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山家集索引
 

あ〜お か〜こ さ〜そ た〜と な〜の は〜ほ ま〜も や〜わ

「た」

118 羇 1218 上人 心中
絶えたりし君が御幸を待ちつけて神いかばかり嬉しかるらむ

263 残4 上人追加 夫木
誰がかたに心ざすらむ杜鵑さかひの松のうれに啼くなり

274 補 上人
高砂のをのへをゆけど人もあはず山ほととぎす里なれにけり

248 聞171 夫木 
高尾寺あはれなりけるつとめかなやすらい花とつづみうつなり

267 残20
瀧おちし水のながれもあとたえて昔かたるは松のかぜのみ

172 雑 1545
瀧おつる吉野の奧のみや川の昔をみけむ跡したはばや

235 聞60 
瀧にまがふ峯のさくらの花ざかりふもとは風になみたたみけり

132 羇 1132
たぐひなき思ひいではの櫻かな薄紅の花のにほひは

74 秋 397 
たぐひなき心地こそすれ秋の夜の月すむ嶺のさを鹿の声

59 秋 283 上人 心中
たぐひなき花のすがたを女郎花池のかがみにうつしてぞ見る

31 春 73
たぐひなき花をし枝にさかすれば櫻にならぶ木ぞなかりける
 
207 哀 811 (侍従大納言藤原成通遺族歌)
たぐひなき昔の人のかたみには君をのみこそたのみましけれ


248 聞167 夫木
竹馬を杖にも今日はたのむかなわらは遊びをおもひいでつつ

142 賀 1182
竹の色も君が緑に染められて幾世ともなく久しかるべし

277 補 夫木
竹の音のわきてたもとにさゆるかな風に霰の具せられにけり

169 雑 1146 
竹の音も荻吹く風のすくなきにくはえて聞けばやさしかりけり

260 聞250 
竹の戸を夜ごとにたたく水鷄かなふしながら聞く人をいさめて

98 冬 527 上人 上人追加 心中 夫木
たけのぼる朝日の影のさすままに都の雪は消えみ消えずみ

39 春 1436 
たしろみゆる池のつつみのかさそへてたたふる水や春のよの為

松屋本山家集
湛えおく心の水にすむ月を明石の波に映してぞ見る

96 冬 546 夫木
ただは落ちで枝をつたへる霰かなつぼめる花の散るここちして

229 聞18 夫木
たちゐにもあゆぐ草葉のつゆばかり心をほかにちらさずもがな

14 春 4 上人 心中 御裳濯河 物語
たちかはる春を知れとも見せがほに年をへだつる霞なりける

16 春 1067 (静忍法師歌)
立ち帰り君やとひくと待つほどにまだ消えやらず野辺のあわ雪


69 秋 427
立ちこむる霧の下にも埋もれて心はれせぬみ山べの里

120 羇 1403 
立ちのぼる月のあたりに雲消えて光重ぬるななこしの嶺

259 聞248 上人 雲葉
たちばなのさかり知らなむ時鳥ちりなむのちに声はかるとも

263 残7 上人追加 夫木
たちばなのにほふ梢にさみだれて山時鳥こゑかをるなり

36 春 114 上人 心中
たちまがふ嶺の雲をば払ふとも花をちらさぬ嵐なりせば

176 雑 736 物語(広) (作者不詳、兵衛の局説あり)
立ちよりて柴の烟のあはれさをいかが思ひし冬の山里


190 雑 471 
立ちよりて隣とふべき垣にそひて隙なくはへる八重葎かな

43 夏 176 上人追加 夫木
立田川きしのまがきを見渡せばゐせぎの波にまがふ卯花

92 冬 497 
立田姫染めし梢のちるをりはくれなゐあらふ山川のみづ

90 冬 ○ 272a 上人 
立田やま時雨しぬべく曇る空に心の色をそめはじめつる

72 秋 399
立田山月すむ嶺のかひぞなきふもとに霧の晴れぬかぎりは

201 哀 779 上人
尋ぬとも風のつてにもきかじかし花と散りにし君が行方を

43 夏 183
尋ぬれば聞きがたきかと時鳥こよひばかりはまちこころみむ

35 春 1456
尋ね入る人には見せじ山櫻われとを花にあはむと思へば

欠 鹿野しのぶ「語文」 弘川寺から慈円に送った新発見歌
訪ね来つる宿は木の葉に埋もれて煙を立つる弘川の里


82 秋 949
尋ね来てこととふ人もなき宿に木のまの月の影ぞさし入る

松屋本山家集
たづねゆく尾越しに花の梢見ていそぐ心を先に立てつる

115 羇 1372
たて初むるあみとる浦の初さをはつみの中にもすぐれたるかな

143 恋 579 上人追加 物語
たてそめて帰る心はにしき木の千づか待つべき心地こそすれ

274 補 御裳濯河 雲葉
たなばたの今朝のわかれの涙をばしぼりぞかぬる天の宙゚

56 秋 ○ 上人
棚機のながき思ひもくるしきにこの瀬をかぎれ天の川なみ

158 恋 1264 
棚機は逢ふをうれしと思ふらむ我は別のうき今宵かな

34 春 ○ 上人
谷風の花の波をし吹きこせばゐせぎにたてる嶺のむら松

103 冬 966 上人 心中
谷風は戸を吹きあけて入るものをなにと嵐の窓たたくらむ

松屋本山家集
谷川の濁れる底を澄ましつつおしてる波に流し出でつる

112 羇 1366
谷の庵に玉の簾をかけましやすがるたるひの軒をとぢずば

170 雑 941 上人 心中 玉葉
谷のまにひとりぞ松はたてりける我のみ友はなきかと思へば

249 聞180
谷のまも峯のつづきも吉野山はなゆゑ踏まぬ岩根あらじを

87 秋 1080 (阿闍梨覚堅歌)
谷ふかく住むかと思ひてとはぬ間に恨をむすぶ菊の下水

198 雑 1393 
たねつくるつぼ井の水のひく末にえぶなあつまる落合のはた
          
200 哀 923 (小侍従歌)
頼むべきこともなき身を今日までも何にかかれる玉の緒ならむ


184 雑 1140 上人追加 玉葉
頼むらんしるべもいさやひとつ世の別にだにもまよふ心は

280 補 上人 新古今 物語
頼めおかむ君も心やなぐさむと帰らむことはいつとなくとも

159 恋 1289
たのめおきし其いひごとやあだになりし波こえぬべき末の松山

277 補 上人 御裳濯河 新古今 月詣 物語
たのめぬに君くやと待つ宵のまの更けゆかで唯あけなましかば

208 哀 816 (寂然法師歌)
たのもしき道には入りて行きしかど我が身をつめばいかがとぞ思ふ


196 雑 ○ ▲ 上人 御裳濯河 新勅撰
たのもしな君君にます折にあひて心の色を筆にそめつる
 
278 補 ▲ 上人 御裳濯河 新勅撰
たのもしな君きみにます時にあひて心のいろを筆にそめつる 

257 聞233
たのもしな雪を見るにぞ知られぬるつもる思ひのふりにけりとは

155 恋 711 上人
たのもしなよひ暁の鐘のおとにもの思ふつみも尽きざらめやは

103 冬 516
旅寝する草のまくらに霜さえて有明の月の影ぞまたるる

140 羇 ○ 上人
旅ねする嶺の嵐につたひきてあはれなりける鐘の音かな

52 夏 237 上人 心中
たび人の分くる夏野の草しげみ葉末にすげの小笠はづれて

62 秋 ○ 上人 
堪へぬ身にあはれおもふもくるしきに秋の来ざらむ山里もがな

99 冬 537 夫木
玉がきはあけも緑も埋もれて雪おもしろき松の尾の山

92 冬 511 上人 心中 夫木
玉かけし花のかつらもおとろへて霜をいただく女郎花かな

67 秋 423
玉づさのつづきは見えで雁がねの声こそ霧にけたれざりけれ

24 春 48 上人 心中 言葉 夫木
玉づさのはしがきかとも見ゆる哉とびおくれつつ帰る雁がね

61 秋 296 心中 新勅撰
玉にぬく露はこぼれてむさし野の草の葉むすぶ秋の初風

103 冬 515 
玉まきし垣ねのまくず霜がれてさびしくみゆるふゆの山里

169 雑 1050 
玉みがく露ぞ枕にちりかかる夢おどろかす竹のあらしに

100 冬 1488
たまりをる梢の雪の春ならば山里いかにもてなされまし

99 冬 529 夫木
たゆみつつそりのはや緒もつけなくに積りにけりな越の白雪

松屋本山家集
たらちねのおほし立てたる姿にて悟りはやがてありける物を

245 聞143
たらちねの乳房をぞ今日おもひ知るかかるみ法をきくにつけても

252 聞212
たらちをのゆくへを我も知らぬかなおなじほのほにむせぶらめども

26 春 57 上人 心中 物語(広)
誰かまた花を尋ねてよしの山苔ふみわくる岩つたふらむ

71 秋 328 万代
誰きなむ月の光に誘はれてと思ふに夜半の明けにけるかな

196 雑 ○ 上人 宮河 新古今 玄玉 物語
誰すみてあはれ知るらむ山ざとの雨降りすさむ夕暮の空

213 哀 ○ 続古今
誰とてもとまるべきかはあだし野の草の葉ごとにすがる白露

40 春 160 上人追加 夫木
誰ならむあら田のくろに菫つむ人は心のわりなかりけり

247 聞156
誰ならむ吉野の山のはつ花をわがものがほに折りてかへれる

81 秋 364
誰もみなことわりとこそ定むらめ昼をあらそふ秋の夜の月

「ち」

221 釈 1540
誓ありて願はむ国へ行くべくはにしのかどよりさとりひらかむ

261 聞261 
千木たかく神ろぎの宮ふきてけり杉のもと木をいけはぎにして

281 補 御裳濯河 新勅撰集 長秋詠藻 (藤原俊成歌)
ちぎりおきし契りの上にそへおかむ和歌の浦わのあまの藻汐木


松屋本山家集
契れどもながき心はいさや君さりとてさはと思ふばかりぞ

95 冬 553 上人追加 夫木
千鳥なく絵嶋の浦にすむ月を波にうつして見る今宵かな

松屋本山家集
千鳥鳴くをりたる崎をめぐる舟の月を心にかけて過ぐらん

243 聞126 上人 夫木
千鳥なくふけゐのかたを見わたせば月かげさびし難波津のうら

226 聞3 夫木
乳もなくていはけなき身のあはれみはこの法みてぞ思ひしらるる

35 春 106 上人 心中 夫木
勅とかやくだす御門のいませかしさらば恐れて花やちらぬと

141 賀 1183
千代ふべき二葉の松のおひさきを見る人いかに嬉しかるらむ

142 賀 1171 上人
千代ふべきものをさながらあつむとも君が齡を知らんものかは

29 春 ○ 上人 
ちらでまてと都の花をおもはまし春かへるべきわが身なりせば

34 春 ○ 上人
ちらぬまはさかりに人もかよひつつ花に春あるみよしのの山

34 春 ○ 上人 雲葉
ちらばまたなげきやそはむ山櫻さかりになるはうれしけれども

219 釈 893 
散りしきし花の匂ひの名残多みたたまうかりし法の庭かな

38 春 105 上人 心中 玉葉 夫木
ちりそむる花の初雪ふりぬればふみ分けまうき志賀の山越

191 雑 1509
ちりつかでゆがめる道をなほくなして行く行く人をよにつかむとや

252 聞210
塵灰にくだけはてなばさてもあらでよみがへらすることのはぞうき

214 釈 865 
ちりばかりうたがふ心なからなむ法をあふぎて頼むとならば

218 釈 877 上人 心中 風雅 月詣
散りまがふ花のにほひをさきだてて光を法の莚にぞしく

235 聞61 夫木
散りまさむかたをやぬしに定むべきみねをかぎれる花のむらだち

松屋本山家集
塵もなき心の空にとめつればむなしき影もむなしからぬを

39 春 772 上人 心中
ちるとみれば又咲く花の匂ひにもおくれさきだつためしありけり

139 羇 138 夫木
ちる花のいほりの上を吹くならば風入るまじくめぐりかこはむ

209 哀 828 (少将ながのり歌)
ちる花は又こん春も咲きぬべし別はいつかめぐりあふべき


239 聞99 
ちる花もねにかへりてぞ又はさく老こそはてはゆくへしられね

48 夏 203 (稚児歌)
ちる花を今日の菖蒲のねにかけてくすだまともやいふべかるらむ

37 春 127 上人 心中
ちる花を惜しむ心やとどまりて又こむ春の誰になるべき

28 春 104 上人 心中 千載 月詣
ちるを見て帰る心や櫻花むかしにかはるしるしなるらむ

「つ」

167 雑 958 上人 心中
つがはねどうつれる影を友として鴦住みけりな山川の水

97 冬 新潮欠 525a
月出づる軒にもあらぬ山の端のしらむもしるし夜はの白雪


96 冬 518 
月出づる嶺の木葉もちりはてて麓の里は嬉しかるらむ

80 秋 354
月影のかたぶく山を眺めつつ惜しむしるしや有明の空

83 秋 ○ 上人 夫木
月かげのしららの浜のしろ貝は浪も一つに見えわたるかな

(誤入・長久元年(1040)年の歌合に詠み人知らずで採録)

81 秋 376 上人 心中 玉葉 夫木
月さゆる明石のせとに風吹けば氷の上にたたむしら波

185 雑 ○ 上人 
月すみし宿も昔の宿ならで我が身もあらぬ我が身なりけり

78 秋 新潮欠 311a
月すみてなぎたる海のおもてかな雲の波さへ立ちもかからで


276 補 宮河
月すみてふくる千鳥のこゑすなりこころくだくや須磨の関守

74 秋 387 
月すむと荻植ゑざらむ宿ならばあはれすくなき秋にやあらまし

121 羇 1106 上人 心中 玉葉 夫木
月すめば谷にぞ雲はしづむめる嶺吹きはらふ風にしかれて

73 秋 388
月なくば暮るれば宿へ帰らまし野べには花のさかりなりとも
 
71 秋 318 
月ならでさし入るかげもなきままに暮るる嬉しき秋の山里

191 雑 1505
月にいかで昔のことをかたらせて影にそひつつ立ちもはなれむ

110 羇 1409
月にはぢてさし出でられぬ心かな詠むる袖に影のやどれば

84 秋 ○ 新古今 宮河 物語
月の色に心をふかくそめましや都を出でぬ我が身なりせば

73 秋 390 夫木
月の色を花にかさねて女郎花うは裳のしたに露をかけたる

74 秋 393 宮河
月のすむ浅茅にすだくきりぎりす露のおくにや秋を知るらむ

222 神 1402 
月のすむみおやがはらに霜さえて千鳥とほたつ声きこゆなり

83 秋 ○ 上人 
月のため心やすきは雲なれやうき世にすめる影をかくせば

80 秋 358 上人 心中
月のため昼と思ふがかひなきにしばしくもりて夜を知らせよ

61 秋 1021 
月のためみさびすゑじと思ひしにみどりにもしく池の浮草

76 秋 727 上人 心中 新古今 物語(広)
月のみやうはの空なるかたみにて思ひも出でば心通はむ

275 補 新古今
月のゆく山に心をおくり入れてやみなるあとの身をいかにせむ

85 秋 1482 
月の夜や友とをなりていづくにも人しらざらむ栖をしへよ

212 哀 770 上人 心中
つきはてしその入あひの程なさを此暁に思ひしりぬる

75 秋 413 
月は猶よなよな毎にやどるべし我がむすび置く草のいほりに

258 聞241 
月はみやこ花のにほひは越の山とおもふよ雁のゆきかへりつつ

148 恋 616 上人 心中
月待つといひなされつる宵のまの心の色の袖に見えぬる

83 秋 ○ 上人 御裳濯河 新古今 玄玉 御裳濯 自讃歌 物語
月見ばとちぎりおきてし古郷の人もやこよひ袖ぬらすらむ

86 秋 381 上人 心中
月みれば秋くははれる年はまたあかぬ心もそふにぞありける

148 恋 619 
月見ればいでやと世のみおもほえてもたりにくくもなる心かな

71 秋 336 上人 心中
月みればかげなく雲につつまれて今夜ならずば闇にみえまし

25 春 1069 上人追加 夫木
月みれば風に櫻の枝なべて花かとつぐるここちこそすれ

75 秋 417 
月やどるおなじうきねの波にしも袖しぼるべき契ありけり

238 聞92 
月やどる波のかひにはよるぞなきあけて二見をみるここちして

165 恋 1500
月をうしとながめながらも思ふかなその夜ばかりの影とやは見し

172 雑 1550
月をこそながめば心うかれ出でめやみなる空にただよふやなぞ

90 冬 ○ 上人 御裳濯河 新古今 玄玉 物語(広)
月をまつ高嶺の雲は晴れにけり心ありけるはつ時雨かな

84 秋 1475
月を見て明石の浦を出る舟は波のよるとや思はざるらむ

77 秋 773 上人 心中
月を見ていづれの年の秋までかこの世に我か契あるらむ

80 秋 349 上人 心中 新古今 後裳濯 物語
月を見て心うかれしいにしへの秋にも更にめぐりあひぬる

149 恋 625 
月を見る心のふしをとがにしてたより得がほにぬるる袖かな

82 秋 953 上人 心中 夫木
月をみる外もさこそは厭ふらめ雲ただここの空にただよへ

49 夏 211 
つくづくと軒の雫をながめつつ日をのみ暮らす五月雨のころ

237 聞84 
つくづくとほととぎすもやものを思ふ鳴くねにはれぬ五月雨の空

273 補 御裳濯河 御裳濯
つくづくとものおもひをれば時鳥こころにあまる声きこゆなり

194 雑 712 上人 心中 玉葉 
つくづくと物を思ふにうちそへてをりあはれなる鐘のおとかな

22 春 42 
つくり置きし梅のふすまに鶯は身にしむ梅の香やうつすらむ

41 春 ○ 上人
つくりすて荒らしはてたる澤小田にさかりにさける杜若かな

55 夏 982 夫木
つたひくるかけひを絶ずまかすれば山田は水も思はざりけり

215 釈 857 (寂超法師歌)
つたへきく流なりとも法の水汲む人からやふかくなるらむ


松屋本山家集
続きつつあるもなくなるあとの人のまたくる人に続くなりけり

40 春 164 上人追加 夫木
躑躅咲く山の岩かげ夕ばえてをぐらはよその名のみなりけり

163 恋 1338
つつめども袖より外にこぼれ出でてうしろめたきは涙なりけり

156 恋 1243 
つつめども涙の色にあらはれて忍ぶ思ひは袖よりぞちる

158 恋 1268
つつめども人しる恋や大井川ゐせぎのひまをくぐる白波

56 秋 257 上人 心中 新拾遺
つねよりも秋になるをの松風はわきて身にしむ心地こそすれ

131 羇 572 物語
常よりも心ぼそくぞおもほゆる旅の空にて年の暮れぬる

102 冬 559 上人 心中
津の国の芦の丸屋のさびしさは冬こそわきて訪ふべかりけれ

197 雑 ○ 上人 心中
津の国のながらの橋のかたもなし名はとどまりてきこえわたれど

93 冬 新潮欠 上人 御裳濯河 新古今 玄玉 自讃歌 物語(広)
津の国の難波の春は夢なれや蘆の枯葉に風わたるなり


40 春 1444 夫木
つばなぬく北野の茅原あせ行けば心ずみれぞ生ひかはりける

226 聞1 夫木
つぼむよりなべてにも似ぬ花なればこずゑにかねてかをる春風

147 恋 602
つま恋ひて人目つつまぬ鹿の音をうらやむ袖のみさをなるかな

220 釈 897
罪人のしめるよもなく燃ゆる火の薪とならんことぞ悲しき

251 聞205 夫木 
つみ人は死出の山辺の杣木かな斧のつるぎに身をわられつつ

141 羇 1124
露おきし庭の小萩も枯れにけりいづち都に秋とまるらむ

52 夏 235
露おもみそのの撫子いかならむ荒らく見えつる夕立のそら

110 羇 1411
露けさはうき身の袖のくせなるを月見るとがにおほせつるかな

185 雑 ○ 上人
露しげく浅茅しげれる野になりてありし都は見しここちせぬ

274 補 万代
露つつむ池のはちすのまくり葉にころもの玉を思ひしるかな

212 哀 851
露と消えば蓮台野にを送りおけ願ふ心を名にあらはさむ

74 秋 394 夫木
露ながらこぼさで折らむ月影にこ萩がえだの松虫のこゑ

193 雑 765 物語
露の玉きゆれば又も置くものをたのみもなきは我が身なりけり

51 夏 242 上人 心中 夫木
露のぼる蘆の若葉に月さえて秋をあらそふ難波江の浦

211 哀 843 上人
露深き野べになり行く古郷は思ひやるにも袖しをれけり

189 雑 1414 
つゆもありかへすがへすも思ひ出でてひとりぞ見つる朝がほの花

121 羇 917 上人 心中 物語(広)
露もらぬ岩屋も袖はぬれけると聞かずばいかにあやしからまし

183 雑 1164 上人 心中 夫木
つよくひく綱手と見せよもがみ川その稲舟のいかりをさめて

159 恋 1280 
つらからむ人ゆゑ身をば恨みじと思ひしかどもかなはざりけり

144 恋 590 
つらくともあはずば何のならひにか身の程知らず人をうらみむ

215 釈 860 上人
つらなりし昔に露もかはらじと思ひしられし法の庭かな

67 秋 959
つらなりて風に乱れて鳴く雁のしどろに声のきこゆなるかな

166 雑 961 
つららはふ端山は下もしげければ住む人いかにこぐらかるらむ

236 聞66 
つれなきを花によそへて猶ぞまつさかでしもさてやまじと思へば

146 恋 597 言葉
つれもなき人にみせばや櫻花風にしたがふ心よわさを

147 恋 600 
つれもなく絶えにし人を雁がねの帰る心とおもはましかば

83 秋 ○ (誤入・西行歌ではない)
月かげのしららの浜のしろ貝は浪も一つに見えわたるかな

「て」

215 釈 858 (観音寺入道生光歌)
寺つくる此我が谷につちうめよ君ばかりこそ山もくずさめ


「と」

249 聞178 夫木
とき花や人よりさきにたづぬると吉野にゆきて山まつりせむ

249 聞186 上人追加 夫木
ときはなる花もやあると吉野山おくなく入りてなほたづねみむ

130 羇 482
ときはなる松の緑も神さびて紅葉ぞ秋はあけの玉垣

283 補 上人 
ときはなるみ山に深く入りにしを花さきなばと思ひけるかな

151 恋 656 上人 夫木
ときは山しひの下柴かり捨てむかくれて思ふかひのなきかと

261 聞258 
とくゆきて~風めぐむみ扉ひらけ天のみかげに世をてらしつつ

14 春 新潮欠 4a
とけそむる初若水のけしきにて春立つことのくまれぬるかな


45 夏 1466
所から聞きがたきかと郭公さとをかへても待たむとぞ思ふ

104 冬 574 上人 心中 玉葉 物語
年暮れしそのいとなみは忘られてあらぬさまなるいそぎをぞする

14 春 1 上人追加 夫木
年くれぬ春くべしとは思ひ寝にまさしく見えてかなふ初夢

277 補 夫木
とぢそむる氷をいかにいとふらむあぢ群渡る諏訪のみづうみ

239 聞97 
としたかみかしらに雪を積らせてふりにける身ぞあはれなりける

128 羇 ○ 上人 新古今 自讃歌 物語
年たけて又こゆべしと思ひきや命なりけりさやの中山

193 雑 768 上人 心中 宮河 新古今 物語
年月をいかで我が身に送りけむ昨日の人も今日はなき世に

98 冬 570
年の内はとふ人更にあらじかし雪も山路も深き住家を

18 春 1061 上人追加 夫木
年ははや月なみかけて越えにけりうべつみけらしゑぐの若だち

179 雑 930 
年ふれど朽ちぬときはの言の葉をさぞ忍ぶらむ大原のさと

120 羇 1397
年へたる浦のあま人こととはむ波をかづきて幾世過ぎにき

28 春 89 上人 心中
年を経ておなじ梢に匂へども花こそ人にあかれざりけれ

36 春 109 上人追加 宮河 続拾遺 御裳濯
年を経て待つと惜しむと山櫻心を春はつくすなりけり

196 雑 ○ 上人 
とだえせでいつまで人のかよひけむ嵐ぞわたる谷のかけ橋

68 秋 439 上人追加 夫木
隣ゐぬ畑の假屋に明かす夜はしか哀なるものにぞありける

164 恋 1348 上人 心中 玉葉
とにかくにいとはまほしき世なれども君が住むにもひかれぬるかな

258 聞236
とにかくにはかなき世をも思ひ知りてかしこき人のなど無かるらむ

203 哀 784 上人 心中 物語
とはばやと思ひよりてぞ嘆かまし昔ながらの我身なりせば

159 恋 1279 
とはれぬもとはぬ心のつれなさもうきはかはらぬ心地こそすれ

253 聞217 
問ふとかや何ゆゑもゆるほむらぞと君をたき木のつみの火ぞかし

170 雑 937 上人 心中
とふ人も思ひたえたる山里のさびしさなくば住みうからまし

103 冬 569 上人 心中
とふ人も初雪をこそ分けこしか道とぢてけりみ山辺のさと

159 恋 1285 上人 続古今 万代
とへかしななさけは人の身のためをうきものとても心やはある

210 哀 833 上人 心中 続後撰 (寂然法師歌)
とへかしな別の袖に露しげき蓬がもとの心ぼそさを


99 冬 543 
とへな君夕ぐれになる庭の雪を跡なきよりはあはれならまし

168 雑 1025 夫木
とほくさすひたのおもてにひく汐はしづむ心ぞ悲しかりける

178 雑 745 上人 心中 夫木 物語(広)
苫のやに波立ちよらぬけしきにてあまり住みうき程は見えけり

258 聞239 
とまりなきこのごろの世は舟なれや波にもつかず磯もはなれぬ

20 春 ○ ▲ 上人 御裳濯河 新古今 玄玉 御裳濯 物語
とめこかし梅さかりなるわが宿をうときも人は折にこそよれ

233 聞50 ▲ 上人 御裳濯河 新古今 玄玉 御裳濯 物語
とめこかし梅さかりなるわが宿をうときも人はをりにこそよれ

272 補 上人 
とめ行きて主なき宿の梅ならば勅ならずとも折りてかへらむ

52 夏 239 
ともしするほぐしの松もかへなくにしかめあはせで明す夏の夜

213 哀 1517
灯のかかげぢからもなくなりてとまる光を待つ我が身かな

150 恋 647
ともすれば月澄む空にあくがるる心のはてを知るよしもがな

171 雑 1544
友になりて同じ湊を出づるふねの行方もしらず漕ぎ分れぬる

29 春 1075 (寂然法師歌)
ともに見し嶺の紅葉のかひなれや花の折にもおもひ出ける


163 恋 1341
とりのくし思ひもかけぬ露はらひあなくしたかの我が心かな

192 雑 757 上人 心中
鳥辺野を心のうちに分け行けばいまきの露に袖ぞそばつる

211 哀 776 
鳥部山わしの高嶺のすゑならむ煙を分けて出づる月かげ

131 羇 1131
とりわきて心もしみてさえぞ渡る衣川見にきたる今日しも

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207 哀 811 (侍従大納言藤原成通遺族歌)
たぐひなき昔の人のかたみには君をのみこそたのみましけれ

16 春 1067 (静忍法師歌)
立ち帰り君やとひくと待つほどにまだ消えやらず野辺のあわ雪

176 雑 736 物語(広) (作者不詳、兵衛の局説あり)
立ちよりて柴の烟のあはれさをいかが思ひし冬の山里

87 秋 1080 (阿闍梨覚堅歌)
谷ふかく住むかと思ひてとはぬ間に恨をむすぶ菊の下水

200 哀 923 (小侍従歌)
頼むべきこともなき身を今日までも何にかかれる玉の緒ならむ

208 哀 816 (寂然法師歌)
たのもしき道には入りて行きしかど我が身をつめばいかがとぞ思ふ


281 補 御裳濯河 長秋詠藻 (藤原俊成歌)
ちぎりおきし契りの上にそへおかむ和歌の浦わのあまの藻汐木

209 哀 828 (少将ながのり歌)
ちる花は又こん春も咲きぬべし別はいつかめぐりあふべき

48 夏 203 (稚児歌)
ちる花を今日の菖蒲のねにかけてくすだまともやいふべかるらむ

215 釈 857 (寂超法師歌)
つたへきく流なりとも法の水汲む人からやふかくなるらむ

215 釈 858 (観音寺入道生光歌)
寺つくる此我が谷につちうめよ君ばかりこそ山もくずさめ

210 哀 833 上人 心中 続後撰 (寂然法師歌)
とへかしな別の袖に露しげき蓬がもとの心ぼそさを

29 春 1075 (寂然法師歌)
ともに見し嶺の紅葉のかひなれや花の折にもおもひ出ける


欠 鹿野しのぶ「語文」 弘川寺から慈円に送った新発見歌
訪ね来つる宿は木の葉に埋もれて煙を立つる弘川の里

97 冬 新潮欠 525a
月出づる軒にもあらぬ山の端のしらむもしるし夜はの白雪

78 秋 新潮欠 311a
月すみてなぎたる海のおもてかな雲の波さへ立ちもかからで

84 秋 新潮欠 新古今 宮河 物語
月の色に心をふかくそめましや都を出でぬ我が身なりせば

93 冬 新潮欠 上人 御裳濯河 新古今 玄玉 自讃歌 物語(広)
津の国の難波の春は夢なれや蘆の枯葉に風わたるなり

14 春 新潮欠 4a 夫木
とけそむる初若水のけしきにて春立つことのくまれぬるかな


83 秋 ○ (誤入・長久元年(1040)年の歌合に詠み人知らずで採録)
月かげのしららの浜のしろ貝は浪も一つに見えわたるかな

                     2008年10月4日入力
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