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                もみの木歌集   
                       2002年度

                    第二部 (51〜100)


051
やすきに流れ、本当の戦い(自分自身との)を避ける子どもが多いのではと
感じるこの頃。自分自身もなのですが・・・     

   戦いを好まぬ世代と言われつつ
            戦い好まぬ子等に憂へる 


052
昨日のテレビでフロイトのことが少し語られていました。フロイトは
古美術の収集家で、古美術を鑑賞していたそうです。訪ねてくる患者さんに、
その古美術を見せて、あなたの苦しみは、古代の人も持っていた苦しみ
なのですよ、と言って、古美術を見ることを勧めたそうです。フロイト自身も、
古美術を見つめ、自分の心を見つめていたとのことでした。

   戦いはフロイト自身の中にあり
            何を語りし古美術の肌に 


普段はあまり思っていない言葉でも、歌題として出されて使ってみるといろいろな
感情が出てきます。TAT、ロールシャッハなどのような心理テストのように感じます。

053
家の近くで見つけたと言って、玉虫を籠に入れて持ってきてくれました。

   玉虫は玉虫の厨子の色をして
            黙して光る少年の籠で  
                    

054
   われと言わず松はと詠みし西行の
            さみしさ訪ね四国路へ行く 


最近、四国へは帰っていないのですが、通勤途中、
西行のひとり松の歌を考えていました。

     ここをまた我すみうくてうかれなば松はひとりにならんとすらむ  
                      (西行法師)
                             
055 
「身体づくりと生活リズム」という藤森弘先生の研修を受けました。片仮名で
ヒトと書くと、生物学上の人ということで、サルと違うということだそうです。ヒトは、
二本の足で歩き、手で物がつかめるようになった。二本足で歩けないサルは、
平原に住まないで森に住んでいる。「手をつかなくては反省できないのはサルで、
手をつかなくても反省できるのはヒトだ」と言われていました。 最近、何かを
いつも持っていたり、寄りかかったりしている子はサルにかえっている。
姿勢を良くすることを教えなければならない。等々 わかりやすく面白い研修でした。

   われもまた生物学上のヒトなり
            二本の足でひとりで歩く


056
仁徳天皇御陵は、百舌鳥耳原中陵とも呼ばれますが、昔、狩をしていた時、
鹿が走ってきて目の前でばったと倒れたので見ると、鹿の耳の中から
百舌鳥が出てきたそうです。

    百舌鳥耳原中陵と悪名残す
            百舌鳥は市の鳥 肉裂く鳥なり

                          
解説そのままの歌です。

057
七夕の笹飾りには、織姫、彦星もありました。天の川も星もあります。
一本の笹に一つの世界・宇宙があります。

    さらさらと軒端に揺れる笹飾り
            天の川ありカササギも飛ぶ


058

数年前のことです。幸せ色だと言って、娘から定期券入れを貰いました。
明るい紺色です。古くなっても使っていました。すると、見るに見かねたのか
友人が新しい定期券入れをお土産に買ってきてくれました。今は幸せ色の
定期券入れは戸棚にしまってあります。

   草臥(
くたび)れた幸せの色の定期入れ
            贈られし心捨て難くあり


059
祇園祭も大阪の天神祭りも春や秋にある農耕に関するお祭りとは違って
暑い夏にあります。酷暑の中、夏の病気・災害・災難を退治して元気に夏を
乗り切ろうというお祭りだそうです。(府民講座 米山俊直先生のお話です。)

   厄除けを願うハレの日夏祭り
           園の夜空にジャブジャブ音頭


今年の踊は「アーイイキモチッチッチ」と言うジャブジャブ音頭でした。          

060
宮沢賢治の「どんぐりと山猫」の山猫やハリー・ポッターの「フクロウ」から
手紙を貰ったらうれしいでしょね。

   異次元の延長線上山猫や
            フクロウからの手紙は届く 
    

061
時雨というのは秋から冬にかけて降る雨でしたね。

   紅葉は時雨とともに色を増す
            蝉時雨なら暑さ増しゆく 
                           
062
通勤途上にある六地蔵の前には、いつも新しいお花が奉られています。そして、
それぞれのお地蔵様の前には、キャラメルコーン1〜2ケ、飴1ケづつというように
いつも何かが置かれてあったり、一度などは、線香立てにタバコが六本立てられて
いて煙を出していました。時には、女子高生が坐って拝んでいたりします。
隠れファンの多い六地蔵です。でも心配なことには、最近、お地蔵様の前の
道幅が広げられてきて車がたくさん通るようになってきました。いつまでも
ここにいて、私達を見守っていて欲しいお地蔵様です。

    押し寄せる都市化の波はひたひたと
           今朝の地蔵はグラジオラス持つ 


063
職場の近くにある大きな樹の梢が、今、白くなって見えます。そして樹の下には
小さな乳白色の花がたくさん零れ落ちています。この樹は何の樹なのだろうと
思って樹の名札を見ますと、エンジュ・マメ科と書かれていました。
槐(エンジュ)だったのです。実朝の金槐和歌集の槐です。
「ああ、この樹が槐なんだ。」と感慨深く思いました。マメ科ですので、
花も葉もエンドウによく似ています。

    足元に乳白色の零れ花
          槐(
エンジュ)の樹にはマメの花咲く 

064
7月17日よりプールが始まりました。園の規定では、プールが使えるのは外気温

28℃以上、水温26℃以上です。今日は、時々雨の降る曇り空でプール開きの
イベントだけで、プールは使えませんでした。プールサイドで走ったり
押したりしないように等、主に安全面のお約束をします。

    待ちわびたプール開きのプールサイド
          イイ子ワルイ子手本で示す
  

065
人麿時代の柿の木、実朝時代の槐、芭蕉時代の芭蕉は海外から入って
きたもので、当時では珍しい植物だったのではないでしょうか。

   人麿は柿の木が好き
          実朝は槐を好む芭蕉は芭蕉を  
 
       
066
   台風は梅雨明けぬ間に駆け行きて
          夏ばて気分度1度となりぬ


067
地動説のことです。(?)

   流れ行く雲量7の夏の空
          大地は動く鋪道となりぬ
068

   葛城は近づくほどに高くなる
          小角(
おづぬ)走りしはるかな稜線    

069
大台ケ原へ行ってきました。


   鬱蒼と苔むす道を空へ向かふ
          大台の夏とんぼ飛びかふ

070
   弁慶の立ち往生なるトウヒの木
          大台の地に立ちて枯れゆく

071
   立枯れのトウヒにとんぼ群れ飛びて
          大台ケ原に夏の風吹く

072
   小笹食む小鹿の眼とあふはつ夏の
          大台の地は緑なりけり

073
   四本の足で同時にジャンプする
          小鹿よあすはプールが出来るよ

074
   やたがらす2000余年の時経れば
          サッカーチームのマークとなりぬ

075
   七重八重九重の山波うちて
          白き雲湧く大峰へつづく

(1600mの大台ケ原には、とんぼが飛び交っていました。
トウヒ(モミ科)の木は、台風などで倒れた後、立ち枯れて白骨の
ような姿で林立しています。大台ケ原は年平均気温が6℃、
夏でも最高26℃以上にはならないそうです。

親子の鹿をたくさん見かけました。小鹿は自分の運動機能に
満足している様子で、ぴょんぴょんとうれしそうに跳ねていました。
牛石ケ原には、神武東征時の、神武天皇がやたがらすに
道案内をしてもらっている様子の像が立っています。
視界がよく、眼下1000mの絶壁がのぞける大蛇ーからは
下までよく見えました。その前方には、1800m、1900mの
大峰山脈が見えます。)


076
   板ひとつ隔てば谷なるつり橋で
          300m綱渡りする

谷瀬のつり橋は長さが約300m、高さは54mあります。


077
   十津川の十割蕎麦は限定と
          聞けば十分味わいて食む

078
   奥吉野西行庵より大峰の
          奥駆け行けば熊野へ至る

079
   なかなかに古道の踏破成り難く
          まず奥の院・本宮へ行く

吉野から熊野本宮へは大峰奥駆道という約100kmの熊野古道
がありますが、その途中にある熊野三宮の奥の院といわれる
玉置神社と終点の熊野本宮へ行ってきました。)


080
「朝から暑いですね。」と言うと、「めっちゃ暑いなあ。」と返ってきました。


   葉書といふひと葉で見舞う暑中見舞い
          言の葉交わせば「めっちゃ暑いなあ」
 

081
   光刺す青き海といふグァム島
          土産話とチョコレート頂く 

082
   我よりも早寝早起き蝉時雨
          短き一生(
ひとよ)ヘルスプロモーション

083
   白雲で風の吹くまま描き上げた
          筆跡残る今日の夏空


084
   紫の眠りの谷の妖精が
          きっと育てしラベンダーとは
      

枕カバーにラベンダーの香りを一滴落としておくと、
こんな気分になります。

085
   靴箱に蝉殻集めし幼子に
          こごと言へども眩しかりけり


086
   ワニ歩きしないでジャンプする子等に
          「ワニは飛びません!」プールに響く

087
   炎天下街なかにある水田の
          蛙もタニシもつつがなきかと 


    
088
   閑かなるプラットホームに一匹の
          蝉が転がる西陽をうけて 


089
    
職業で詠めど人麻呂・リュトブフには
          熱き心の人間主義あり 

  
「今 大学があぶない!」中原旅愁朗著を読みました。

090
   心もち静かに聞こゆ蝉時雨
          ツバメの間に間にトンボ飛びかふ  
 
091
   屋久島の縄文杉を見たと言ふ
          葉月吉日同じ次元で 

        
友人五名で、屋久島の縄文杉を見に行かれ、皆で無事に
見ることが出来たとメールをいただきました。

092
   いつもより遠く感じる夏の道
          日傘の向こうに百日紅映ゆ  
   
       


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