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 地名の歌  【信濃】

【信濃】 木曾・諏訪・姨捨・浅間・風越の峯・伏屋

 「木曾」 長野県西南部の地名。木曽川上流域を指す。

  100   波とみゆる雪を分けてぞこぎ渡る木曾のかけはし底もみえねば
                                       (岩波・集成・全書・注解)

  280   駒なづむ木曾のかけ路の呼子鳥誰ともわかぬこゑきこゆなり
                                        (岩波・全書・注解)

  189   ひときれは都をすてて出づれどもめぐりてはなほきそのかけ橋
                                       (岩波・集成・全書・注解)

  229   さまざまに木曾のかけ路をつたひ入りて奧を知りつつ歸る山人
                                        (岩波・全書・注解)

     木曾と申す武者、死に侍りにけりな

  256   木曾人は海のいかりをしづめかねて死出の山にも入りにけるかな
                                        (岩波・全書・注解)
     
 「諏訪」 長野県諏訪盆地にある地名。諏訪大社、諏訪湖がある。

  148   春を待つ諏訪のわたりもあるものをいつを限にすべきつららぞ
                                        (岩波・集成・全書・注解)

  277   とぢそむる氷をいかにいとふらむあぢ群渡る諏訪のみづうみ
                                        (岩波・全書・注解)

 「姥捨」 長野県更級郡にある地名。老婆を山に置き去りにするという伝説で有名。
      月の名所としての信濃の歌枕。

   81   くまもなき月のひかりをながむればまづ姨捨の山ぞ戀しき
                                        (岩波・集成・全書・注解)
 
   84   あらはさぬ我が心をぞうらむべき月やはうときをばすての山
                                        (岩波・全書・注解)

  219   天雲のはるるみ空の月かげに恨なぐさむをばすての山
                                        (岩波・集成・全書・注解)

 「浅間」 長野県と群馬県の県境にある山。活火山。

  154  いつとなく思ひにもゆる我身かな淺間の煙しめる世もなく
                                        (岩波・集成・全書・注解)

 「かざこしの嶺」 長野県伊那郡風越山のこと。信濃の歌枕。

   31   かざこしの嶺のつづきに咲く花はいつ盛ともなくや散るらむ
                                        (岩波・集成・全書・注解)

 「伏屋」 長野県下伊那郡阿智村。園原にあったという粗末な屋。

  143   あはざらむことをば知らず帚木のふせやと聞きて尋ね行くかな

 「信濃梨」  梨の一種で実が小さいという。ちなみに「信濃柿」もあり、実は小さい。

    例ならぬ人の大事なりけるが、四月に梨の花の咲きたりけるを見て、梨の
    ほしきよしを願ひけるに、もしやと人に尋ねければ、枯れたるかしはにつつみ
    たる梨を、唯一つ遣して、こればかりなど申したる返りごとに

  199  花の折かしはにつつむしなの梨は一つなれどもありのみと見ゆ
                                        (岩波・集成・全書・注解)

「伏屋」
  「信濃・木曾・諏訪・姥捨山・浅間・かざこしの嶺・伏屋・信濃梨」

 2005年2月5日入力

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参考文献
        岩波=岩波文庫山家集(佐佐木信綱氏校訂
        集成=新潮日本古典集成山家集(後藤重郎氏校註)
        全書=日本古典全書山家集(伊藤嘉夫氏校註)
        注解=西行山家集全注解(渡部保氏著)