろ澤の池

19  88   限あればいかがは色もまさるべきをあかずしぐるる
小倉山かな

20  88   しぐれそむる
花ぞの山に秋くれて錦の色もあらたむるかな

21  89   
大井河ゐせぎによどむ水の色に秋ふかくなるほどぞ知らるる

22  89  
 をぐら山麓に秋の色はあれや梢のにしき風にたたれて

23  89   わがものと秋の梢を思ふかな
小倉の里に家ゐせしより

24  94   氷わる筏のさをのたゆるればもちやこさまし
ほつの山越

25  95   
小倉山ふもとの里に木葉ちれば梢にはるる月を見るかな

26  99   玉がきはあけも緑も埋もれて雪おもしろき
松の尾の山

27  100  
大原せれうを雪の道にあけて四方には人も通はざりけり

28  101  
大原は比良の高嶺の近ければ雪ふるほどを思ひこそやれ

29  102  よもすがら
嵐の山は風さえて大井のよどに氷をぞしく

30  102  宿ごとにさびしからじとはげむべし煙こめたる
小野の山里

31  117  
山城みづのみくさにつながれてこまものうげに見ゆるたびかな

32  128  都近き
小野大原を思ひ出づる柴の煙のあわれなるかな

33  130  都出でて
あふ坂越えし折りまでは心かすめし白川の關

34  142  萬代のためしにひかむ
龜山の裾野の原にしげる小松を

35  142  若葉さす
平野の松はさらにまた枝にや千代の數をそへらむ

36  151  
ときは山しひの下柴かり捨てむかくれて思ふかひのなきかと

37  151  しばしこそ人めづつみにせかれけれはては涙や
なる瀧の川

38  158  つつめども人しる戀や
大井川ゐせぎのひまをくぐる白波

39  171  行末の名にや流れむ常よりも月すみわたる
白川の水

40  172  山がつの住みぬと見ゆるわたりかな冬にあせ行く
しずはらの里

41  176  いにしへにかはらぬ君が姿こそ今日は
ときはの形見なるらめ

42  179  年ふれど朽ちぬ
ときはの言の葉をさぞ忍ぶらむ大原の里

43  190  
大原やまだすみがまもならはずといひけん人を今あらせばや

44  192 
 鳥邊野を心のうちに分け行けばいまきの露に袖ぞそぼつる

45  195  此里や
さがのみかりの跡ならむ野山もはてはあせかはりけり

46  198  
ふしみ過ぎぬをかのやに猶とどまらじ日野まで行きて駒こころみむ

47  204  かぎりなく悲しかりけり
とりべ山なきを送りて歸る心は

48  208  
船岡のすそ野の塚の數そへて昔の人に君をなしつる

49  211  
鳥部山わしの高嶺のすゑならむ煙を分けて出づる月かげ

50  212  なき跡を誰としらねど
鳥部山おのおのすごき塚の夕ぐれ

51  212  波高き世をこぎこぎて人はみな
舟岡山をとまりにぞする

52  212  露と消えば
蓮薹野にを送りおけ願ふ心を名にあらはさむ

53  212  しにてふさむ苔の筵を思ふよりかねてしらるる
岩かげの露

54  223  
紫の色なきころの野邊なれやかたまほりにてかけぬ葵は

55  213  誰とてもとまるべきかは
あだし野の草の葉ごとにすがる白露

56  222  月のすむ
みおやがはらに霜さえて千鳥とほたつ聲きこゆなり

57  223  君すまむ御うちは荒れて
ありす川いむ姿をもうつしつるかな

58  224  
みたらしの流れはいつもかはらぬを末にしなればあさましの世や

59  225  
みたらしにわかなすすぎて宮人のま手にささげてみと開くめる

60  225  長月の力あはせに勝ちにけりわが
かたをかをつよく頼みて

61  229  
くらぶ山かこふしば屋のうちまでに心をさめぬところやはある

62  235  これや聞く
雲の林の寺ならむ花をたづぬるこころやすめむ

63  236  雪わけて外山をいでしここちして卯の花しげき
小野のほそみち

64  246  すみなれし
おぼろの清水せく塵をかきながすにぞすゑはひきける

65  248  
高尾寺あわれなりけるつとめかなやすらい花とつづみうつなり

66  250  さえもさえこほるもことに寒からむ
氷室の山の冬のけしきは

67  266 
 大原やまだすみがまもならはずといひけむ人を今あらせばや
                                  (190P初出)

68  268  
大井川君が名残のしたはれて井堰の波のそでにかかれる

69  268  いつか又めぐり逢ふべき
法の輪嵐の山を君しいでなば

70  273  
廣澤のみぎはにさけるかきつばたいく昔をかへだて來つらむ

71  276  
をぐら山ふもとをこむる秋霧にたちもらさるるさを鹿の聲

72  277  
小野山のうへより落つる瀧の名のおとなしにのみぬるる袖かな

73  282  なき人をかぞふる秋の夜もすがらしをるる袖や
鳥邊野の露

   参考歌

    99  何となくくるる雫の音までも山邊は雪ぞあわれなりける
                         「岩波山家集」
         なにとなくくるるしずりの音までも雪あわれなる
深草の里
                         「新潮山家集」
  京都市外
1    41   山吹の花咲く里に成ぬればここにも
ゐでとおもほゆるかな

2   49   五月雨に水まさるらし
宇治橋やくもでにかかる波のしら糸

3   80   天の原
朝日山より出づればや月の光の晝にまがへる

4   89   錦をば
いくのへこゆるからびつに収めて秋は行くにかあるらむ

5  166  まさきわる飛騨のたくみや出でぬらむ村雨すぎぬ
かさどりの山

6  173  山吹の花咲く
井手の里こそはやしうゐたりと思はざらなむ

7  198  
宇治川の早瀬おちまふれふ船のかづきにちかふこひのむらまけ

8  225  今日の駒は
みつのさうぶをおひてこそかたきをらちにかけて通らめ
  
滋賀県の一部

1   36    春風の花のふぶきにうづもれて行きもやられぬ
志賀の山道 

2   38    ちりそむる花の初雪ふりぬればふみ分けまうき
志賀の山越

3   100   晴れやらで二むら山に立つ雲は
比良のふぶきの名残なりけり

4   259   
比良の山春も消えせぬ雪とてや花をも人のたづねざるらむ

特定不可歌

1    40    かり残す
みづの眞菰にかくろひてかけもちがほに鳴く蛙かな

2   135   山おろす
嵐の音のはげしきをいつならひける君がすみかぞ

3   135   うき世をば
あらしの風にさそはれて家を出でぬる栖とぞ見る

4   167   夕されや
ひはらの嶺を越え行けば凄くきこえる山鳩の聲
  
その他、特定不可
 
  547番  いはくらややしほそめたるくれなゐをながたに川におしひたしつる
                            (日本古典全書) 
   ○   「鷲の山=釈迦が修行したという山」

   ○   「思へただ都にてだに袖さへしひらの高嶺の雪のけしきは」 (寂然)

       139ページ 寂然の大原歌は割愛


         地名・名所名 (京都)

     「音羽山・清滝川・嵯峨野・嵯峨・白河・白河の里・小倉・小倉山・北野・
      大井川・小野・小野山・鳥羽田・深草・大沢の池・広沢の池・花園山・
      保津・松尾山・大原・芹生・嵐山・山城・美豆・亀山・平野・常盤・常盤山・
      鳴滝川・静原の里・鳥部野・伏見・岡屋・日野・船岡山・蓮台野・紫野・
      岩陰・仇野・御親河原・ありす川・御手洗川・片岡・鞍馬山・雲林院・
      朧の清水・高尾寺・氷室・法輪寺・嵐山・音無の瀧・井手・宇治橋・
      朝日山・生野・笠取山・宇治川」

        ( 滋賀県)
 
      「逢坂山・比良・志賀」

              以上

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