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   寺の歌


     京都  法勝寺・遍照寺・法輪寺・長楽寺・双林寺・仁和寺・大覚寺・神護寺・観音寺・
          東安寺・北山寺・清水寺・雲林院・修学院・法金剛院・平等院

    その他  無動寺・天王寺・曼荼羅寺・中尊寺・菩提心院・法雲院 ・久能の山寺(1128)
           たきの山と申す山寺(132)・粉河寺(136)

   神社
    
     上賀茂神社(山城) 44 145 198 222 224 225
     下鴨神社(山城)
     平野神社(山城) 142
     岩清水八幡宮 (山城) 225  
     住吉大社(摂津) 77 118 222
     石上神宮(大和) 57
     安芸の一宮(厳島神社)(安芸) 117
     伊勢神宮内宮(伊勢) 124 125 225 279 280 281
     伊勢神宮外宮(伊勢)
     月読の宮(伊勢) 125
     風の宮(伊勢) 279
     桜の宮 (伊勢) 125 
     瀧の宮(伊勢) 279
     熊野那智大社(紀伊) 119

【法勝寺】 左京区。現在は廃寺。

   上西門院の女房、法勝寺の花見られけるに、雨のふりて暮れにければ、歸られにけり。
   又の日、兵衛の局のもとへ、花の御幸おもひ出させ給ふらむとおぼえて、かくなむ申さま
   ほしかりし、とて遣しける

  27  見る人に花も昔を思ひ出でて戀しかるべし雨にしをるる

【遍照寺】 右京区。

   同じこころを遍昭寺にて人々よみけるに

  72  やどしもつ月の光の大澤はいかにいづこもひろ澤の池

【法輪寺】 西京区。

   秋の末に法輪寺にこもりてよめる

  89  大井河ゐせぎによどむ水の色に秋ふかくなるほどぞ知らるる

   いまだ世遁れざりけるそのかみ、西住具して法輪にまゐりたりけるに、空仁法師經おぼゆ
   とて庵室にこもりたりけるに、ものがたり申して歸りけるに、舟のわたりのところへ、
   空仁まで來て名殘惜しみけるに、筏のくだりけるをみて 

 267  はやくいかだはここに来にけり                         

【長楽寺】 東山区。

   長樂寺にて、夜紅葉を思ふといふことを人々よみけるに

  90  よもすがらをしげなく吹く嵐かなわざと時雨の染むる紅葉を

【双林寺】 東山区。

   野の邊りの枯れたる草といふことを、双林寺にてよみけるに

  93  さまざまに花咲きたりと見し野邊の同じ色にも霜がれにけり

   雙輪寺にて、松河に近しといふことを人々のよみけるに

 260  衣川みぎはによりてたつ波はきしの松が根あらふなりけり

【仁和寺】 右京区。

   仁和寺の御室にて、山家閑居見雪といふことをよませ給ひけるに

  98  降りつもる雪を友にて春までは日を送るべきみ山べの里
 
   堀河局仁和寺に住み侍りけるに、まゐるべきよし申したりけれども、まぎるることありて
   程へにけり。月の頃まへを過ぎけるを聞きて、いひ送られける

 174  西へ行くしるべとたのむ月かげの空だのめこそかひなかりけれ(堀川)

   ある人さまかへて仁和寺の奥なる所に住むと聞きて、まかり尋ねければ、あからさまに
   京にと聞きて歸りにけり。其のち人つかはして、かくなんまゐりたりしと申したる返りごとに。

 176  立ちよりて柴の烟のあはれさをいかが思ひし冬の山里
 
   阿闍梨兼堅、世をのがれて高野に住み侍りけり。あからさまに仁和寺に出でて歸りもまゐらぬ
   ことにて、僧綱になりぬと聞きて、いひつかはしける

 178  けさの色やわか紫に染めてける苔の袂を思ひかへして

   世の中に大事出できて、新院あらぬさまにならせおはしまして御ぐしおろして、仁和寺
   北院におはしましけるに參りて、けんげんあざり出であひたり。月あかくてよみける

 182  かかる世に影もかはらずすむ月をみる我が身さへ恨めしきかな

   仁和寺の宮にて、道心逐年深といふことをよませ給ひけるに

 214  淺く出でし心の水やたたふらむすみ行くままにふかくなるかな
 
【大覚寺】 右京区。

   大覺寺の、金岡がたてたる石を見て

 195  庭の岩にめたつる人もなからましかどあるさまにたてしおかねば

   大覺寺の瀧殿の石ども、閑院にうつされて跡もなくなりたりと聞きて、見にまかりたりけるに、
   赤染が、今だにかかるとよみけん折おもひ出でられて、あはれとおもほえければよみける

 195  今だにもかかりといひし瀧つせのその折までは昔なりけむ

【観音寺】 東山区の今熊野観音寺と見られています。

   さだのぶ入道、観音寺に堂つくりに結縁すべきよし申しつかはすとて 

 215  寺つくる此我が谷につちうめよ君ばかりこそ山もくずさめ(觀音寺入道生光)

【高尾寺=神護寺】 右京区。

 248  高尾寺あはれなりけるつとめかなやすらい花とつづみうつなり

【東安寺・理性房】 伏見区。

   醍醐東安寺と申して、理性房の法眼の房にまかりたりけるに、にはかにれいならぬ
   ことありて、大事なりければ、同行に侍りける上人たちまで來あひたりけるに、雪の
   ふかく降りたりけるを見て、こころに思ふことありてよみける

 257  たのもしな雪を見るにぞ知られぬるつもる思ひのふりにけりとは

【北山寺】 不明。廃寺。
 
   ある人、世をのがれて北山寺にこもりゐたりと聞きて、尋ねまかりたりけるに、
   月あかかりければ

 174  世をすてて谷底に住む人みよと嶺の木のまを出づる月影

   北山寺にすみ侍りける頃、れいならぬことの侍りけるに、ほととぎすの鳴きけるを聞きて

 258  ほととぎす死出の山路へかへりゆきてわが越えゆかむ友にならなむ

【清水寺】 東山区。

   世につかへぬべきやうなるゆかりあまたありける人の、さもなかりけることを思ひて
   清水に年越に籠りたりけるにつかはしける

 216  此春はえだえだごとにさかゆべし枯たる木だに花は咲くめり

【徳大寺】 右京区。竜安寺の前身。

   コ大寺の左大臣の堂に立ち入りて見侍りけるに、あらぬことになりて、あはれなり。
   三條太政大臣歌よみてもてなしたまひしこと、ただ今とおぼえて、忍ばるる心地し侍り。
   堂の跡あらためられたりける、さることのありと見えて、あはれなりければ

 185  なき人のかたみにたてし寺に入りて跡ありけりと見て歸りぬる

【雲林寺】 北区。大徳寺の前身。
    
 235  これや聞く雲の林の寺ならむ花をたづぬるこころやすめむ

【修学院】 左京区。叡山三千坊の一つ。

   人に具して修学院にこもりたりけるに、小野殿見に人々まかりけるに具してまかりて見けり。
   その折までは釣殿かたばかりやぶれ殘りて、池の橋わたされたりけること、から繪にかき
   たるやうに見ゆ。きせいが石たて瀧おとしたるところぞかしと思ひて、瀧おとしたりけるところ、
   目たてて見れば、皆うづもれたるやうになりて見わかれず。木高くなりたる松のおとのみぞ
   身にしみける

  20  瀧おちし水のながれもあとたえて昔かたるは松のかぜのみ

【法金剛院】 右京区。
 
   寄紅葉懐舊といふことを、法金剛院にてよみけるに

 194  いにしへをこふる涙の色に似て袂にちるは紅葉なりけり
 
   十月中の十日頃、法金剛院の紅葉見けるに、上西門院おはしますよし聞きて、
   待賢門院の御時おもひ出でられて、兵衛殿の局にさしおかせける

 194  紅葉見て君がたもとやしぐるらむ昔の秋の色をしたひて

【平等院】 京都府宇治市。

   平等院の名かかれたるそとばに、紅葉の散りかかりけるを見て、花より外にとありけむ
   人ぞかしと、あはれに覺えてよみける

  12  あはれとも花みし嶺に名をとめて紅葉ぞ今日はともに散りける

【無動寺】 滋賀県の比叡山にあります。大乗院は無動寺の支院。

   前大僧正慈鎭、無動寺に住み侍りけるに、申し遣しける

 181  いとどいかに山を出でじとおもふらむ心の月を獨すまして

    無動寺へ登りて大乘院のはなち出に湖を見やりて

 278  鳰てるやなぎたる朝に見渡せばこぎゆくあとの波だにもなし

【天王寺】 大阪市。

   天王寺へまゐりけるに、片野など申すわたり過ぎて、見はるかされたる所の侍りけるを
   問ひければ、天の川と申すを聞きて、宿からむといひけむこと思ひ出だされてよみける

 107  あくがれしあまのがはらと聞くからにむかしの波の袖にかかれる
 
   天王寺にまゐりけるに、雨のふりければ、江口と申す所に宿を借りけるに、かさざりければ

 107  世の中をいとふまでこそかたからめかりのやどりを惜しむ君かな

   天王寺へまゐりたりけるに、松に鷺の居たりけるを、月の光に見て

 108  庭よりも鷺居る松のこずゑにぞ雪はつもれる夏のよの月
 
   天王寺へまゐりて、龜井の水を見てよめる

 108  あさからぬ契の程ぞくまれぬる龜井の水に影うつしつつ

   同行に侍りける上人、月の頃天王寺にこもりたりと聞きて、いひ遣しける

 174  いとどいかに西にかたぶく月影を常よりもけに君したふらむ

   中納言家成、渚の院したてて、ほどなくこぼたれぬと聞きて、天王寺より下向しけるついでに、
   西住、淨蓮など申す上人どもして見けるに、いとあはれにて、各述懐しけるに

 187  折につけて人の心のかはりつつ世にあるかひもなぎさなりけり

   俊恵天王寺にこもりて、人々具して住吉にまゐり歌よみけるに具して

 222  住よしの松が根あらふ浪のおとを梢にかくる沖つしら波

【曼荼羅寺】 香川県善通寺市。

   まんだら寺の行道どころへのぼるは、よの大事にて、手をたてたるやうなり。大師の御經
   かきてうづませおはしましたる山の嶺なり。ばうのそとは、一丈ばかりなるだんつきてたて
   られたり。それへ日毎にのぼらせおはしまして、行道しおはしましけると申し傳へたり。
   めぐり行道すべきやうに、だんも二重につきまはされたり。登る程のあやふさ、ことに
   大事なり。かまへて、はひまはりつきて

 113  めぐりあはむことの契ぞたのもしききびしき山の誓見るにも

【中尊寺】 岩手県の平泉町。

   奈良の僧、とがのことによりて、あまた陸奥國へ遣はされしに、中尊寺と申す所にまかり
   あひて、都の物語すれば、涙ながす、いとあはれなり。かかることは、かたきことなり、
   命あらば物がたりにもせむと申して、遠國述懐と申すことをよみ侍りしに

 131  涙をば衣川にぞ流しつるふるき都をおもひ出でつつ

【菩提心院】 和歌山県高野山。

   美福門院の御骨、高野の菩提心院へわたされけるを見たてまつりて

 201  今日や君おほふ五つの雲はれて心の月をみがき出づらむ

【法雲院】 奈良、興福寺の支院。

   奈良の法雲院のこうよ法眼の許にて、立春をよみける

 262  三笠山春をおとにて知らせけりこほりをたたくうぐひすの瀧

  「閑院」や「清和院」はお寺ではないため除外。

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2005年3月07日入力
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参考文献
        岩波=岩波文庫山家集(佐佐木信綱氏校訂
        集成=新潮日本古典集成山家集(後藤重郎氏校註)
        全書=日本古典全書山家集(伊藤嘉夫氏校註)
        注解=西行山家集全注解(渡部保氏著)