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もみの木歌集
2002年度
第五部 (201〜250)
201
数年に一度は集団暴露あり
おたふく水痘保育所生活
保育所の乳幼児は、予防接種で防げるものは早期に接種するように
話していますが、任意の予防接種である流行性耳下腺炎、水痘は、
有料になりますので、接種していない子どもが多くなります。すると数年に
一度は、それらが保育所毎に流行して、集団的に免疫を獲得して、
そして落ち着きます。そういう状況を繰り返しています。
202
何処へ行く誰の姿か山頭火
「うしろすがたのしぐれてゆくか」
「うしろすがたのしぐれてゆくか」
種田山頭火 文・石寒太 影絵・石井昭
図書館で借りてきました。山頭火とは、昨年、防府駅前でお会いしました。
(ただし銅像)「山頭火の歌は演歌である」と石寒太さんは書かれています。
分け入っても分け入っても青い山
ふくろふはふくろふでわたしはわたしでねむれない
焼き捨てて日記の灰のこれだけか
山頭火のことを息子に話すと、ラーメン店の名前かと聞き返されました。
203
昨年の月別気温を表にする
寒さはこれから薄着啓発
いつもの標語のような職業詠です。
204
初恋といふ歌を聞く「砂山の〜」
歌ひて気づきし啄木の歌
先日の大仏開眼1250年慶讃法要コンサートで錦織健さんが「初恋」という歌を
歌われました。島崎藤村の「初恋」も、ツルゲーネフの「初恋」も有名です。
いい歌だなあと聴いていましたが、啄木の歌だったのです。
砂山の砂に腹這ひ初恋のいたみを遠くおもひ出づる日
石川啄木
205
ポケットにお地蔵さまの賽銭と
定期券あり朝の出で立ち
206
駅前のフラワーポットのサルビアは
穏やかな秋つつましく咲く
夏の暑さの中で、エネルギッシュに逞しく咲いていたサルビアですが、
穏やかな秋の陽射しの中では、静かに咲いています。
207
鞍馬山は闇に閑まり灯明の
淡く点れり火祭終わりて
鞍馬の近くの大学で短歌の公開講座があって行ってきました。昨日の
10月22日は鞍馬の火祭りでしたが、1日後の今日は、すべて闇の中でした。
208
精霊の満ちた元気の出る土産
求めて来たれど天狗は居らず
夕方の5時半に鞍馬の駅を降りると無人駅でした。
京都に来る前に友人を病院に見舞ってきたのですが、鞍馬の元気な
精霊の宿るお土産を買って帰ろうと思って来てみたのですが、
お店屋さんも閉まっていました。
209
天狗にも階級のあり大天狗・
小天狗・烏・木の葉天狗と
鞍馬の大天狗は「僧正坊」と呼ばれ、日本各地の総元締めとして
語り継がれているそうです。
210
さざ波と観るかもしれない
鱗だと観るかもしれない秋の雲あり
211
「聞こえたら聞こえた!って言ってね。」
「きこえた!!」三歳クラスの聴力検査
保育所では3歳児クラスからオージオメーターという聴力検査機で聴力の
検査をしています。なかには中耳炎の後遺症で中耳に水が溜まって
滲出性中耳炎になっていて聞こえにくくなっている場合もあります。
言葉の発達にも関わってきますので、早期に発見して治療をすることが大切です。
212
長年の仕事纏めし論文は
論文の域なり感情は入れず
第8回保育園保健協議会が名古屋のつるまいプラザ愛知県勤労会館で
10月26日、27日で行われ、総会時、この夏に保健雑誌「保育と保健」に
掲載された「保育所における麻疹流行変遷と流行時期(平成12年度)の
Y保育所での発生状況」の研究論文が平成14年度の「保育保健賞」に
なったということで、表彰していただきました。関わった本人にしかわからない
ことですが、長年の保健統計業務は大変なことも多かったのですが、
やはり面白さもあったと思います。
213
薄着の子厚着の子の役主役とする
即興寸劇みんなで観覧
保育士さんは皆さん役者揃いです。急に寒くなって、厚着の子どもも
増えてきました。そこで、薄着啓発、衣服調整などの保健指導目的を話して、
寸劇をお願いすると、少しの打ち合わせをしただけで、面白くわかりやすい
寸劇を見せてくれました。
214
冬来れば気温はまだまだ下がること
人生浅き子等に話さむ
少し難しいかなと思ったのですが、体温計はよく知っていますが、
壁にかけてある寒暖計について話しました。そして、昨年の年間の温度を
グラフにしたものを子ども達に見せました。最近、登所時温度を見ると、
毎週2℃づつ位気温が下がっています。でもまだ、16〜18℃くらいです。
朝夕・戸外・部屋で遊ぶときの衣服調整について話しました。
215
怪我をして病院へ通ふ幼児(おさなご)は
懐(かい)に小さき人形をあやす
怪我をして、しばらく病院へ通っている2歳の女の子がいるのですが、
元気ですので、病院でも落ち着いて待つことが出来ません。それで、
いつもジャンバーの懐の中に小さな人形を持たせています。人形の
面倒をみることで、気持が落ち着くようです。
216
一単位は80kカロリーなり
基本はそこから食事療法
糖尿病と言われた人に、「一日1600kカロリー(20単位)をどのような配分
で摂るか」を説明をしているうちに、自分も食べ過ぎだということに気づきました。
217
子守唄は祈りに近き歌と言ふ
ねんねんころりと我に歌いし
ある歌会に歌を一首出さなくてはならないので、
178 子守唄は祈りに近き歌といふ 歌いし人の心も癒す
の歌を推敲して作り直しました。
218
ごめんねと薬飲ませし我の顔を
見れば静かにそむける児あり
今、嘔吐下痢を伴う風邪が流行っています。薬を4種類くらい持ってくる
児がいます。8ケ月の赤ちゃんに、無理やり飲ませましたら、私が部屋に
入っていくと、顔をそむけるようになってしまいました。よくわかっています。
219
下痢の時の食事療法掲示する
便の形状の物を与える
直接、便の形状の物を与えましょうとは言いませんが、参考としては
そのようになります。
食べ物の目安。 <参考>
何を食べるか、便と相談!
・便が水のようなときは水分を中心に。
アクアライト、アクアサーナ、番茶、野菜スープ、みそ汁、
おもゆ、リンゴのすりおろし
・便がドロドロならドロドロの食べ物を。
とうふ、パンがゆ、ベビーせんべい、ウエハース、
バナナの裏ごし、にんじんやかぼちゃの煮つぶし
・便がやわらかい程度ならやわらかい食べ物を。
おかゆ、うどん、白身魚の煮つけ、卵、とりささ身、
野菜の煮つけ
220
わが足の痛みて想ふ秋の日は
人魚姫の足の痛さよ
アンデルセンの「人魚姫」の童話の中で、足をほしいと言う人魚姫に対する、
魔女の言葉は、「ひと足ごとに、鋭い刃を踏んで血が出るような思いがするよ」
でした。私の足は単なる歩き過ぎの痛みですが、歩きながら人魚姫も足が
痛かったことを思い出しました。
221
身体より心の痛みの深きこと
アンデルセンは子どもに話せり
さらに、王子の結婚式で踊る人魚姫の足は「鋭い刃で突き刺されるよう」だった。
しかし、このときはもう足の痛みは感じなくなっていた。それ以上に、心の傷が
痛んでいたのだった。(人魚姫より)
222
五歳児が笑って言ふなり
「大人なら微妙っていうことわかるんやなあ」
五歳の女の子が「微妙」という言葉を使ったので、「どうしてそんな難しい
言葉を知ってるの?」と聞くと、「テレビで見た。」と言っていました。
コマーシャルにあるのかもしれません。
223
スリッパが連れ去られたり
「遅いなあ、もう帰ってこんでええよ」
と言いに来た児に
保健室でしばらく預かっている子どもがいるのですが、各クラスに用事が
あって出かけますと、クラスの前で待っていてくれたりすることがあります。
用事があって遅くなると、私の履いてきた上靴がよく無くなっています。
今日も玄関の乳母車の中から出してきてくれました。
224
講義には山場がいると言われおり
百人一首はストーリーを聴く
現代歌人の林和清先生が講師で百人一首の講義をしばらく受講させて
いただいているのですが、先生の講義は面白く人気があります。先生は、
「講義の山を作るのに苦労している。」といつか言われておられました。
よく勉強をされておられます。もうすぐ、12月8日(日)NHK教育テレビ
AM7:30分〜8:00の「歌壇」にゲスト出演されるそうです。
225
二上(ふたかみ)の雌岳を左に望むなり
夢の残照あり山辺の道
秋には一度行っておきたいと思っていた山辺の道へ行ってきました。
柿は普段からよく食べていますが、山辺を歩きながら食べたかった。
その希望が叶いました。みかん狩りのバスが数台来ていました。
四季折々いろいろな顔を見せてくれますが、静かないつのもの里でした。
山辺から見える二上山は、奈良盆地の内側から見ますと、雌岳が左に見えます。
226
春秋を見守るごとく大神(おおみわ)は
大和に立ちおり三山と向ひて
石上(いそのかみ)神社〜大神神社(三輪明神)まで約11kmありますが、
途中の長岳寺で素麺汁のお昼をいただいてゆっくりと5時間かけて歩きました。
途中には柿本人麻呂や額田大王などの万葉歌碑があります。
それを見るのも楽しみの一つです。
巻向の山辺響(やまべとよ)みて行く水のみなあわの如し世のひと吾は
柿本人麻呂
山吹の立ちよそひたる山清水 汲みに行かめど道の知らなくに
高市皇子
大神神社の大きな鳥居はどっかと大和の里に立っています。
227
大神(おおみわ)の鳥居の内より眺むれば
右から耳成・畝傍・香具山
山辺の途中にある展望できる山から大和三山を見ました。三山は
三角形の位置にあるので、いつもどの山かわからなくなってしまうのですが、
同じ場所で見ていた人に、教えていただきました。それで、忘れないように
歌を作りました。この歌を覚えておけるかどうかが問題です。
228
指吸いはもうやめようね 開咬(かいこう)あり
EはC CもC 歯科健診あり
歯科健診がありました。指吸いをしている子は、歯科健診ですぐにわかります。
奥歯を噛みしめても、上下の前歯の間が丸く開いていて噛みあわされなく
なっているのです。指が1本入るような形になっています(開咬)。歯医者さんに、
「もう指吸いはやめないといけない。」と注意されます。
乳歯の記号は、中心線からA〜Eまでありますので、上下左右合わせて
20本になります。5歳児になると、一番奥に6歳臼歯という生涯使う大切な
永久歯がはえて来ます。ところが、この歯は、はえ始めが一番むし歯に
なりやすいのです。未開発国で、年齢がはっきりわからないところでは、
この6歳臼歯がはえてくれば、就学するというように決めているところも
あるようです。「C=むし歯」です。
229
一つずつ言葉を拾っていくように
五歳児が読む「かわいそうなぞう」
歳を重ねてくると、喜怒哀楽の感情をワザワザ起こさせるような小説、
映画などを見るのがだんだん面倒になってきますが、今日は、
「かわいそうなぞう」を5歳の児が読むというので一緒に読みました。
やっぱり読んでいくと涙が出てきます。
230
美味しいねと言えば美味しくないと言う
それも関わりあなたとわたしの
5歳の男の子ですが、こちらが話しかける言葉に対して、何でも反対の
言葉を返してきます。でも、話の内容はよく聞いていて、ほんとうはよく
わかっているのです。素直です。母親や先生によく怒られている児の中には
わざといたずらをして、それによって関わりを求めようとしているところがあります。
それは結構大人の世界にもありますね。言わないでもいいのに、
ついつい皮肉を言ってしまったりします。この歌は大人に置き換えての歌です。
231
絵を見せて熱くなるもの答えさす
「やけどをするよ」安全教育
熱くなるもの、アイロン・カップヌードル・やかん・おなべ・ストーブ、
子どもにとっては周りには危ないものがたくさんあります。お話をした後、
絵等をしばらく掲示しておきます。
232
小児事故の安全管理と教育は
加齢によりて比率異なり
事故防止には、安全管理と安全教育があります。赤ちゃんは、
100%安全管理ですが、大きくなるにしたがい、管理ももちろん大切ですが、
安全教育が大切になってきます。
今日の職場の保健委員会では、小児視野体験ピジョンということで、
そのメガネを作って皆で体験してみました。
233
「見んうちに散るんとちがうせわしいなあ」
圓光寺は今 見ごろと聞くなり
今年は例年より、1週間〜10日、紅葉が早いとニュースで言われています。
昨日、お会いした京都のご年配の方が、このように言われていました。
234
手のひらで受けるものとは真心(こころ)だと
放哉の歌の解説は深し
野嵜理氏が書かれた「放哉、春生の欲動論」を読ませていただきました。
精神医学的なことが書かれている論文で、難しくて、あまり理解は出来て
いないのですが、
入れものがない両手で受ける 尾崎放哉
の歌について、無一文の放哉がいただいたものは、「もの」ではなく
「心」好意でであり〜と書かれています。短い歌ですが、深く重い意味の
ある歌であることに気づきました。
235
春という病もありき秋という
病もありて紅葉観に行く
西行MLの関西オフ会がありました。比叡山、三井寺へ行きました。
この歌は、春には桜、秋には紅葉と追いかける人のことです。
236
比叡より楓は紅葉(もみじ)す
三井寺は木々のまにまに晩鐘ひびきて
Yさんがが、もみじと言う名の木はない。「楓が紅葉す」と言うのだそうですよ。
と話してくれました。
237
一隅を照らすの説法正座して
我も聴きおり旅行生等と
修学旅行の学生が、正座して、若い僧のお話を聴いていました。
私も場所がなく正座は出来ませんでしたが、正座して聴きたい気持でした。
「一隅を照らすというのは、どうすればいいか。それは、自分のできる範囲で、
やればいいのです。例えば、家に帰って、ただいまと、笑顔でお父さんに言う、
それだけでもいいのです。」等、話されていました。
238
この冬も比叡の山は冷たかろう
古き回廊の板の静けさ
今日は、まだ少し寒さはましでしたが、これから寒くなる比叡の山を思いました。
239
仏教を絵本のように説きあかす
往生要集あり恵心僧都の
仏教の因果応報などをわかりやすく説いた恵心僧都も比叡山出身の人でした。
私は、図書館から以前借りてきたのですが、読まないまま返しました。
240
XYの座標軸にて説明す
京都の町は碁盤上にあり
「京都の町の一条、二条は、どこを中心としているんでしょう。」
「それは、御所でしょう。」と、T.Y.さんが言われました。
241
蝉丸の逢坂の関今日越ゆる
行くも帰るも友と集いて
帰り道、Aさんが、車の中で、「もう少し行くと、蝉丸神社があります。」
「ここが逢坂の関です。」と説明してくれました。
これやこの行くも帰へるも別れては知るも知らぬも逢坂の関 蝉丸
242
まっすぐな道の向こうの煙突に
梵字描きて煙が昇る
243
比叡山根本中堂境内の
モミジ艶なり人生(ひとよ)を思う
境内は撮影禁止だったのですが、落ち着いた色彩の素敵なモミジでした。
244
シャリシャリと落ち葉踏み行く
桜木は空に背伸びす春への行程
245
年末の学習会へ参加する
忘年会をそう呼ぶ人あり
忘年会のシーズンになりました。
246
ミュンヘンはアメリカ村に似ていると
誰も知らない裏町を話す
11月23日は、岡井隆先生の歌会が大阪の心斎橋でありました。
御堂筋の銀杏並木が黄葉していました。先生は、NHKテレビ
「世界のこころの旅」の収録でドイツへ行ってこられたそうです。
247
壇上のカバンの上の帽子にも
シルエットあり見つつ受講す
248
こだわりの文と思いしジェーン・エアーの
原文読めば面白さとなる
愛読書の「ジェーン・エアー」(シャーロット・ブロンテ作)を一度原文で読んで
みたいと思っていました。訳文でも文章にこだわりがあると思っていましたが、
あたりまえですが原文でも同じでした。人物描写が細かく書かれています。
249
北山に風雅の歌を訪ね来て
寂しさに充つ風の声聞く
11月24日 フーガの会で、林和清先生と一緒に金閣寺へ行ってきました。
今の金閣寺を見に行くというより金閣寺が建つ前の西園寺家の北山第の
なごりを見る為の詠草でした。玉葉集、風雅和歌集に歌が入集されている
永福門院が幼少期と晩年過ごされたところです。
尾花のみ庭になびきて秋風のひびきは峰の梢にぞきく
小夜深き軒端の峰に月はいりてくらき檜原に嵐をぞきく
山風のふき渡るかと聞くほどに檜原に雨の掛かるなりけり
永福門院
250
古の金閣寺建つ空間で
檜原を詠みし人を思へり
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