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山家集索引
 

あ〜お か〜こ さ〜そ た〜と な〜の は〜ほ ま〜も や〜わ

「は」

147 恋 599
葉がくれに散りとどまれる花のみぞ忍びし人にあふここちする

283 補 桐火桶(歌論書ですが偽書と見られています)
はかなくぞ明日の命をたのみける昨日をすぎし心ならひに


212 哀 777
はかなくて行きにし方を思ふにも今もさこそは朝がほの露

213 哀 1513
はかなしな千とせと思ひし昔をも夢のうちにて過ぎにけるには

193 雑 764 新古今 新続古今 物語
はかなしやあだに命の露消えて野べに我身の送りおかれむ

68 秋 430
萩が枝の露ためず吹く秋風にをじか鳴くなり宮城野の原

276 補 玄玉
萩が枝の露にこころのむすぼれて袖にうらある秋の夕ぐれ
 
238 聞86 夫木
萩が葉につゆのたまもる夕立ははなまつ秋のまうけなりけり

233 聞48 上人追加 夫木
箱根山こずゑもまだや冬ならむ二見は松のゆきのむらぎえ

127 羇 1390 
はし鷹のすずろかさでもふるさせてすゑたる人のありがたの世や

231 聞34
はちす咲くみぎはの波のうちいでて説くらむ法を心にぞ聞く

46 夏 1467
初声を聞きての後は時鳥待つも心のたのもしきかな

90 冬 ○ 上人
初時雨あはれ知らせて過ぎぬなり音に心の色をそめにし

松屋本山家集
初霜の見えも分かれでおきてけるうつろひやすき白菊の花

33 春 148 上人 心中
初花のひらけはじむる梢よりそばえて風のわたるなるかな

225 神 1531 上人追加 夫木
初春をくまなく照らす影を見て月にまづ知るみもすその岸
 
247 聞161 閑月 夫木
初雪は冬のしるしにふりにけり秋しの山の杉のこずゑに

191 雑 1510 
はとしまんと思ひも見えぬ世にしあれば末にさこそは大ぬさの空
「新潮」
ひとしまんと思ひも見えぬ世にあれば末にさこそは大幣の空

34 春 ○ 上人 ▲
花いかに我をあはれと思ふらむ見て過ぎにける春をかぞへて

37 春 135 上人
花ざかり梢をさそふ風ならでのどかに散らむ春はあらばや

249 聞184
花ざかり人も漕ぎ来ぬ深きたにに波をぞたつるはるの山かぜ

284 補 御裳濯河
花さきし鶴の林のそのかみを吉野の山の雲に見しかな

235 聞64 ▲ 上人 宮河 玄玉
花さへに世をうき草になりにけり散るを惜しめばさそふ山水

38 春 ○ ▲ 上人 宮河 玄玉
花さへに世をうき草になしにけりちるを惜しめばさそふ山水

61 秋 274 上人 心中
花すすき心あてにぞ分けて行くほの見し道のあとしなければ

74 秋 386 夫木
花すすき月の光にまがはまし深きますほの色にそめずば

31 春 72 上人 心中 風雅 月詣
花ちらで月はくもらぬ世なりせば物を思はぬわが身ならまし

258 聞242
花ちりて雲はれぬれば吉野山こずゑのそらはみどりにぞなる

258 聞243
花ちりぬやがてたづねむほととぎす春をかぎらじみ吉野の山

32 春 147
花ときくは誰もさこそは嬉しけれ思ひしづめぬわが心かな

234 聞56
花と見えて風にをられてちる波のさくら貝をばよするなりけり

37 春 133
花と見ばさすがなさけをかけましを雲とて風の払ふなるべし

112 羇 1362 
花とみる梢の雪に月さえてたとへむ方もなき心地する

180 雑 1239 上人 心中 続拾遺 長秋詠藻
花ならぬことの葉なれどおのづから色もやあると君拾はなむ

95 冬 519 上人追加 玉葉
花におく露にやどりし影よりも枯野の月はあはれなりけり

31 春 76 上人 心中 御裳濯河 千載 月詣 御裳濯
花にそむ心のいかで残りけむ捨てはててきと思ふわが身に

231 聞31
花にのるさとりを四方に散らしてや人の心に香をばしむらむ

235 聞65
花の色にかしらの髪しさきぬれば身は老木にぞなりはてにける

231 聞33
花のいろに心をそめぬこの春やまことの法の果はむすぶべき

235 聞63
花のいろの雪のみ山にかよへばや深きよし野の奧へいらるる

28 春 91
花の色や声に染むらむ鶯のなく音ことなる春のあけぼの

73 秋 389 上人 心中
花の色を影にうつせば秋の夜の月ぞ野守のかがみなりける

59 秋 280 上人 心中 宮河 玄玉
花の枝に露のしら玉ぬきかけて祈る袖ぬらす女郎花かな

246 聞154
花の香をさとりのまへに散らすかなわが心しる風もありけり

218 釈 878
花の香をつらなる軒に吹きしめてさとれと風のちらすなりけり

236 聞67 夫木
花の火をさくらの枝にたきつけてけぶりになれるあさがすみかな

35 春 1459
花の雪の庭につもると跡つけじかどなき宿といひちらさせて

199 哀 1445
花の折かしはにつつむしなの梨は一つなれどもありのみと見ゆ

272 補 ▲ 上人
花はいかに吾をあはれと思ふらむ見てすぎにける春かぞへても

221 釈 1539
花まではみに似ざるべし朽ち果てて枝もなき木の根をな枯らしそ

29 春 87 上人追加 玉葉 物語
花見にとむれつつ人のくるのみぞあたら櫻のとがにはありける

30 春 68 夫木
花みればそのいはれとはなけれども心のうちぞ苦しかりける

101 冬 557 上人 心中
花もかれもみぢも散らぬ山里はさびしさを又とふ人もがな

38 春 ○ 上人
花もちり涙ももろき春なれや又やはとおもふ夕暮の空

29 春 88 
花もちり人もこざらむ折は又山のかひにてのどかなるべし

33 春 157 上人 心中
花もちり人も都へ帰りなば山さびしくやならむとすらむ

244 聞131 宮河 御裳濯
花よりはいのちをぞ猶をしむべき待ちつくべしと思ひやはせし

84 秋 1476 
はなれたるしららの浜の沖の石をくだかで洗ふ月の白浪

62 秋 298 上人 心中
花をこそ野辺のものとは見に来つれ暮るれば虫の音をも聞きけり

34 春 ○ 上人 宮河 玉葉
花を待つ心こそなほ昔なれ春にはうとくなりにしものを

30 春 1070 
花をみし昔の心あらためて吉野の里にすまむとぞ思ふ

234 聞57    
花を見てなごりくれぬる木のもとは散らぬさきにとたのめてぞたつ

146 恋 598 
花をみる心はよそにへだたりて身につきたるは君がおもかげ

229 聞24 夫木
花をわくる峯の朝日のかげはやがて有明の月をみがくなりけり

278 補 上人
花を惜しむ心のいろのにほひをば子をおもふ親の袖にかさねむ

40 春 163 夫木
はひつたひ折らでつつじを手にぞとるさかしき山のとり所には
「新潮」岩伝ひ折らでつつじを手にぞ取る険しき山のとりどころには

240 聞104 (藤原俊成歌)
浜木綿にかさなる年ぞあはれなるわかの浦波よにたえずとも


239 聞103
はまゆふに君がちとせの重なればよに絶ゆまじき和歌の浦波

49 夏 218 上人 夫木
はやせ川綱手のきしを沖に見てのぼりわづらふさみだれの頃

242 聞121
はやせ川なみに筏のたたまれてしづむなげきを人しらめやは

118 羇 1450
はらか釣るおほわたさきのうけ縄に心かけつつ過ぎむとぞ思ふ

189 雑 1032 上人 心中
はらはらと落つる涙ぞあはれなるたまらず物のかなしかるべし

78 秋 311 上人 心中 夫木
はりま潟灘のみ沖に漕ぎ出でてあたり思はぬ月をながめむ

154 恋 697 
播磨路や心のすまに関すゑていかで我が身の恋をとどめむ

282 補 宮河
春秋を君おもひ出ば我はまた月と花とをながめおこさむ

15 春 967 上人 心中 夫木
春あさみ篠(すず)のまがきに風さえてまだ雪消えぬしがらきの里

24 春 33
春霞いづち立ち出で行きにけむきぎす棲む野を焼きてけるかな

36 春 113 上人 心中 夫木
春風の花のふぶきにうづもれて行きもやられぬ志賀の山道

38 春 139
春風の花をちらすと見る夢は覚めても胸のさわぐなりけり

172 雑 1168
春風の吹きおこせんに櫻花となりくるしくぬしや思はむ

156 恋 ○ 新古今 物語
はるかなる岩のはざまにひとりゐて人目つつまでもの思はばや

45 春 1464
春くれてこゑに花咲く時鳥尋ぬることも待つもかはらぬ

41 春 ○ 上人
春くれて人ちりぬめり芳野山花のわかれを思ふのみかは

松屋本山家集
春暮れぬその大方はいかがせん花を形見ととどめましかば

16 春 14 上人 心中
春ごとに野辺の小松を引く人はいくらの千代をふべきなるらむ

松屋本山家集 ▲ 上人 御裳濯河 御裳濯
春ごとに花のさかりに逢い来つつ思い出多き我身なりけり

244 聞132
春ごとの花にこころをなぐさめて六十あまりのとしをへにける

262 残2 夫木
春雨に花のみぞれの散りけるを消えでつもれる雪と見たれば 

23 春 45 
春雨の軒たれこむるつれづれに人に知られぬ人のすみかか

17 春 20 上人 心中
春雨のふる野の若菜おひぬらしぬれぬれ摘まん籠(かたみ)手ぬきれ

16 春 10 上人 心中
春しれと谷の下みづもりぞくる岩間の氷ひま絶えにけり

松屋本山家集
春立ちて音羽の里の陰の雪に下の清水のとくる待ちける

松屋本山家集
春立ちぬ霞がさねの衣着て梅が香散らせうぐひすの声

14 春 3 
春たつと思ひもあへぬ朝とでにいつしか霞む音羽山かな

松屋本山家集
春立つをあづまより来る人さへに関の清水の音に知るかな

25 春 ○ 上人 
春といへば誰も吉野の花をおもふ心にふかきゆゑやあるらむ

13 春 1060
春としもなほおもはれぬ心かな雨ふる年のここちのみして

25 春 986 上人 心中 風雅
春になる櫻の枝は何となく花なけれどもむつましきかな

233 聞47 
春になればところどころはみどりにて雪の波こす末の松山

21 春 30
春のほどは我が住む庵の友になりて古巣な出でそ谷の鶯

234 聞53 夫木
春は来て遅くさくらのこずゑかな雨の脚まつ花にやあるらむ

松屋本山家集
春は猶吉野の奥へ入にけり散るめる花ぞ根には帰れる

37 春 128 上人 心中
春ふかみ枝もうごかでちる花は風のとがにはあらぬなるべし

42 春 171 上人 心中
春ゆゑにせめても物を思へとやみそかにだにもたらで暮れぬる

34 春 ○ ▲ 上人 松屋本 御裳濯河 御裳濯  
春をへて花のさかりにあひきつつ思ひ出おほき我が身なりけり

148 恋 607 
春を待つ諏訪のわたりもあるものをいつを限にすべきつららぞ

69 秋 960
晴れがたき山路の雲に埋もれて苔の袂は霧くちにけり

83 秋 954
晴間なく雲こそ空にみちにけれ月見ることは思ひたたなむ

100 冬 1490
晴れやらでニむら山に立つ雲は比良のふぶきの名残なりけり

203 哀 788 (作者不詳歌)
晴やらぬ去年の時雨の上に又かきくらさるる山めぐりかな


62 秋 300 上人 心中
晴れやらぬみ山の霧の絶え絶えにほのかに鹿の声きこゆなり

「連歌」残集22 (前句、空仁法師、付句、西行)

 はやくいかだはここに来にけり
    大井川かみに井堰やなかりつる


「ひ」

142 賀 1178 
光さす三笠の山の朝日こそげに萬代のためしなりけれ

252 聞214 夫木
光させばさめぬかなへの湯なれどもはちすの池となるめるものを

松屋本山家集
光り添へん苦しみ燃ゆる罪の火に思ひ消つべきゆゑなかりけり

82 秋 969 上人 心中 夫木
光をばくもらぬ月ぞみがきける稲葉にかかるあさひこの玉

157 恋 1263
ひきかへて嬉しかるらむ心にもうかりしことを忘れざらなむ

31 春 71 上人 心中 玉葉
ひきかへて花見る春は夜はなく月みる秋は昼なからなむ

226 聞5 夫木
ひきひきに苗代みづをわけやらでゆたかに流す末をとほさむ

221 釈 1534 
ひきひきにわがたてつると思ひける人の心やせばまくのきぬ

54 夏 1020 上人 心中 宮河 御裳濯 夫木
ひさぎ生ひて凉めとなれるかげなれや波打つ岸に風わたりつつ

111 羇 1358 上人 心中 玉葉 物語(広)
久にへて我が後の世をとへよ松跡したふべき人もなき身ぞ

263 残3
ひとかたにうつつ思はぬ夢ならば又もや聞くとまどろみなまし

147 恋 603 
一方にみだるともなきわが恋や風さだまらぬ野辺の苅萱

273 補 宮河
人きかぬ深き山べのほととぎす鳴く音もいかにさびしかるらむ

189 雑 1415 
ひときれは都をすてて出づれどもめぐりてはなほきそのかけ橋

101 冬 533
人こばと思ひて雪をみる程にしか跡つくることもありけり

197 雑 ○ 上人
人しらでつひのすみかにたのむべき山の奧にもとまりそめぬる

162 恋 1331 夫木
人しれぬ涙にむせぶ夕ぐれはひきかづきてぞうちふされける

181 雑 1161
一すぢにいかで杣木のそろひけむいつよりつくる心だくみに

245 聞144
ひとすぢにこころのいろを染むるかなたなびきわたる紫の雲

232 聞40
ひとつ根に心のたねの生ひいでて花さきみをばむすぶなりけり

251 聞206 夫木
一つ身をあまたに風の吹ききりてほむらになすもかなしかりけり

244 聞133
ひとときに遅れさきだつこともなく木毎に花のさかりなるかな

153 恋 682 上人 心中
人はうし嘆はつゆもなぐさまずこはさはいかにすべき心ぞ

156 恋 ○ 御裳濯河 新古今
人はこで風のけしきのふけぬるにあはれに雁のおとづれて行く

35 春 1455 
人はみな吉野の山へ入りぬめり都の花にわれはとまらむ

32 春 1037
人もこず心もちらで山里は花をみるにもたよりありけり

79 秋 344 上人 心中 玉葉
人も見ぬよしなき山の末までにすむらむ月のかげをこそ思へ

162 恋 1328
ひとりきて我が身にまとふ唐衣しほしほとこそ泣きぬらさるれ

82 秋 948 雲葉
ひとりすむいほりに月のさし来ずば何か山べの友とならまし

139 羇 1209 玉葉 (寂然法師歌)
ひとりすむおぼろの清水友とては月をぞすます大原の里


101 冬 558 上人 心中
ひとりすむ片山かげの友なれや嵐にはるる冬の夜の月

20 春 43 上人 心中 新拾遺 物語
ひとりぬる草の枕のうつり香は垣根の梅のにほひなりけり

65 秋 459 上人 心中
ひとりねの友にはならで蛬なく音をきけば物思ひそふ

64 秋 新潮欠 454a
ひとりねの寢ざめの床のさむしろに涙催すきりぎりすかな


86 秋 442 上人 心中
ひとりねの夜寒になるにかさねばや誰がためにうつ衣なるらむ

153 恋 683 上人 心中 万代
日にそへて恨はいとど大海のゆたかなりける我がなみだかな

52 夏 238 
雲雀あがるおほ野の茅原夏くれば凉む木かげをねがひてぞ行く

216 釈 866 上人追加 夫木
雲雀たつあら野のおふる姫ゆりのなににつくともなき心かな

252 聞213
ひまもなきほむらのなかのくるしみもこころおこせばさとりにぞなる

141 賀 1170 心中
ひまもなくふりくる雨のあしよりも数かぎりなき君が御代かな

123 羇 1117 上人追加 物語(広)
屏風にや心を立てて思ひけむ行者はかへりちごはとまりぬ

259 聞246
比良の山春も消えせぬ雪とてや花をも人のたづねざるらむ

76 秋 408 夫木
昼とみる月にあくるを知らましや時つく鐘の音なかりせば

松屋本山家集 夫木
昼は出でてすがたの池に影うつせ声をのみ聞く山時鳥

273 補 夫木
廣澤のみぎはにさけるかきつばたいく昔をかへだて来つらむ

49 夏 217 上人追加 夫木
ひろせ河わたりの沖のみをつくしみかさそふらし五月雨のころ

215 釈 856 上人
ひろむらむ法にはあはぬ身なりとも名を聞く数にいらざらめやは

152 恋 669 上人 心中
日をふれば袂の雨のあしそひて晴るべくもなき我が心かな

「連歌」残集15 (前句、静空法師、付句、西行)  

 人まねの熊野まうでのわが身かな
       そりといはるる名ばかりはして

「連歌」残集16 (前句、西住法師、付句、西行)
  
 檜笠着る身の有様ぞあはれなる
       雨しづくともなきぬばかりに


「ふ」

230 聞27
深きねのそこにこもれる花ありといひひらかずば知らでやままし

228 聞15 夫木
深き山に心の月しすみぬればかがみに四方のさとりをぞ見る

121 羇 1104 上人 心中 風雅 物語(広)
深き山にすみける月を見ざりせば思ひ出もなき我が身ならまし

岩波欠 雑 1511
深き山は苔むす岩をたたみ上げてふりにし方を納めたるかな

松屋本山家集
深き山は人も問ひ来ぬすまひなるにおびただしきは群猿の声

124 羇 ○ 御裳濯河 千載 物語
ふかく入りて神路のおくを尋ぬれば又うへもなき峰の松かぜ

松屋本山家集
深く入りて住むかひあれと山道を心やすくも埋む苔かな

272 補 宮河
深く入ると花のさきなむをりこそあれともに尋ねむ山人もがな

192 雑 1422 
深く入るは月ゆゑとしもなきものをうき世忍ばむみよしのの山

242 聞116
ふかみどり人にしられぬあしひきの山たちばなにしげるわが恋

63 秋 465
吹き過ぐる風さへことに身にぞしむ山田の庵の秋の夕ぐれ

199 哀 921
吹き過ぐる風しやみなばたのもしき秋の野もせのつゆの白玉

39 春 1073
吹みだる風になびくと見しほどは花ぞ結べる青柳の糸

62 秋 289 夫木
吹きわたる風も哀をひとしめていづくも凄き秋の夕ぐれ

33 春 152 夫木
吹く風のなべて梢にあたるかなかばかり人の惜しむ櫻を

163 恋 1335 
吹く風に露もたまらぬ葛の葉のうらがへれとは君をこそ思へ

201 哀 780 上人 (堀川局歌)
吹く風の行方しらするものならば花とちるにもおくれざらまし


224 神 新潮欠 1217a
ふけて出づるみ山も嶺のあか星は月待ち得たる心地こそすれ


84 秋 ○ ▲ 上人 御裳濯河 新古今 御裳濯 物語(広)
ふけにける我が身の影を思ふ間にはるかに月のかたぶきにける

239 聞98 ▲ 上人 御裳濯河 新古今 御裳濯 物語(広)
ふけにける我が身のかげを思ふまに遥かに月のかたぶきにける  

207 哀 810 (藤原成通遺族歌)
ふししづむ身には心のあらばこそ更に嘆もそふ心地せめ


198 雑 1438 上人追加 夫木
ふしみ過ぎぬをかのやに猶とどまらじ日野まで行きて駒こころみむ

203 哀 786 心中 月詣 (藤原公能歌)
藤衣かさぬる色はふかけれどあさき心のしまぬばかりぞ


283 補 一品経和歌懐紙
二つなく三つなき法の雨なれど五つのうるひあまねかりけり


281 補 御裳濯河 風雅 長秋詠藻 (藤原俊成歌)
ふぢ浪もみもすそ川のすゑなれば下枝もかけよ松の百枝に


280 補 御裳濯河 風雅 長秋詠藻
藤浪をみもすそ川にせきいれて百枝の松にかかれとぞ思ふ

114 羇 1371
筆の山にかきのぼりても見つるかな苔の下なる岩のけしきを

208 哀 820 上人 心中 玉葉 夫木
船岡のすそ野の塚の数そへて昔の人に君をなしつる

松屋本山家集
舟底にみすりしぬべし心せよのみのさせるを頼まざらなん

50 夏 220 夫木
舟とめしみなとのあし間さをたえて心ゆくみむ五月雨のころ

56 秋 261 上人 心中
ふねよする天の川べの夕ぐれは凉しき風や吹きわたるらむ

130 羇 1129 夫木
ふままうき紅葉の錦散りしきて人も通はぬおもはくの橋

168 雑 978 上人 心中 万代 夫木
ふもと行く舟人いかに寒からむくま山嶽をおろすあらしに

欠 鹿野しのぶ氏発表稿「語文」
麓まで唐紅に見ゆるかなさかりしぐるる葛城の峰

96 冬 517 上人追加 玉葉 夫木
冬枯のすさまじげなる山里に月のすむこそあはれなりけれ

237 聞79
ふゆ聞くはいかにぞいひてほととぎす忌む折の名か死出の田長は

76 秋 407 上人 心中 御裳濯河
ふりさけし人の心ぞ知られける今宵三笠の山をながめて

250 聞197
ふりず名を鈴鹿になるる山賊は聞えたかきもとりどころかな

15 春 ○ 上人 御裳濯河 新古今 玄玉 御裳濯 物語
ふりつみし高嶺のみ雪とけにけり清瀧川の水のしらなみ

98 冬 568 
降りつもる雪を友にて春までは日を送るべきみ山べの里

184 雑 1446
ふりにける君がみゆきのすずのろうはいかなる世にも絶えずきこえむ

191 雑 1512
ふりにける心こそ猶あはれなれおよばぬ身にも世を思はする

242 聞118    
ふりほして袖のいろにはいでましやくれなゐ深き涙ならずば

164 恋 1493
ふるき妹がそのに植えたるからなづな誰なづさへとおほし立つらむ

松屋本山家集
古き木の根をも何かは思ふべき底にとほれる風にまかせて

40 春 ○ 新潮欠 上人 御裳濯
古郷の昔の庭を思ひ出でてすみれつみにと来る人もがな

195 雑 1029
故郷の蓬は宿のなになれば荒れ行く庭にまづしげるらむ

195 雑 1030 上人 心中
ふるさとは見し世にもなくあせにけりいづち昔の人ゆきにけむ

239 聞95
ふるさとを誰か尋ねてわけも来む八重のみしげるむぐらならねば

21 春 27 上人 心中 宮河 御裳濯
古巣うとく谷の鶯なりはてば我やかはりてなかむとすらむ

167 雑 997 上人 心中 新古今 物語(広)
ふる畑のそばのたつ木にをる鳩の友よぶ声の凄き夕暮

97 冬 530
降る雪にしをりし柴も埋もれて思はぬ山に冬ごもりする

102 冬 525
降る雪にとだちも見えず埋もれてとり所なきみかり野の原

「へ」

70 秋 1055 (寂然法師歌)
へだて来しその年月もあるものを名残多かる嶺の朝霧

150 恋 642
隔てたる人のこころのくまにより月をさやかに見ぬが悲しさ

210 哀 840
へだてなき法のことばにたよりえて蓮の露にあはれかくらむ

「ほ」

31 春 78 上人 心中 千載 物語
仏には櫻の花をたてまつれわが後の世を人とぶらはば

47 夏 ○ 上人 雲葉
郭公いかなるゆゑの契りにてかかる声ある鳥となるらむ

45 夏 194 
ほととぎすいかばかりなる契にて心つくさで人の聞くらむ

松屋本山家集
ほととぎすいそぐ早苗を取さして鳴きつる方へ心をぞやる

44 夏 180 
郭公卯月のいみにゐこもるを思ひ知りても来鳴くなるかな

44 夏 193 上人 心中 新後拾遺
蜀魂おもひもわかぬ一声を聞きつといかが人にかたらむ

43 夏 187
郭公きかで明けぬる夏の夜の浦島の子はまことなりけり

45 夏 188 上人 心中
時鳥きかぬものゆゑまよはまし花を尋ねぬ山路なりせば

44 夏 199 上人追加 夫木
郭公ききにとてしもこもらねど初瀬の山はたよりありけり

44 夏 新潮欠 192a
時鳥きく折にこそ夏山の青葉は花におとらざりけれ

237 聞74
ほととぎす曇りわたれるひさかたの五月のそらに声のさやけさ

264 残10 夫木
ほととぎす声に植女のはやされて山田のさなへたゆまでぞとる

274 補 上人
時鳥こゑのさかりになりにけりたづねぬ人にさかりつぐらし

263 残8
杜鵑さつきの雨をわづらひて尾上のくきの杉に鳴くなり

258 聞235
ほととぎす死出の山路へかへりゆきてわが越えゆかむ友にならなむ

松屋本山家集
時鳥信太の森の一声は夜だに明けばと思はれぬかな

43 夏 197 
ほととぎすしのぶ卯月も過ぎにしを猶声惜しむ五月雨の空

45 夏 192
時鳥そののちこえむ山路にもかたらふ声はかはらざらなむ

松屋本山家集
ほととぎすただ一声の忍び音を聞くあはれなるあかつきの空

273 補 宮河 御裳濯
ほととぎす谷のまにまに音づれてあはれに見ゆる峯つづきかな

46 夏 1472
郭公月のかたぶく山の端に出でつるこゑのかへりいるかな

43 夏 186 上人 心中
時鳥なかで明けぬと告げがほにまたれぬ鳥のねぞ聞ゆなる

273 補 夫木
ほととぎすなきわたるなる波の上にこゑたたみおく志賀の浦風

137 羇 751 上人 心中 物語(広)
時鳥なくなくこそは語らはめ死出の山路に君しかからば

47 夏 200
時鳥なごりあらせて帰りしか聞き捨つるにも成にけるかな

46 夏 1469
郭公なべて聞くには似ざりけり深き山べのあかつきの声

46 夏 ○ 上人
ほととぎす花橘になりにけり梅にかをりし鶯のこゑ

45 夏 196
ほととぎす花橘はにほうとも身をうの花の垣根忘るな

44 夏 179 上人 心中 新後撰
時鳥人にかたらぬ折にしも初音聞くこそかひなかりけれ

47 夏 ○ 上人 御裳濯河 新古今 御裳濯 物語
時鳥ふかき嶺より出でにけり外山のすそに声のおちくる

46 夏 1470
時鳥ふかき山辺にすむかひは梢につづく声を聞くなり

43 夏 184
時鳥まつ心のみつくさせて声をば惜しむ五月なりけり

47 夏 ○ 物語
郭公都へゆかばことづてむ越えくらしたる山のあはれを

184 雑 1137
程とほみ通ふ心のゆくばかり猶かきながせ水ぐきのあと

105 羇 1091 上人 宮河 続後撰 月詣
程ふれば同じ都のうちだにもおぼつかなさはとはまほしきに

松屋本山家集
ほどもなき花の盛りを待けりと思ひ知りぬるかひもあらばや

60 秋 268 
穂に出づるみ山が裾のむら薄まがきにこめてかこふ秋霧

61 秋 297
穂に出でてしののを薄まねく野にたはれてたてる女郎花かな

278 補 異本拾玉集 (慈鎮僧正歌)
ほのぼのと近江のうみをこぐ舟のあとなきかたにゆく心かな


254 聞220
ほのほわけてとふあはれみの嬉しさをおもひしらるる心ともがな

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「連歌」残集15 (前句、静空法師、付句、西行)  

 人まねの熊野まうでのわが身かな
       そりといはるる名ばかりはして

「連歌」残集16 (前句、西住法師、付句、西行)
  
 檜笠着る身の有様ぞあはれなる
       雨しづくともなきぬばかりに


「連歌」残集22 (前句、空仁法師、付句、西行)

 はやくいかだはここに来にけり
    大井川かみに井堰やなかりつる


240 聞104 (藤原俊成歌)
浜木綿にかさなる年ぞあはれなるわかの浦波よにたえずとも

203 哀 788 (作者不詳歌)
晴やらぬ去年の時雨の上に又かきくらさるる山めぐりかな


139 羇 1209 玉葉 (寂然法師歌)
ひとりすむおぼろの清水友とては月をぞすます大原の里


201 哀 780 上人 (堀川局歌)
吹く風の行方しらするものならば花とちるにもおくれざらまし

207 哀 810 (藤原成通遺族歌)
ふししづむ身には心のあらばこそ更に嘆もそふ心地せめ


203 哀 786 心中 月詣 (藤原公能歌)
藤衣かさぬる色はふかけれどあさき心のしまぬばかりぞ


281 補 御裳濯河 風雅 長秋詠藻 (藤原俊成歌)
ふぢ浪もみもすそ川のすゑなれば下枝もかけよ松の百枝に


70 秋 1055 (寂然法師歌)
へだて来しその年月もあるものを名残多かる嶺の朝霧


278 補 異本拾玉集 (慈鎮僧正歌)
ほのぼのと近江のうみをこぐ舟のあとなきかたにゆく心かな


岩波欠 雑 1511
深き山は苔むす岩をたたみ上げてふりにし方を納めたるかな


64 秋 新潮欠 454a
ひとりねの寢ざめの床のさむしろに涙催すきりぎりすかな


224 神 新潮欠 1217a
ふけて出づるみ山も嶺のあか星は月待ち得たる心地こそすれ


40 春 ○ 新潮欠 上人 御裳濯
古郷の昔の庭を思ひ出でてすみれつみにと来る人もがな


44 夏 新潮欠 192a
時鳥きく折にこそ夏山の青葉は花におとらざりけれ


欠 鹿野しのぶ氏発表稿「語文」
麓まで唐紅に見ゆるかなさかりしぐるる葛城の峰


283 補 一品経和歌懐紙
二つなく三つなき法の雨なれど五つのうるひあまねかりけり


283 補 桐火桶(歌論書ですが偽書と見られています)
はかなくぞ明日の命をたのみける昨日をすぎし心ならひに


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